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ふと目が覚めた…いつの間にか寝入っていた…ボックスの長イス。


カウンターにミクママが1人テレビを眺めてた。


私の気配に気付いたミクママが私に声をかけた。

[あら、もう起きたの?まだ6時よ]


水の入ったグラスを持ってきながら言った。


[ずっと1人で頑張ってきたのよね。偉いわ…本当に]

私の横に座った。


私は水を飲んで答えた。

[…これが私だから]

そう…私はずっと1人で生きてきた。


辛さや寂しさにはとっくの昔に慣れた…。


[私もそうだったわ]

ミクママが言った。

私はミクママを見た…ミクママは私に微笑んで口を開いた。


ミクママは話を続ける。

[私は男…オカマなのよ。だからずっと1人だったわ。普通の男とは違ってたから。私は私がイヤだったの。でもね…それが私なんだわ…って思えるようになったのよ]


ミクママは私を見てにっこりと笑った。


[人は変わるのよ。自分を変えられるの。良くも悪くもね。ユダも昔は今以上に卑屈だったらしいしね]


ミクママは声を出して笑った。


[ユダって何なの?]

私は聞いた。


[ユダはね。物事を考え過ぎるのよ。でもそれがユダであって。多分あの人は自分を変えないわ。そしてトオルの為に生きてるのよ]


[トオルは?]

私は質問した。


ミクママはさらに笑って答えてくれた。

[あはは。トオルはね。ユダの為に生きてるのよ。あの2人は理想的な恋愛をしてるのよ。性格は正反対なんだけどね]


[まぁ、今度ユダ達に聞いてみなさいよ。幸せって何?って]


ミクママは真面目な顔になって言った。

[私の幸せは毎日を楽しく過ごす事。だから今は心から幸せと言い切れるのよ。私の存在価値がこの店にあるからよ。いつか私も恵美ちゃんみたいに有名になってみせるわ]


ミクママは笑った。

[さぁ、もうひと眠りしなさい。でも心の寄りどころに、ここに来てくれて本当にありがとうね]


私は首を振った…[元気くれて本当にありがとうございます。また頑張ります。お店まで閉めてもらって…これ以上甘えるのは悪いから帰ります]


私は席を立ちお辞儀した。

[また来てもいいですか?]


ミクママは笑って言った。

[もちろんよ!]

最初から最後まで優しい笑顔だった。

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