23話 なんで私、ホッとしているのだろう?
(シーナ)
あれっ、リーノ君は?
朝、目が覚めてからが寝ている部屋に入ってみると、そこはもぬけの殻だった。
ただ、荷物は置いたままになっていたので、ちょっと出かけてるだけなのだろう。
そして、マシェはまだ眠たそうに目をこすっていた。
「……眠い」
「もう、夜遅くまで本を読んでるからだよ」
少し頬を膨らませながら注意をする。
しかし、マシェは気にした様子はなく再び大きな欠伸をする。
大きなフードを被っているからわかりにくいが、マシェの髪はボサボサに跳ねていた。
「もう、女の子なんだからちゃんとしないと」
鞄の中から木櫛を取り出すとマシェの髪を梳いていく。
するとマシェはくすぐったそうに声をもらしていた。
「……んっ」
しばらくそれを続けているとマシェの髪はすっかりさらさらの状態になっていた。
そんなマシェの髪と自分の髪を見比べる。
「どうしたらそんなにさらさらになるの!?」
「……なにもしてない」
マシェは再び大きな欠伸をしてねむそうにしていた。
◇
昼頃まで待ってみたが、リーノは戻ってこなかった。
「さすがに遅いよね?」
シーナの言葉に同調するようにマシェは頷いていた。
「少し探しに行ってみようか。でも、リーノ君が行きそうな場所って……」
「……冒険者ギルド」
マシェの呟きにハッとなる。
確かにここの冒険者ギルドの人とは顔見知りだったようだし、もしかするとリーノはそこにいるのかも。
「それじゃあ行ってみようか」
シーナ達は冒険者ギルド目指して歩いて行く。
そして、ギルドにたどり着くとどこか慌ただしい様子だった。
そんな中、シーナ達は昨日リーノが話していたお姉さんの下に行く。
「すみません、少し良いですか?」
「あなたたちはリーノ君の――。うん、今なら大丈夫ですよ」
お姉さんが笑顔で答えてくれる。
「リーノ君の姿が見えないんですけど、どこに行ったのかわかりませんか?」
「……うん、知っていますよ。リーノ君は今、ギルドの緊急依頼を受けてもらっていますので」
「……緊急依頼?」
「どうして、リーノ君が?」
リーノ君は確かに冒険者と言っていた。
六歳の子にわざわざギルドから緊急依頼を?
でも、リーノ君の強さを考えたら何も違和感はないかも。
「うん、リーノ君なら緊急依頼を貰っていてもおかしくないか」
シーナは苦笑を浮かべる。
それを見てお姉さんは少し驚いた様子だった。
「君たちはリーノ君を見ても不思議に思わなかったの?」
「不思議は不思議ですよ。リーノ君、すごく強いし……。でも、強いだけで普通の男の子だよ」
「……色々教えてくれるから好きなの」
マシェの突然の発言にシーナは驚いて彼女の方に振り向く。
しかし、マシェはそれを気にした様子もなくいつもの表情を見せていた。
それを見てシーナは彼女が言った「好き」は恋愛のものではなく、ただ人として好きという意味なんだと理解して、どことなくホッとする。
「あれっ、なんで私ホッとしてるんだろう?」
自分の感情を不思議に思い、シーナは首を傾げていた。
◇◇◇◇◇
うぅ……。少し遅れちゃったよ。シーナ達、怒ってないかな?
緊急依頼の相手だったファイアフェニックスを討伐し終えた僕はキッケルの町へ向けて大急ぎで走っていた。
遅れた理由は単純でファイアフェニックスの暴れた理由がなかなかわからなかったからだ。
まさか、暴れた理由がない……。むしゃくしゃしてやった……とは思わなかったよ。
人の言い伝えも当てにならないね。
とにかく急いで帰ろう。
人目も気にせずに僕は高速で町へ向かってとんでいった。
しかし、それでも町に着いたのは夕方過ぎだった。
真っ先にギルドへと帰ってくるとお姉さんが楽しそうにシーナ達と話をしていた。
「それでね、リーノ君が初めて魔物と戦ったとき、なんて言ったと思う?」
「弱くて気づかなかった……とか?」
「ううん、魔法で魔物が逃げていったと思っただって」
「リーノ君らしいね」
なんだか僕の話で盛り上がっている様子だった。
「ただいま戻りました」」
僕が声をあげるとシーナとお姉さんは驚きの表情を浮かべていた。
「お、おかえり……。リーノ君」
「……リーノ、おかえり。今、リーノのことを聞いていた所なの」
興味深い話が聞けたとマシェはどこか満足そうにしていた。
「うん、それでどんな話をしていたの?」
「リーノが魔物を倒して――もごもご……」
マシェが答えてくれようとしたとき、慌ててシーナがその口を塞いでいた。
「な、何でもないよ。それより討伐し終えたのですか?」
「うん。ただ、暴れている理由は特になかったよ。本当に人騒がせな鳥だったよ」
一応魔物の正式な名前を言うとシーナ達に気づかれるかなとそこは言わなかった。
「わ、わかりました。今報酬を持ってきますね」
慌ててお姉さんが奥へと向かっていく。
僕がSランク冒険者ってことを話していないよね……と、少し不安に思ったがそれもマシェの様子を見る限り大丈夫そうだった。
「リーノはすごい……」
なぜか尊敬の眼差しを向けられていたが、特に避けられている様子もなかったので気にする必要はないかな。
「それで、リーノ君。そろそろ学園へ戻らないとダメだよね? 馬車で帰るなら……」
確かに長期休みと言ってもそのほとんどが馬車での移動に取られてしまってあまり長居できない。
「それにリーノ君、そろそろ学園対抗戦の準備もしないと行けないもんね」
そういえば学園に戻ったらすぐ始まるのだったかな?
「学園対抗戦って準備がいるものなの?」
「もちろんだよ! これに優勝できたらどんな職業にも就けるって大会なんだよ! リーノ君ならきっと王国親衛隊とか賢者協会とか様々な場所から引っ張りだこになるよ!」
うーん、別に僕は学園を卒業したらそのまま冒険者として生活するつもりだからどこかにつかなくて良いかな……。
そんなことを思いながらシーナが嬉しそうに話しているのを聞いていた。
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