顧問の先生が、

「もうすぐゴールデンウィークです」

「郷土歴史研究会としては、部員の皆様の研究レポートを、今度の五月の活動報告に載せることとなりました」

「各人なにか一つ、郷土の歴史についてのレポートをお願いします」

「簡単なものでよいですよ」

　こんなことをいいました。

「先生、お友達との共同でもいいですか？」

　と誰かが聞いています。

　顧問の先生は、

「そうね、まぁいいでしょう、皆さんも、お休みをエンジョイしたいでしょうからね」

「では共同研究の班でも決めますか、後から乗っかる人がいそうですからね」

「先生、ひどい！」と部員たち。

　当然のように吉川クリームヒルトさん、浮田京子さん、山野乙女さんの三人は一緒です。

「クリちゃん、部活のレポートだけどなんにする？」と京子さん。

「私、あまり郷土の歴史を知らないの……どうしよう……」とクリームヒルトさん。

　乙女さんが、

「そんな難しいことを書くことないわよ、どこかへ行って、そのあたりの由緒を、書き写してくればいいだけよ」

「とにかく、明日までに考えてこない？」

　ということで、その日は帰宅したのです。

　帰るとフランソワーズさんが、ソワソワしていました。

「どうされたのですか？」とクリームヒルトさん。

「クリームヒルトさん、茜様がもうすぐいらっしゃるの」とフランソワーズさん。

「茜姉様が！」とクリームヒルトさん。

　

　宇賀さんと一緒に茜さんがやってきました。

　でももう一人、思わぬ人がいました、美子さんです。

　美子さんが、

「クリームヒルト、元気そうね、姉さんに誘われてね、なんとかハウスキーパー事務局に掛け合って、蓬莱で一週間ほど滞在出来ることになったの」

「そういうわけで、美子とのんびり過ごすつもり♪」と茜さんが言葉を続けます。

「ところでクリームヒルト、女官制度を発足させたと聞いたわ」

　と美子が聞きました。

「はい、蓬莱御巫(ほうらいみかんなぎ)と称します」とクリームヒルトさん。

　茜さんが、

「ハレムはどうなったの？」

「……まだそこまでは……」とクリームヒルトさん。

　美子がさん、

「まだそんなものは必要ないの！もう十分いるでしょうに！」

　宇賀真琴さんが、少し赤くなっていますね。

「そんなことより、皆でどこかへ行かない？」と美子さん。

　クリームヒルトさんが少し困った顔をしたのを、美子さんは見逃しませんでした。

「なにか用事があるの？」

　クリームヒルトさんは今日の事をしゃべると、美子さんが、

「その三人って、女官になったのよね……」

「はい、執政官の権限で……」とクリームヒルトさん。

「その娘さんは、ご両親の許可を得たのかしら？」と美子さん。

「多分いっていないかと……」とクリームヒルトさん。

　美子さんが、

「これは一度会って親睦を深めた方がいいようね、ねぇフランソワーズさん、ご協力願えませんか？」

　この後、フランソワーズさんは、浮田さんと山野さんのお家に電話をかけました。

　

　……家の娘とそちらの娘さんが、どうも蓬莱御巫(ほうらいみかんなぎ)に応募したらしい……しかも採用通知が来たという……

　そうですか……家の娘と一緒なら構わない……私も致し方ないと考えているのです……そうですね、一度皆で集まって親睦会でもいたしますか……これから仲良くしなければなりませんし……

　ゴールデンウィークの初日に、顔合わせをすることになりました。

　

　翌日、

「ママにしかられたわ、でもしかたないって！」と乙女さん。

「うちはクリちゃんが一緒なら、かまわないって♪」と京子さんむ。

　

　ゴールデンウィークの初日の顔合わせは、女ばかりとなりました。

　フランソワーズさんが挨拶します。

「はじめてお目にかかります、吉川フランソワーズです」

「こちらは長女の茜、次女の美子、三女のクリームヒルト、四女のヴァランティーヌ、上の二人はアメリカに留学していますが、たまたま帰ってきていたので連れてきました」

「これからよろしくお付き合い願います、とくに下の二人とは、仲良くしてやってください」

　フランソワーズさん、まぁまぁのご挨拶、外人さんなのでこれでいいでしょう。

　でも確かに外人さんですが、世界が違う外の人なのですけどね。

　山野さんのお母さんが、

「クリームヒルトさんには、家の娘と仲良くしていただき、ありがたく思っています」

　同じ趣旨のことを、浮田さんのお母さんも云いました。

「娘たちも仲良くしていますので、またこのような機会を持ちましょう」

　浮田さんのお母さんが、

「そうですわ、娘たちの部活の件ですが、一緒にどこかに行くことにしませんか？やはり大人が付いていけば、一泊ぐらいできますものね」

　と話がまとまりました。