呪いの真意
「では、呪いの解除を始めます。原理は単純。かけられた呪いに同等以上の力を加えて痣を剥離させ、施行者の元に戻るよう命じるだけですので特別な呪文はありません。では――」
シャリィがアナの背中に両手をかざすと、痣の周りが縁取られるように光り始めた。やがて呪いの文字は浮かび上がり、シャリィの目線の少し上あたりで止まった。
「おお、いとも簡単に……」
「アナお嬢様を辱めし呪いの文字よ。黒呪術師、シャリィ・ルクスシスの名の下に命ずる。その禍々しき姿ごと、施行者たるごにょごにょの元に還りたまえ!」
「最後の方、何か濁しませんでしたかな?」
「い、異国の言葉で唱える部分がございまして。おほほほ……」
ロビンの疑問を咄嗟に誤魔化すナターシャ。一方シャリィの命により浮き上がった
「失礼します。お茶お持ちして――」バシィン!
「へ?」「え?」「ぬ?」
先程までアナの背中に浮かんでいた文字そのままに、ティーセットを運んできたアイナの細いウエストに黒い痣が突如浮かび上がった。
「あの呪いを……そんな……」
呪いが刻まれたアイナの表情は、何かを知っているかの様に明らかに狼狽していた。
「そんな……アイナ、どういう事なの? 何故あなたに呪いが?」
はだけたドレスも碌に直さず、アナはアイナの元に駆け寄る。その状況が理解できないナターシャはシャリィの方を見るが、本人も同じく目を点にして、その顔に疑問符を浮かべていた。
「申し訳……ありません」
「どういう事だアイナ。場合によっては、私は君を裁判にかけなければならん。説明しなさい」
ロビンは先程まで見せなかった険しい表情でアイナに詰め寄る。アイナは俯いて暫く黙りこむが、やがて観念してゆっくりと口を開く。
「……家同士のお話でご結婚が決まってから、お嬢様は毎日、不安の胸の内を私にだけお話ししてくださいました。それを聞いていた私は、日に日に心がおやつれになっていくお嬢様を見るのが心苦しくなり……」
「アイナ、そんな話し方やめて。いつも通り、私と話す様にあなたの本心を聞かせて。お願い」
「……ごめんなさいアナ。あなたにその呪いをかけたのは、間違いなく私よ」
にひ
シャリィの口角が上がっていくのを、ナターシャは見逃さなかった。
「私……あなたと離れたくなかった! 結婚は家の事だし仕方ない。でも、私はメイドとして、あなたの親友として、このままずっとあなたに仕えていたかったの! でも、それは出来ないと執事長から言われたの。だったら、それすらも叶わないのなら、呪いをかけて少しでもあなたとの時間を延ばせたらって…………ごめんなさい」
アナの前に膝を落とし、アイナは泣き崩れた。それを見たアナは同様に膝を付き、主従間関係などまるで無いかの様に、嗚咽する親友を優しく抱きしめ、自身も一筋の涙を流す。
「少し、宜しいでしょうか? 黒呪術師として、皆様にお伝えしたい事があります」
ようやく状況を整理できたのか、シャリィは澄ました顔で二人の前に立ち、物申した。
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