第27話 ブルーノ国王 レナの暴走
「レナをムートル国に行かせて良いものだろうか」
アンドレがジャメルの部屋に訪ねてきた。
「姫君に危害を加える気はなさそうだが」
「お前やエリザをまくとは、なかなかの者なのだろう」
アンドレは、レナの事をまだまだ自分が守らなければならないと思っている。
しかし、ジャメルは違った。
「姫君の魔力は誰よりも強い。暴走を防ぐ為にも、戦い方を学ぶべきだ」
「レナに戦えと言うのか!」
アンドレは、思わずジャメルに詰め寄った。
「戦い方を知る事で、守り方も分かると言うもの。違うか」
アンドレに返す言葉は無かった。
結局、レナは予定通り再びムートル国へ向かった。
「ベル様のお茶が間に合って良かったですね」
「そうね、今日は大丈夫みたい」
ベルお手製のお茶は、レナを馬車酔いから救ってくれた。
「ベルはお茶の調合が上手よね」
「ルイーズ様もですよ」
「お祖母さまも?」
「お二人の祖国は薬草が豊富ですので、代々その家の薬草の配合を」
「もういわ」
「え?」
「それ、いつか私も学ぶって事よね」
「そうです」
学ばなければならない事が多すぎて、あっと言うまにおばあさんになってしまいそう。
レナは、何だか馬車酔いのような気分になった。
案内係のメイドが、部屋に案内してくれた。
「王の準備が整い次第、ご案内いたします」
メイドお茶の準備をして下がっていった。
「ねぇ、エリザ、私直ぐに会えると思ってたんだけど、これって……」
「静かに待ちましょう」
レナは嫌な予感がしていた。
1時間程経った頃、突然扉が開いた。
「エヴァ! じゃ、ないんだっけ」
入ってきたのは、ドミニクだった。
「ドミニク!」
レナも椅子からと飛び上がり、再会を喜ぼうと駆け寄ろうとしたが、エリザに足を踏まれた。
「レナ様、ご挨拶はきちんとなさって下さい」
「あ、ごめんなさい。えーっと、ムートル国王子ドミニク様、お久しぶりでございます」
レナは、かしこまって挨拶をしたのだが、それを見たドミニクが大笑いをした。
「そんな風にしたら別人だね」
「笑うなんて失礼よ」
「それは失礼いたしました、レナ姫様」
ドミニクが、うやうやしく挨拶をした。
今度はレナが笑う番だった。
「ねぇ、もう良いでしょエリザ。私とドミニクは友達なのよ」
「仕方ありませんね」
流石のエリザも他国の王子を叱る訳にもいかず、渋々納得した。
とは、言うものの……。
「何を話せばいいのかしらね」
「僕さ、レナに聞きたい事があって、来たんだ」
「なに?」
「レナの国に、ドミニクって人居る?」
レナの頭に浮かんだのは、ドミニク老人だった。
ドミニクと言えば、あのドミニク老人しか思い浮かばないけど……。
「いらっしゃるけど……」
「どんな人?!」
ふと、エリザが思い出した。
「確かドミニク様のお母様亡くなった先代王妃様は、あのドミニク老人と御親戚でしたね」
「そうなんだよ! 僕の名前も、その人から貰ったんだ!」
誇らしそうなドミニクの顔を見て、これは是非ともドミニク老人に合わせてあげたいとレナは思った。
「ねぇ、レナ、その人はどんな人なの!」
「そんなに気になるなら、是非我が国へお越し下さいドミニク王子」
「行っていいの? 僕、レナが国に戻る時に、一緒に行くよ!」
レナは冗談のつもりで行ったのだが、ドミニクは本気にしてしまった。
やはりまだ十歳の少年だ。
「そんな事、勝手に決めてしまって良いの?」
まぁ、街中にフラフラと出掛けたり出来るんだから、問題ないのかしら。
それにしても自由過ぎる気がする。
レナが、そんな事に思いをめぐらせている事に気が付いたドミニクが、とんでも無い事を言った。
「国王様も公務もしないで人に任せっきりで遊んでるんだもん。今日もだよ。僕だけが自由にしてるわけじゃないもん」
この国は、国王が公務もしないで遊んでるですって?
今日も、ってどういう事よ。
今日も面会無しなの?
レナは王との面会を待ち続けた日々を思い出した。
ただただ、無駄に流れた時間を。
「どうかした?」
レナが急に黙り込んだので、ドミニクは心配になった。
「国王様は、今日も遊んでいらして公務をなさる気はない、という事ね?」
「う、うん……」
「ドミニク、ブルーノ兄さんはどこに居るの?」
「国王様をそんな風に呼んではいけません!」
エリザが注意をしたが、レナの耳には届かない。
「僕が兄さんの所まで案内するよ!」
ドミニクが嬉しそうに先に走り出す。
「レナ様、いけません!」
エリザの制止も聞かず、レナはドミニクの後を追った。
「ブルーノ兄さん!」
一番下の弟、ドミニクが部屋に飛び込んできた。
両親が亡くなって以来、ドミニクに厳しく教育する者が居なくなり、自由奔放な子になってしまった。
ノックも無しに部屋に入ってくるなんて、何て無作法なんだ。
「ノックもしないで入って来るなんて、失礼だぞ」
ブルーノは、本から目をそらす事なく、言った。
「人の顔も見ないで話すのも十分に失礼よ。それに、他国から来た客人を待たせ続けるのは、もっと失礼よ!」
聞きなれない少女の声に、思わず顔を上げた。
「君、誰……」
「兄さん、レナだよ!」
ブルーノは、手にしていた本を下に落とした。
「あの、ほんと、私失礼をしてしまって、ごめんなさい」
レナは入って来た時の勢いを失っていた。
ドミニクの兄だと言うから、勝手に同い年から、もしかしたら自分より年下かと思っていたら、ブルーノ国王は成人を向かえた立派な青年だった。
怒りをぶつけようとした相手が、思いのほか大人だったため、何か子供の自分には分からない事情があるのかもしれない、と思い何も言えなくなってしまった。
「兄さん、レナが怒るのも無理ないよ。レナは、兄さん会うためにずっと待っててくれてたんだよ」
「そして、ドミニクお前が街に連れ出して、騒ぎを起こした」
「あの、それは、私が付いて行ってしまったのが悪いんです」
「レナ姫」
「はい!」
レナは名前を呼ばれて、突然緊張してしまった。
よく考えたら、他国の王と会うのは、生まれて初めてなのだ。
「どうして、急にこの部屋へ?」
「あの、えっと……」
突然核心を突かれたレナは、一瞬たじろいだ。
が、部屋を見渡して再び怒りが湧き上がってきた。
ブルーノ王がノンキに本に囲まれ遊んでいる間、レナは無駄な時間を強制的に過ごす羽目になった。
「あの、ブルーノ王に一言、いえ、もっと申し上げたい事があって参りました」
「なんでしょう」
ドミニクは、今から何が起こるのかわくわくしていた。
「王は、ここで何をなさっているのですか?」
「何をって、見て分かりませんか」
「ノンキに本を読んでいらっしゃる」
「そうです」
「その間、私は何をしていたと思われますか?」
「え?」
「王との面会を待っていたんです」
「そうですか」
「そうですかじゃないわよ!」
レナは相手が他国の王であると言う事を完全に忘れてしまい、大声を出してしまった。
部屋にメイドや役人達が集まってきた。
中にはエリザの姿もあった。
「レナ様!」
エリザの声で、レナは自分が置かれている状況に気がついた。
集まった人を見て急に恥ずかしくなったレナは、急いで部屋を出た。
その後を、エリザが追う。
「エリザ、帰りましょう! 馬車を用意して!」
「はい」
「ねぇレナ! 帰らないで!」
ドミニクが追いかけてきた。
レナは足を止めた。
「ねぇ、レナ帰らないで。今日は泊まって。お願い。僕レナと話したいことがいっぱいあるんだよ! ねぇ、お願い!」
ドミニクに懇願され、一晩だけここに留まる事を約束してしまった。
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