第55話 ほのぼの悪魔サクラの魔法適性と過去
ダンジョン1階層からヒロトルート5階層へ。
大人数での探索が終了した。
時間は、2の鐘、午後2時だ。
「では、わたしは、政務があるでのう」
エリス姫は、領主館にあっさり引き上げて行った。
「領主だから、忙しいんだな」
サクラが、口をとがらせる。
「なんか、お貴族様のダンジョン探索って感じでしたよね」
サクラは、今日の探索が不満らしい。
「まあ、でも仕方ないさ。これからどうしようか?」
「ギルドに戻りませんか? 買い取りの精算も済んでないですし」
「わかった。そうしよう」
俺達は、冒険者ギルドに向かった。
冒険者ギルドは、忙しそうだ。
冒険者は出払っているのだが、商人の出入りが多い。
新ルートは、ビジネスチャンスと考えているのだろう。
俺たちは、ジュリさんの受付カウンターに座った。
ジュリさんは、1枚のメモ書きを手渡して来た。
おととい納品した、ダンジョン10階層までの、獲物の買い取り計算だ。
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◆4階層
ダンジョンボア×22
魔石: 100G×22= 2200G
肉: 2000G×22=44000G
レッドボア×1
魔石: 500G
肉: 6000G
◆5階層
リーゼントシープ×2
魔石: 500G×2= 1000G
羊毛:10000G×2=20000G
◆6階層
プチブル×10
魔石: 200G×10= 2000G
肉: 3500G×10=35000G
ブルブル×2
魔石: 700G×2= 1400G
肉: 10000G×2=20000G
◆7階層
ダンジョンバット×80
魔石: 200G×80=16000G
ジャイアントバット×2
魔石: 300G×2= 600G
翼: 15000G×2=30000G
◆8階層
ポッポ×50
⇒0G
キラーポッポ×2
⇒0G
◆9階層
ダンジョンクロー×10
魔石: 200G×10=2000G
キラークロー×2
魔石: 300G× 2= 600G
◆10階層
オオヒクイドリ×1
魔石: 700G
羽毛:30000G
肉: 5000G
◆解体費用:無料
◆合計:21万7千G
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セレーネとサクラも横から覗き込んでくる。
サクラが口を開いた。
「うーん。数が多い割に、買い取り額が渋いですね……」
「ルドルのダンジョンの魔物はね……。魔石も無属性だから、あまり値段が付かないのよ」
そうそう。
だから、中級以上の冒険者は、もっと稼げるダンジョンがある街に行ってしまう。
それでも1万G超えの素材の買取があるから、まだ良い。
サクラは、続けてジュリさんと話している。
「7階層以降の鳥系の魔物は、安いですね……」
「そうなの。魔石自体が、小さいのよ。食べられないのも多いし」
「ポッポやキラーポッポは、0査定ですか?」
「ごめんね~。魔石が米粒より小さいのよ。使える素材もないの」
ポッポは、ガッカリ魔物の代名詞だ。
でも、カードは知力上昇だったから、俺としてはタダ働きにはなってない。
「だから、みんな新ルートに期待しているのよ。新ルートの方の魔物の買取は、しばらく待ってね。ギルドマスターが商人ギルドと話を詰めているから。はい、これ次ね」
ジュリさんは、もう一枚メモ書きを出して来た
こちらは、依頼達成の報酬の計算だ。
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◆遺品回収 1件 5000G
◆素材回収 3件
オオヒクイドリ 羽毛 10000G
ジャイアントバット 翼×2
10000G×2=20000G
◆ギルド報奨金(カード回収)
1000G×2=2000G
◆合計 3万7千G
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「遺品回収ありがとう。1件、該当する依頼が出ていたわ。遺族に連絡して、近日中に引き渡します。ギルド報奨金は、冒険者カード回収に対するギルドからのお礼ね」
良かった。
遺品が、遺族に渡るなら、持って来た甲斐があった。
ジュリさんは、メモ書きを指さしながら続ける。
「ジャイアントバットとオオヒクイドリの素材回収依頼が出てたから、後付けになるけど、依頼達成って事にしておいたわ」
「ありがとうございます!」
「合計は、25万4千Gね。8万4千Gづつ、3人の口座に振り込んでおいたわ。端数2千Gは、パーティーの口座に入れておいたわ」
「ありがとうございます。サクラは、いきなりCランクでしたけれど、良いんですか?」
「サクラちゃんは、
ダンジョンボア討伐で、FからEに昇格。
そのメモ書きに書いてある依頼達成3件で、EからDに昇格。
新ルート発見とエリス姫襲撃撃退の功績で、DからCに昇格。
と言うのが、内部的な処理ね。だから問題ないわよ」
サクラが、興奮しだした。
「ついに! 時代がわたしに追い着きましたね!」
「そうねー。それから、サクラちゃんは、ジョブにつけるわよ」
間髪入れずサクラが答えた。
「魔法使いで、お願いします!」
「良いと思うわ。サクラちゃん、MPや魔力が多いわよね。じゃあ、これやってみて」
ジュリさんは、ソフトボール位の大きさの水晶玉を、サクラに手渡した。
サクラは、水晶玉を右手の中でクルクル回している。
「これは、何ですか?」
「これはね。属性魔法の適性をチェックする魔道具なの。水晶玉に、魔力を流し込んでね。水晶玉に意識を集中する感じ」
サクラが、水晶玉を回すのを止めて、ジッと水晶玉を見つめた。
水晶玉に、大きな白い光の玉が現れた。
ジュリさんは、水晶玉の白い光を見て、興奮気味だ。
「おお! サクラちゃんは光魔法の適性が、かなりあるわね! 神官向きよ!」
ジュリさんの言葉を聞いて、俺とサクラは、同時に声を出してしまった。
「えっ!?」
「えっ!?」
サクラは、フリーズしてしまっている。
俺が、ジュリさんに確認をした。
「あの~、ジュリさん。光魔法って、回復系のヒールとかの?」
「そうよ。神様の力を借りて、体力を回復させるのよ。聖魔法とも呼ぶわね」
ど、どう言う事?
サクラは、悪魔なんですけど。
神様の力は、借りられないですよね……。
「あの、サクラは、【スリープ】が使えるのですが……。あれって闇魔法じゃ……」
「闇魔法の適性は、ないわね。【スリープ】は、適性が無くても、覚えれば使えるけれど、効きがあまり良くないわよ」
そう言えば、【スリープ】が効かない事が、ちょいちょいあったよな。
悪魔なのに、闇魔法の適性がないとは。
さすがサクラと言おうか……。
俺とサクラは、言葉を失った。
「……」
「……」
セレーネが、不思議そうに水晶玉を覗き込んで、ジュリさんに話した。
「ジュリさ~ん。話が良くわからな~い」
「魔法は、属性魔法と無属性魔法があるのよ。火、水、風、土、光、闇の6属性の魔法は、属性に適性がないとダメなの。使えても威力が出ないのよ」
「へー」
「で、サクラちゃんの持っている水晶玉は、白い光があるでしょう? これは光魔法の適性があるって事なの。光が大きいから、適性が大いにあるのよ」
「他の属性は、何色?」
「火が赤、水が青、風が緑、土が茶色、闇が黒ね」
「私も~やりた~い!」
ジュリさんとセレーネが話している間に、俺とサクラは【意識潜入】で話をした。
(えーと、サクラさん。あの……)
(すいません。ヒロトさん。悪魔のクセに、闇魔法とかの適性なくて……)
サクラが、もの凄い落ち込んでいるのが伝わって来た。
スキル【意識潜入】のせいか、俺の心にダイレクトに響いて来た。
俺は、必死にフォローを始する。
(いや! 気にしないで良いよ! サクラが、回復魔法使えると、ありがたいよ! この前のレッドリザード戦みたいに、ボロボロになっちゃうこともあるしさ!)
(ふえ~)
頼むから【意識潜入】中に、泣かないで欲しい。
心にダイレクトに響いてツライ。
(ドンマイ! 神官になれば良いじゃん! 悪魔の神官なんてカッコいいよ!)
(そんな、アメプロのギミックみたいなの嫌ですよ~)
(そうか? ジ・アンダーテイカーみたいで、俺は好きだけどな)
(じゃあ、ヒロトさんがマネージャーのポール・ベアラー役だけど、良いんですか?)
(すいませんでした)
七三分けにして、卵みたいな骨壺を、撫でまわすのはごめんだ。
サクラが、ポツリポツリと話し出した。
(わたし……、悪魔の世界で、落ちこぼれだったんですよ……)
(え? どう言う事?)
(他の悪魔が出来る事が、わたしは出来ないんですよ)
(……それは、大変だね)
(日本で悪魔活動をしていたんですけど、全然出来なくて……)
(それで、日本のアニメとか良く知っているんだ?)
(はい。本当は、人間に憑依して、悪の道に引きずり込まないと、いけないんですけど、ダメで……)
それは、むしろダメで良い気もするけれど……。
まあ、悪魔としちゃ困るんだろうな。
(仕事が、はかどらないって感じか)
(そうなんですよ。仕方ないので、一緒にテレビを見たり、マンガを読んだりしていました)
(ほのぼの悪魔だな……。魔法の【スリープ】は、どうしたの?)
(眠れない、って人が多かったから、がんばって覚えたんですよ)
(それは素晴らしい!)
(すごい感謝されましたよ。人間が夜になっても眠れないなんて。日本も大概に病んでますよね)
(すいませんでした)
そういう背景が、サクラにはあったんだな。
スキル【意識潜入】で話しているせいか、サクラの感情がダイレクトで伝わる。
話し終わって、かなりスッキリしたみたいだった。
(まあ、でも良かった。俺は、今のサクラが付き合いやすくて好きだから)
(ふふ。ありがとうございます)
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