異常極まりないオーパーツ。

異常極まりないオーパーツ。


 そんなピーツの姿を見て、カティとバロールの二人は、目を合わせ、

 両者ともに、ニっと微笑んでから、


「主を彷彿とさせるという点からいえば、こいつがソレである可能性はなくもないわね」

「だが、そんなことを言い出したら、『腹の底から勇気を出したヤツ』や『守りたい誰かを持つ者』の『全員』がもれなく容疑者ってことになっちまう」

「そうなっちゃ、おしまいってヤツね」

「というより、前提的に、『守りたい誰かのために命を張れるヤツ』は、はたして、俺たちの敵なのかって問題が出てくるだろ」

「そうね……私たちの討伐対象は、あくまでも『巨悪』。『迷惑なエゴを満たすためだけに暴れるクズ』の排除こそが命題」


 バロールはそう言ってから、ピーツに視線を移し、



「少年、一つ質問だ。『D型』という言葉を聞いて、何か思いつく事はあるか?」



 急な質問に対し、

 ピーツは動揺して、


「でぃ、でぃーがた? 『ディーガタ』……でぃーが……ぃ、いや……し、知らんけど……」


 そう言ったピーツの目をジっと見つめてから、カティは、


「嘘をついているんだとしたら、凄まじい演技派」

「つまり、こいつは『世界を狙える役者』か、もしくは『何も知らない一般人』ってことか」


 バロールの言葉を聞くと、

 カティは鼻で笑ってから、


「その『学校に隠されていた秘密のアイテム』ってやつ、だいぶ問題じゃない?」

「……『一般人』が使っても『存在値2000級の力が出せるアイテム』……確かに異質。調べる必要がある」


「他にもまだあるようなら、キッチリ回収しないと」

「そうだな。そんな異常極まりないオーパーツは、『無駄な争い』を産む火種にしかならないと断言できる」



 そこで、ピーツに背を向ける二人。

 その背中に、ピーツは、


「ちょ、待っ――」


 慌てて二人を止めようとするピーツに、

 バロールが、



「お前、稀に見る逸材だな」



「……へ?」


 間抜けな疑問符を飛ばすピーツに、

 続けて、カティが、


「頑張ったら、いつか、神の王にもなれるかもね」


「……」


 ただただ困惑しているピーツの視線の先で、

 バロールが渋い顔で、カティに視線を向けて、


「いや、それは流石に――」

「軽いジョーク。本気で言っているワケないだろ。いちいち、過剰反応すんな」

「……このアマ……」


 そこで、カティは、

 ピーツの目をジっと見つめて、


「われわれはゼノリカ。全てを包み込む光」


 続けて、バロールが、


「望むなら、迎え入れよう。お前にはその価値がある」


「その資質、決して無駄にしないように」






「「我々は、世の不条理を裂く刃。たとえ、この世の全てが闇に染まろうと、最後の最後まで合理を叫び続ける世界の後光。『この上なく尊い神』を胸に抱く天上の調律者」」







「……」


「そう遠くない将来、この世界はゼノリカに包まれる」

「その時は、門戸を叩くといい。貴様の名は下に伝えておく」


「いや、あの……さっきから、ぜんぜん、意味がわから――」


「さきほどの脅しは、すべてジョークだ。ゼノリカに属する私達が『不条理な殺生』に手を染める事など絶対にありえない。だから、心配する必要は何もない」

「そういうこと」



 そう言って、二人は瞬間移動で、この場から去っていった。

 強大なオーラの余韻だけが世界に拡散していく。

 浸透していく余波が、時間の経過によって、わずかに緩んだ時、


 残されたピーツは、



(ゼノ……リカ……)



 心の中で、


(その単語……どっかで聞いたことがあるような……なんだっけ……んー、あ、そうだ……ガキの頃に考えたカッコイイ言葉の一つだ……は、はは、なんだ、この変な偶然……)


 ブツブツ言いながら、ペタンと尻餅をついて、


(なんだろう……あいつら……悪いやつらじゃないような……)


 あくまでも感覚の話。

 だから、確実ではない。

 けれど、


(なんか、よーわからんけど……とりあえず)


 そこで、大の字になって、


「しんどー、ありゃ相手にできねぇわ」


 深いため息をつきながら、そうつぶやいた。

 そんなピーツの鼻を、まるでねぎらうように、いまだステルス状態の携帯ドラゴンがペロっとなめた。


(あれほどの連中がその気になったら、すぐに、『隠されているアイテム』は全部回収されちまうだろうなぁ……トランスフォームの魔カード……仮にあったとしても、あいつらに没収されること確定だなぁ……はぁ……)


 何度目か分からない溜息をついてから、


(でもまあ、携帯ドラゴンは、今も俺のものだし、こいつを持っているって事もバレずにすんだ……ここから世界がどうなっていくか知らんけど……切札は隠しておくにこしたことはない……『切札を使う時は、他の切札がある時だけにしろ』って、じっちゃんか、ばっちゃんか、どっかのマンガのキャラが言っていたような気がするからな)


 心の中で、ぶつぶつと、


(さて、ちょっと色々と一気に起こり過ぎの『俺の異世界転生』は、はたして、ここからどうなっていくんだろうねぇ……いろいろ不安だし、もろもろヤバそうだけど……けど……まあ……)


 ニっと微笑んで、




「ひゃっほい!」




 ワクワクを叫んだ。


 こうして、ゼノリカに触れつつ、二次試験に進む事になったP型センエース2号。

 そんな彼の明日はどっちだ!


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