25話 訓練、アデルvsカリナ先輩
(ライズ)
まさか、マシェが勝ってしまうとは……。
あの無詠唱の連発……、どう考えても教えたのはリーノだよな?
ライズがリーノへ視線を送る。
しかし、当の本人は気づいた様子はなく、マシェと一緒に喜んでいるようだった。
「ほっほっほっ、なかなか優秀な子じゃな」
「が、学園長!? 見ていらっしゃったのですか?」
「途中からじゃがな。でも、こうも圧倒してしまうとなると学園対抗戦のメンバーも再考の余地がありそうじゃな」
「し、しかし、一度決まったものを覆すとなると……」
慌てふためくライズだが、学園長は気にした様子はなかった。
「とにかく次の試合が始まるようじゃ。元学園一位と……アデル・リチャードか。さっきのマシェとは違い何かに特化した能力は持たない、平均的な能力の生徒じゃな。それがリーノと過ごしてどうなったか……」
学園長は興味深そうな視線でアデルたちの様子を窺っていた。
◇◇◇◇◇
(アデル)
お、俺が学園最強と言われるカリナ先輩と試合をするのか!?
どう考えても勝ち目なんてあるはずが……。
いや、リーノはそんな状況でアラン先輩に勝ったんだ。それなら俺も……やれることはしてみよう。
覚悟を決めたアデルはゆっくりと剣を抜く。
「ほぅ、しっかり立ち向かってくるか。なかなか見所があるやつだな」
カリナ先輩はニヤリと口を釣り上げて微笑んでいた。そして、アデル同様に剣を抜いていた。
アデルは自然と剣を握る手に力が入る。
そして、冷や汗が流れる。
目の前にいるカリナ先輩。その威圧をもろに受けて体が思わず萎縮してしまう。
そんな状態のままライズが試合開始の合図をしてしまう。
素早い動きで近付いてくるカリナ先輩。その振り下ろされた剣をかろうじて受け止める。
「……あれっ?」
その剣を受け止めたアデルは思わず首を捻らせる。
「よそ見して良いのか? 一気に決めさせて貰うぞ!」
カリナ先輩が今度は幾重にも切りかかってくる。
ただ、それを容易に受け止めると、あっさりはじき返してしまう。
「やっぱりそうか……」
アデルはこれまで何度もリーノに特訓して貰い、その相手をしていた。
常にリーノの動きを見ていたからこそカリナ先輩の動きはそれほど速いものには見えず、また、力も受け止められる程度に思えた。
「これなら俺にも……」
アデルは指をならすと持っている剣が燃え上がる。
「剣を燃やしてどうするんだ!」
再びカリナ先輩が切りかかってくるので、それを炎の剣で受け止める。
するとそのあまりの熱量にカリナ先輩は顔をしかめさせていた。
斬り合うのを止め、少し距離を開ける。
「くっ……、意外とやっかいだな」
「ただ燃やしただけじゃないですよ。こんなことも出来ますから!」
アデルが何もないところで剣を振るうと炎がそのまままっすぐに飛んでいく。
その直線上には後ろに下がったカリナ先輩がいた。
「突風よ、我が呼びかけに答え、我を守る盾とならん。
すぐに詠唱をするとカリナ先輩を守るように突風が吹き、炎をかき消していた。
「ふぅ……、やはり面白い。ここまで鍛え上げたのもあのリーノという少年の力だろう。でも、今回は勝たせて貰うぞ」
カリナ先輩が腰を下げて魔力を込め始める。
これはリーノの戦いの時に見せた攻撃か!?
それなら俺も今できる最大の攻撃を……。
アデルの方も剣に力を込めていく。
すると剣は更に大きく燃え上がる。
すでに炎は剣の倍くらいの大きさになっているが、更にそれが大きくなっていく。
「これで……終わりだぁぁぁっぁ!!」
カリナ先輩が高速で近付いてくる。
リーノとは違い、その動きは目で追うことが出来ない。
ただ、これだけ大きな炎ならば……。
アデルはまっすぐに剣を振り下ろす。
それは訓練場の半分ほどを燃やし尽くしてしまう大きな炎だった。
さすがにこれだけの攻撃なら――。ぐっ……。
突然後ろから強い衝撃を受けて思わず膝をついてしまう。
その瞬間に首筋に冷たい何かが突きつけられているのを感じる。
「ま、まいりました」
「勝負あり! 勝者、カリナ・レイン」
◇◇◇◇◇
「アデル……、惜しかったね」
隣にいるシーナに呟く。
前に僕とカリナ先輩の戦いを見ていたから前から来ると思い込んでしまったのだろう。
カリナ先輩は力を込めた後、炎の剣が振り下ろされる前にアデルの後方に回り込んでいた。
でも、アデルの油断を誘うためにすぐには攻撃せずに隙を見せた瞬間に攻撃していたわけだ。
「……もしかして、リーノ君。今のカリナ先輩の動き、見えてたの?」
「んっ? 別に普通に見えてたけど?」
特に変わった動きをしていたわけでも、幻惑を使っていたわけでもないから普通に見えていたよね?
ただ、シーナには違ったようで興味深そうに聞いてくる。
「今、カリナ先輩は何をしたの? なんかグッと力を込めているのはわかったんだけど、次の瞬間に姿が消えたと思ったら、今度はアデルの後ろに――」
「えっと……、今のは身体強化の一種だよ。足に強化魔法をかけて一気に相手に詰め寄ったんだよ」
そのことをシーナに説明すると近付いてきたカリナ先輩が感心したような表情を浮かべた。
「一瞬でそこまで理解したんだな。その通りだ、今のは強化魔法を全力でかけたものだ。私の魔法の才能はそっちの方面しかないからな」
どこか悲しそうに苦笑を浮かべていた。
ただ、カリナ先輩を見る限り能力強化の他に別の補助魔法も組み合わせたらもっと幅が広がるのにともったいなく感じた。
「例えば幻惑魔法とかも組み合わせたらどうですか?」
思いついたことを話してみるとカリナ先輩は驚いていた。
「も、もっと詳しく教えてくれないか!?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます