12.神々とその関係者

 三女神・デューク側のお話を、少しだけ。



●ヒコヤ

 ある日突然、パラリュスに次元の穴を開けて現れた青年。ふらりと海岸に降り立った時、そこにヒトの姿で降り立っていた女神テスラに一目惚れしました。

 ヒコヤはどうやってここに来たかは完全に忘れてしまっていましたが、帰ることを拒絶。三女神に持っていた三種の神器を渡し、代わりに神獣の飛龍ひりゅう廻龍かいりゅうを与えてもらい、パラリュスで生きることを選びました。


 人懐っこく、女神だけでなくパラリュスの人々にも慕われた、とても魅力的な人です。

 しかし自分のせいで女神ウルスラと女神ジャスラが闇に堕ちてしまったと思ったヒコヤは、かなり苦しみました。そのときはデュークのせいだとは知らなかったんですね。ヒコヤがデュークに会ったのは、ジャスラが闇に堕ちて封じられた後だったので……。


 三女神の関係がおかしくなってしまったのは自分がパラリュスに現れたからかもしれない。

 そう思ったけれど、だからと言ってミュービュリに帰る気にはなれませんでした。どうしても愛する女神テスラの傍にいたかったからです。それに、二人の間には子供ができましたしね。

 結局ヒコヤは女神テスラと共にフィラに移り、自分の子供たちを育て……やがて、フィラの地で亡くなりました。


 ソータが神の属性に変わっていって時を止めたように、ヒコヤも三種の神器を手放さなければそのようになっていった筈です。

 しかしヒコヤは自分の過去、そして三種の神器についてのすべての記憶を失っていたので、そういう効果があるとは知りませんでした(だからソータも知らなかった)。宣詞についても、本人はよくはわかっておらず、神器に導かれるまま唱えただけです(ソータはその記憶を辿って宣詞の文言を知った)。



●女神テスラ

 「知」の女神テスラ。妹のジャスラをデュークの手から守るため、一級神になったと同時に下界に降り立ちました。

 ヒトの姿になり海岸を散歩していたとき、崖の上からひらりとヒコヤが現れ……女神テスラは胸に湧き上がる不思議な思いを感じずにはいられませんでした。

 元の世界に帰すべきなのだ――そう思ったけれど、どうしても決められなかった。迷った女神テスラは女神ウルスラ、女神ジャスラに引き合わせ、決断を委ねました。


 女神テスラは、女神ウルスラと女神ジャスラが闇に堕ちたとき、「これはデュークが何かしたのかもしれない」とは感じていました。

 そして狂ったデュークが自分たちに襲いかかって来たとき「何があってもヒコヤの傍にいなくては」と決意しました。

 そして、テスラの女王とは離れなければならないことも……。


 責任を感じるヒコヤを励まし、精一杯愛し、支え、ヒコヤが亡くなるその時まで片時もヒコヤの傍を離れませんでした。

 ヒコヤが死んで海岸から見送った時、デュークのことが頭をよぎりました。もしかしたら……ヤツは来るかもしれない。

 そう思った女神テスラは、半身をフィラの麓に遺し、何があってもテスラの大地を守れるように見守っていた訳です。



●女神ウルスラ

 美しく無邪気で可愛らしく、パラリュスの民を元気づけていた女神です。女神テスラとヒコヤについてはしばらくして気づきましたが、気づかないふりをして楽しそうにはしゃいでいました。

 そうして日々、笑顔を振りまき、民に幸せをもたらすのが彼女の役目だったからです。


 また、女神テスラのことも信じていました。

 今は神である自分とヒコヤのことで苦しんでいるのかもしれない。でも……いつか必ず、本当のことを言ってくれるだろう。そのときは目一杯泣いて……でも、その後ちゃんと祝福してあげよう。

 そう思っていた矢先の、デュークの訪問でした。女神ウルスラも自分で思っていた以上に追い込まれていたらしく、デュークの魔の言葉に捕まってしまいました。


 ヒコヤによって神剣みつるぎに封じられた後、二度とデュークの分身に惑わされないために、厳重な結界を施し、その中に閉じこもりました。

 デュークに喰われたことで力を失っていた女神ウルスラは、この結界で力を使い果たし、長い間剣の中で眠っていました。

 途中でデュークの分身は外に出ていってしまったのですが、それにも気づかないほど疲れていました。


 女神ウルスラが目を覚ましたのは、トーマが剣を握ったとき。微かにヒコヤの気配を感じたからです。

 そして剣の宣詞が唱えられ、ヒコヤの存在を確かに感じた途端、デュークが再び剣の中に封じ込められたため、結局ウルスラも結界内に閉じこもっているしかありませんでした。


 ソータがデュークに分身を返したあと、彼女は初めてソータ――つまり、ヒコヤの意思に触れました。そして勾玉の欠片を通じて女神ジャスラとも意識を交わし――現在のパラリュスの状況を悟った訳です。

 後は、シィナに呼ばれて姿を現すのをとても楽しみに……それはそれは楽しみにしていました。

 それが、あの登場シーンとなった訳です。



●女神ジャスラ

 穏やかな春の陽だまりのような女神。パラリュスの人々を癒していました。

 天界にいた頃、特級神の末の息子のデュークはそのエラそうな態度から皆に煙たがられていましたが、女神ジャスラは淋しさの裏返しだと気づき、デューク本人は態度ほど悪い者ではないと思い、それなりに優しく接していました。


 しかしデュークはそれを愛だと勘違いし、やがて「伴侶になれ」と強く言ってくるようになりました。

 特級神の息子ということで無下にもできず困っていた女神ジャスラは、女神テスラに相談しました。そして女神ウルスラも加えた三柱の神で相談した結果、今度の一級神の宣旨が出たら下界に降りようということになりました。


 デュークがパラリュスに現れたとき、女神ジャスラはこれまで自分がきちんと考えを伝えてこなかったこと、ただその場をやり過ごそうとしていたこと、そしてその心の弱さをひどく反省しました。

 だから、今度はきちんと話そうと、一生懸命に国造りの素晴らしさを伝え、デュークにわかってもらおうと努力しました。

 結果、デュークはそれから全く姿を見せなくなったため、ホッとしていました(デュークがジェシカを娶り国造りをしていた期間です)。


 女神ウルスラが狂い、その剣で傷つけられ、闇に侵され――正気を失っていく最中さなか、久し振りにデュークに会いました。その一瞬で女神ジャスラはすべてを悟り、初めて全力でデュークを拒絶しました。

 それからは勾玉の中で嘆き続けていました。時折ヒコヤの気配と癒そうとするヤハトラの巫女の意思を感じるようになり、少しずつ……本当に少しずつ女神ジャスラは癒されていきました。


 初めて正気に戻ったのは、浄化者である水那がラティブのジャスラの涙に触れたときです。ソータの宣詞により力を発揮した勾玉の力と水那の浄化の力を感じ、二人の絆とその子トーマ、そして伴侶の契約が結ばれたことを悟りました。


 その後、必死に助けを求めたまま……また暗闇の世界に帰って行きましたが、次に気づいた時には水那が傍に来ていました。

 水那が女神ジャスラの穢れを祓い、ソータが各地に散らばった女神ジャスラの力を集めて還していったことで、徐々に正気に返る時間が増えていったのです。

 その中でソータの想いを知った女神ジャスラは水那を守ろうと力を発揮し始め……これが勾玉と共鳴し、二人は神属への道を歩き始めたのです。



●デューク

 私のイメージでは「金持ちのドラ息子」という感じですかね。

 デュークが女神テスラに封じ込められるまでの経緯は作中で語られているので、ここでは彼が繰り出した分身について補足しておきます。


 まず、女神ウルスラを堕とすために生み出したものを分身Aとします。これはデューク本体の40%ぐらいを削り出して作られました。

 しかし分身Aは女神ウルスラと共に神剣みつるぎに封じ込められます。そして残り60%のデューク本体は、女神テスラとヒコヤに返り討ちに遭い、20%ぐらいまで激減します。

 自らを癒しつつヒコヤが死ぬ時を待っていたデュークは、50%ぐらいまで戻ったところで今度は女神テスラに封じ込められます。これが東の大地の地下にいたデュークです。


 ウルスラの分身Aは一人の神官のおかげで封印が緩み、外に出られるようになります。

 ここでウルスラを滅茶苦茶にしようと民に暴動を起こさせたり、神官を操作して過去の記録を葬ったり、女神の血を汚そうとミュービュリの人間を差し向けたりと裏で暗躍するのですが、逆に浄化の力を持った女王が現れます。20%ぐらいまで力を削がれ、再び神剣みつるぎに封じ込められました。


 次に目覚めたのは、ヴィオラ(スミレ)が神剣を手に取ったときで、すかさずヴィオラを乗っ取ります。

 ただし皇女こうじょの加護に守られていたため完全に乗っ取ることはできず、やがてヴィオラの結界に封じ込められてしまいました。ギリギリで抜け出しますが、このとき分身Aの力は恐らく5%ぐらいです。そして再び眠りにつきました。


 この千年後、シィナの気配を感じた分身Aは三度みたび目覚め、彼女と闘い始めます。結果、彼女の力を何百倍にも引き上げたあげく負けてしまい、逃走しました。

 もう正攻法では無理だと感じた分身Aは、その八年後、ギャレットと契約を交わして乗っ取り、王宮すべてを掌握しようと動きます。

 これ以降については、「あの夏の日に」「異国六景」「還る、トコロ」「天上の彼方」で語られたとおりです。


 さて、東の大地に眠るデュークの方はというと、ザイゼルが北東の遺跡を調査した際、宝鏡ほかがみの位置が変わり、結界が緩んだことにより目覚めました。

 デューク本体は動けなかったものの、分身Bを切り離すことに成功します。そして地下通路を発見して近寄ってきたザイゼルにとり憑きました。

 つまり、女王を裏切らせたのはこの分身Bの仕業です。本体は分身Bを生み出したあと、カンゼルが現れるまで眠ったままでした。

 その後分身Bは一旦ザイゼルから手を引き、しばし休息をとります。


 やがてカンゼルが本体の眠る神殿奥まで侵入、本体と直接契約を交わします。その際に預けられたのが分身Bです。

 その後カンゼルはジュリアンを生成、預けられた分身Bから小さな分身Cを作り、ジュリアンを管理します。(実際に支配下におくのは、デュークが干渉しても大丈夫になる三歳頃のこと)。この頃の本体は起きたり眠ったりといった夢うつつの状態です。


 そして最後のカンゼルVS朝日。最後、カンゼルはノーガード状態で朝日の攻撃を受けたため、意識はなく、もう完全なる死を待つばかりでした。そのため契約が解除され、分身Bは外に出ざるを得なくなります。

 後は作中で語っているように暁の浄化を受け、剣に逃げ込み、そしてユウの身体にいったん潜んだ、という訳です。


 ジュリアンの中にいた分身Cは暁の浄化の雨で動けなくなり、しばらく休んでいました。「天上の彼方」で暗躍していたのが、この分身Cです。

 その後、ジュリアンとカンゼルを火葬する際、闘技場が掘り起こされました。

 このとき宝鏡ほかがみが掘り返されて結界が緩みます。デューク本体が力を増し、地上のキエラ要塞にまで闇がはびこるようになったのは、このためです。


 あとは、デュークの感情部分のフォローをちょっとだけ。

 デュークがジャスラを好きだったのは、本人も述べているように自分の存在をちゃんと認めてくれていたからなんですね。

 不遇に育ったやさぐれた少年に、幼馴染のお姉さんだけはずっと優しくしてくれた、だから特別な存在で大好き、みたいな感じでしょうか(すりこみに近い)。

 ですので、実際のデュークの好みはというと、ジェシカや朝日のように物怖じせずガンガン突っかかってくるタイプなんじゃないかと思います。


 デュークには、神として、そして特級神の息子としてのプライドがありましたから、ただのヒトの女に惑わされる(=好きになってしまう)のは考えられないことでした。

 ですから、ジェシカのことは最後まで認められなかったんだと思います。


 実際には、それなりに気に入っていたはずです。ドゥンケが幼い子供に成長するぐらいまでは一緒にいたんですから。

 ただ、ジェシカも民から疎まれたことで変わってしまって、デュークが好きだった積極的で気丈な部分が見えなくなったので、面倒に感じ、ウザくなってしまったんだと思います。



●ドゥンケ

 デュークをただの悪い奴にはしたくないな、と思い、女神ジャスラへの片想いやジェシカのくだりなどを考えました。そうしてその流れで決まったキャラクターです。

 重要人物の中では一番最後の登場となった訳ですが……存在感は残せたでしょうか?


 彼についての一連のくだりは、比較的スムーズに作れましたね。最初に映像として浮かんだのは最後のシーン(朝日を庇うシーン)なので、そこに着地するまでを逆算して考えた感じでしょうか……。


 ドゥンケは長い年月を生きてきて、肉体的にも精神的にも神に近かったですから、朝日に惚れるとかそういう感情は生まれていなかったと思います。

 見知らぬ世界から急に現れた朝日が新鮮で、何千年も止まっていた自分の時間を動かした彼女が眩しく、ただただ大事だったんだと思います。

 ……だって、ドゥンケにとって、たった一人の「他人」ですから。それだけで、もう唯一無二の、特別な存在なんです。


 ですから「ヒトごときが」と言っているデュークの方がよっぽどヒトに近いですね。デュークはそのことも何となく気づいていたので「堕ちたくない」(デュークにとってはヒトに塗れることは堕ちることだった)とやたら抗っていたんだと思います。


 さて、ヒコヤの三番目の神獣として誕生した駆龍くりゅうドゥンケですが、パラリュスにやってきた時点では過去のことを殆ど覚えていません。朝日のことを何となく覚えているだけです。

 このあと二百年ほどかけてゆっくりと思い出していきます。


 飛龍レクス、廻龍モーゼ、廻龍ヴォダと違い、ヒコヤやソータと契約は交わしていませんが、神属であるソータと水那の従者として生まれているので、二人には基本、逆らいません。

 ですが最初のうちは本当に子供なので、森に遊びに行ったまま眠りこけてしまったり、ヴォダへの使者として出したのに二匹で遊び呆けてしまったりと、ソータに怒られることもしばしばあるようです。

 ちなみに水那に対してはとても素直です。怒らせたら怖い、と本能的にわかっているようです(笑)。



●ジェシカ

 ドゥンケのところでも書いたように、デュークをただの悪役ではない、ということを示すために生み出したキャラクターです。島主の娘ですがちょっと高飛車なので、島人にそんなに慕われていた訳ではありません。

 だけど、彼女が自分の利益のためだけに島に固執している訳ではない、ということはみんなわかっていたので、その一生懸命さを買っている人もいました。

 ……まぁ、文化祭とかでやる気のないクラスをどうにかまとめて盛り上げようと独りで頑張っている学級委員みたいな感じですかね。本当に嫌っている訳ではないけど、かと言って何かエラそうだし積極的に協力する気にもちょっとなれないな、という……。


 異形の子供ドゥンケのことは、全力で愛していました。デュークが出ていった後も変わらず愛を注ぎました。島人と交流がなくなってしまった今、お互いがお互いしかいなかったので……自分がしっかりしなければならない、と奮い立たせていました。

 デュークがいた頃はデュークに依存しきっていたのですが、その時よりちょっと逞しくなりました。

 デュークの仕打ちは酷かったとは思いますが、それで彼女は本来の自分を取り戻したとも言えます。

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