リップサービスも必要でしょう?


「姉さん、そろそろ年末だけど、蓬莱にいってくるわ」

 ニライカナイで、美子さんが茜さんにこんなことを言っています。


「クリームヒルトを抱きたいの?」と茜さん。


 美子さんが、

「なんでそんな発想になるのですか!」

「そろそろ蓬莱も見に行った方がいいでしょう!」


 茜さんが、

「まぁそうですね、宇賀さんがいるから大丈夫とは思うけど、彼女、すこし考えすぎるところがありますからね、時々声をかける必要ありですか」


 美子さんが、

「そういう事、幸い今度の土日はカリさんと森さんの当番の日、蓬莱に行っても、サリーさんには叱られないわよ」


 茜さんは、

「たしかに森彰子は頑張っていると聞いています、貴女が自ら出張ってもいい話ですね、土曜はカリでしたね、ムスタンにいくの?」


 美子さんは、

「蓬莱ステーションの夜となるわ、昼間に蓬莱の関係者と会おうと思うのよ」


「大司教区政府の代表者を呼ぶの?」と茜さん。


 美子さんが、

「そろそろ蓬莱ステーションを案内してあげましょう、女達は案内したのですからね、リップサービスも必要でしょう?」

「宇賀一族にもでしょう?」と茜さん。

「えらく先読みしますね」と美子さん。


 茜さんが、

「さっき云っていたじゃないの、宇賀真琴はすこし考えすぎるところがあるって」

「大司教区政府の代表者を呼べば、蓬莱は仲間の一つであるというようなものでしょう?」

「宇賀真琴は蓬莱命というところが有りますからね、安堵するでしょうね」


 美子さんが、

「あの人賢いですからね、蓬莱がパラレルワールドではないって、きずいているでしょう」


「あら、そうなの?」と茜さん。

「よくいいますね、イシスともあろう方が」と美子さん。


 茜さんは、

「でも本当よ、パラレルではないとは分かるけど、なぜかは分からないのよ、神の思惑としかいえないわね」


 美子さんも、

「正直、私も同じなのです、ただ宇賀さんがヤキモキしているかな、とは思うわね」


「アナーヒターも大変ね、この間、男性体の遺物の件で、アリシアのお守をしていたというのに、ニンニルの件で嫌味をいわれたのでしょう、この上、沢山女を増やして、私知らないわよ」

 茜さんにそのように云われて、肩をすくめた美子さんです。


 土曜日、蓬莱ステーションに、大司教区政府の代表者が招待されました。

 金曜日に、ムスタンタウンに集まっていた皆さんです。


 宇賀さんが、

「蓬莱ステーションにようこそ、皆さまを歓迎します、本日は美子様、つまり女神アウロラ様が来られておられます」


 そんな訳で、美子さんの案内で蓬莱ステーションを見学していた大司教区政府代表の皆さんでしたが、驚異の科学技術力に唖然としていたようです。


 美子さんが、

「まだ蓬莱世界は、ここより先には扉が開かれていませんが、ここは名前の通りステーション、ここから宇宙鉄道、ヴィーナス・ネットワーク・レイルロードと呼ぶのですが、幾つもの宇宙を繋いでいます」


「少し説明させていただければ、この蓬莱がある宇宙の隣、テラ宇宙を抜け、中原宇宙と呼ばれる所にある、ニライカナイという人工惑星群がヴィーナス・ネットワークの本拠地です」


「そのほか、幾つもの宇宙をつなげていますが、ほとんどは軍事管理領域となります」

「この蓬莱宇宙を管轄しているのは、バアル・ゼブルという軍司令官ですが、この蓬莱については女神アウロラ奉仕協会と名乗っている執政官府がおかれていて、軍は防衛の為だけにあります」


「一応執政官の要請が有れば、すぐに出動すると思います」

「またこの蓬莱ステーションは、レイルロードの一般的な標準ステーションですが、軍事要塞の性格を持っています、蓬莱の防衛は完璧と考えられます」


「宇賀真琴執政官後見から、説明資料を受領しているでしょうから、こまごまとした説明はそちらをお読みください、またこのような機会はまずありませんので、皆さんのご質問には真摯にこたえますよ」

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