リンドバーグ家のクリスマス
一八七九年の十二月のクリスマス・イブ。
この日、マーブル・ヒル・ハウスはお休み、メイブさんも家へ帰るそうです。
「ねぇアシュレイ、クリスマスはどうするの?」とメイブさん。
「なにも、お屋敷でくつろぎます、帰る家もありませんし」とアシュレイさん。
「そう、じゃあ家に泊まりに来ない?」とメイブさん。
「ご迷惑では?」とアシュレイさん。
「かまわないわ、小さい家だけどね」とメイブさん。
メイブさんの家は両親と弟が一人、小さい靴屋を営んでいました。
メイブさんが、
「ただいま、お母さん、後輩を連れてきたけどかまわないわよね」
お母さんは洗濯をしているようでした。
お母さんが、
「かまわないよ、めずらしいわね、お前が友達を連れてくるなんて」
アシュレイさんが、
「アシュレイ・スマイスです、メイブさんには親しくしていただいています」
「アシュレイさんね、幾つなのかい?」とお母さん。
「十四です」とアシュレイさん。
「家の馬鹿息子より二つ上かね」とお母さん。
メイブさんたちリンドバーグ家はアイルランド出身で、お父さんがロンドンにでてきて靴屋の小僧として働き、独立してお母さんと結婚。
仲良く二人で小さな靴屋を切り盛りしているのです。
「お父さんは?」とメイブさん。
お母さんが、
「ジョージをつれて七面鳥を買いに行っているわ、メイブも手伝ってね」
「任せてよ」とメイブさん。
クリスマスの晩餐はささやかでしたが暖かなものでした。
クリスマスプレゼントですが、急に呼ばれたアシュレイさんは用意などなく、何となくためていたシュガーコーティングの粒チョコレートをプレゼントしたのです。
「アシュレイ、食べなかったの?」とメイブさん。
アシュレイさんが、
「もったいなくて、それに腐るものでもないので、こんなもので失礼なのですが……」
「美味しい!」
いつのまにかメイブの弟がチョコレートに手を出しています。
「もう食べているの!」
メイブさんにガミガミと怒られる弟です。
「だっておねえちゃん、お土産などくれないもん!」
メイブさんが、
「もう、恥ずかしいのだから、今度から持って帰ってあげるわよ!」
「クリスマスだから嘘はだめだよ!」と弟。
「くっ」と言葉に詰まったメイブさん。
ご両親がかなり笑っています。
「とにかく早く食べましょう」
とお母さんがいいます。
アシュレイさんは、久しぶりに暖かいクリスマスを迎えたのです。
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