転移してきたルシファー様は、ゾーイさんの状況に驚きました。

　右の乳首は刎ねられ、乳房から大量の血がとめどなく流れています。

　血まみれになりながら狂っているゾーイさん。

「ゾーイ！」とルシファー様。

　ルシファー様の一喝で、ゾーイさんはルシファー様を視認したようです。

　ルシファーがいるぞ……この後も嬲ってほしければルシファーを殺せ……

　私の仇を……私の失くした魔眼の代わりに、ルシファーの眼をくれ……殺してくれ……

　ゾーイさんは完全に狂ったようになっています。

「おのれ……ルシファー……殺してくれる……」

　ゾーイさんは近くにあったナイフを掴むと、ルシファー様に飛びかかったのです。

　類まれなる体術で、ゾーイさんをかわしたルシファー様でしたが、ゾーイはテレキネシスの使い手です。

　そのまま空中に浮遊、体制を立て直すと、上空から体当たりをかけてきたのです。

　再びこれをかわしたルシファー様でしたが、その瞬間にゾーイさんに腕を咬まれました。

　そしてナイフが左肩を貫いたようです。

　委細構わず、右手でゾーイさん殴り倒して、気絶させたルシファー様。

「すこし手荒だったかしら、でもゾーイさん相手では、あまり手も抜けないし、ごめんなさいね」

　さすがのルシファー様も、自らの女であり、守ると誓ったゾーイさんに対して、何とかしたかったようです。

　ルシファー様は、ボロボロのゾーイさんの身体を治しにかかります。

「かなり脳の損傷がひどいわ……かなり飲んだのね……それに……そうなの……婚約していたのね……悪い事をしたわ……」

　そんなことを云いながら、かなり熱心に治療をしています。

「これで脳は治療できたわ、さすがに疲れたわね……廃人寸前だったわね、脳内麻薬を制御しているから、なんとか傷の痛みも感じないでしょう」

　その後も延々と傷を治し始めました。

　子宮までも負傷していた裂傷でしたが、苦労して治療しました。

　　斬り飛ばされていた乳首も復元したようです。

　さすがのルシファー様も疲れ果てたようです。

　ルシファー様の予定はかなり詳細に決まっているのですが、

「ねえ、私の予定、一日順延してくれない……」

「そう、ゾーイさん、重傷でね、お願いします」

「そんなに怒らないでよ……そうそう、公式予定は姉にお願いして……頼みますよ……」

「明日から働きますから……お休みをお願い……くださいな……」

　ゾーイさんが目を覚ました時、ルシファー様はどこやらに通信しながら、平身低頭してお願いしていました。

　多分ハウスキーパーなのでしょう。

　ルシファー様……

　ルシファー様が、

「あら、きづいたのね？かなり大怪我をしていたわよ……」

「フルーツガール産ホモ・サピエンス母乳に、ウィルスが混入してうなされていたのよ……」

「ではルシファー様が治療を？」とゾーイさん。

　ルシファー様が、

「御免なさいね、すこし気絶してもらうために……ちょっと叩いてしまって……痛かったでしょう、ほんと、ごめんなさいね」

　何事もなく、そのような事を云っています。

　でもゾーイさんは、ルシファー様の肩が負傷しているのに気が付きました。

　しかも、腕に咬み跡がついているのです。

　……私の歯型？