13話 剣を振って地面が割れるわけないもんね

 夕方になると訓練を切り上げて僕たちは食堂へとやってきた。

 いつもなら一人で食べるところだけど、今日はみんなで一緒に食べようということになった。


「リーノ君、今日はありがとうね」


 シーナが嬉しそうにお礼を言ってくる。


「……んっ」


 それにつられるようにマシェも小さくうなずいた。


「そんなことよりリーノ、あっちを見てみろよ」


 珍しくアデルも一緒に食事をしていた。普段なら真っ先に姿を消しているのに……。

 でもやはりその目は少女の姿を追っていた。


「もう、アデルは。リーノ君はそんなこと興味ないんだからね!」


 アデルに対して注意するシーナ。

 ただ、アデルの様子がいつもと違う感じだったのが気になって僕は彼が指差していた方向を見てみる。

 そこにいたのは長く、先端が少しウェイブがかった金髪の少女だった。


 やっぱり女の子なんだ……。


 苦笑しながらその少女の姿を追っていた。

 どこか気の強そうでキリッとした表情。


 年はシーナくらいだろうか?

 背丈が彼女くらいの大きさで、腰には剣を携えていた。


 あれっ、剣?


 僕が首を捻っているとアデルが教えてくれる。


「あの子はどうやら剣がメインの子みたいだ」


 アデルに言われて始めて僕は少女の魔力を調べた。

 確かに彼女からほとんど魔力のようなものを感じられなかった。


「本当だね……」


 基本的に素質を認められないと入学できないこのライゼンフォルト学園。

 魔法の素質がほとんどない状態で、剣の腕だけで入ったのならその力はすごいものだろう。


 もしかして、Sランク冒険者である僕に匹敵するほどの力の持ち主かも……。


 それなら僕自身も力を隠す必要がなくなる訳だもんね。

 そんな期待のこもった目で見ていると少女がまっすぐ僕たちの方へ向かってやってきた。


「あなた、魔法組の生徒ね。ちょっと付き合いなさい」


 突然少女に声をかけられる。

 違う人に声をかけたのかと思い、周りを見てみる。

 しかし、少女の知り合いみたいな人はいなかった。


 僕はゆっくり自分に指をさしてみる。


「えぇ、あなたよ」


 少女が頷く。でも、僕は彼女のことを知らないのにどうして?


 不思議に思いながらシーナの方を向いてみる。

 すると彼女も首を傾げていた。


「……どうして、リーノを?」


 僕が不思議に思っていたことをマシェが聞いてくれる。


「もちろんあなたが弱そうに見え……、いえ、魔法組の生徒だからよ!」

「魔法組?」


 さっきから何回か言ってるけど、魔法組って何のことだろう?


「えぇ、魔法が使える生徒のことよ。一般的に魔法が上で使えないものは下と言われてるのよ。……そんなことはないのに。だから私がそれを証明して見せるの」


 別にそんなこともないと思うけどな。それに今まで魔法組と呼ばれていることすら知らなかったし……。


「……それならなんでリーノを?」

「それは貴方が弱そう……。いえ、魔法を使うイメージそのものだったからよ!」


 さっきから何度も言い直す少女。


「えっと……、リーノ君、強いよ? 本当にいいの?」


 改めて聞き直すシーナ。

 しかし、少女は自信ありげに頷いていた。いや、よく見ると僕が強いと聞いてから少し体を震わせて怯えているようにも見える。

 その様子にシーナは心配そうに僕を見てくる。


 この少女を相手にしていいのだろうか?


 まるで僕が悪者に見えるんだけど……。


「そ、そんな……、魔法が使えたらこんな小さい子でも強くなれるの……? ううん、それでも私の方が剣術は上のはず……あっ!?」


 少女は何か思いついたようにじっと僕のことを見てくる。


「勝負の方法は私が決めさせてもらってもいいかな?」


 まぁそれで気がすむなら好きにさせてあげた方がいいよね。

 僕が頷くと少女が指差してくる。


「それなら剣で勝負よ!」


 ◇


「魔法が使えなくて、この学校にいるってことはあの子、剣がすごく使えるんじゃないの? そんな勝負で僕に勝ち目ないでしょ」


 少女が去って行った後にシーナたちに相談する。すると彼女たちは一瞬固まった後に笑い出す。


「あははっ、大丈夫だよ。リーノ君なら」

「……コクッ」


 その信頼はどこから来てるんだろう?


 あっ、そうだ。直接僕と剣で戦ったアデルならわかってくれるよね。

 しかし、アデルの方を向いてみると彼はすぐに目を逸らしてしまった。


「そういえばリーノ君、剣で勝負って魔法は使ったらダメなの?」

「うん、直接相手を攻撃する魔法は無しで……だって」

「つまり、あのアデルと戦った時の魔法は使えないんだね……」

「えっ!?」


 あの時、魔法使ってないんだけど……?


「だって、剣を振って地面が割れるわけないもんね」


 さも当然のように言ってくるシーナ。

 でも、普通に振ったら地面割れたんだけど……。


 もしかして、力を込めすぎてたのかな。

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