159 劇的な展開は望んでないです

一週間前、ヴォルダーベック伯がオーランド先生とオトウェイ枢機卿を連れて一緒に転移して来た後は、当然ながら大騒ぎになってしまった。

ゼッターランド家は王都ヴェラールから遥か遠くの男爵家だし、本人も招待客も「賢者」の二つ名も眩しい宰相のオーランド先生とは直接喋る事はもちろん、もしかして顔すら見た事がなかったかもだしな。


それはいいんだけど、その騒ぎに料理人を含む全員が気を取られてしまい、調理器具に乗ったスヴェルトがずーっと火に炙られてしまっていたのだ。

私も未体験のスヴェルト料理で火加減が分からないながらも、焦げる前に有無を言わさず胴体を串刺しにしている槍のような器具を掴み、国旗の旗持ちのような感じで抱え上げた。


それに気づいた料理人が慌てて受け皿を持ってきたけど、肉汁もボタボタと流れてしまい、途中からはグルグル回転もしてなかったので片側は焼けすぎで焦げて片側は生焼けという、料理人の表情が語る通りの何とも不本意な出来になってしまったのだ。

私にとってはこれ以上ないぐらいの一大事だったけど、他の人にとっては宰相やら偉いさんが来た方が重大事だったらしく、失敗作のそれは問答無用で下げられてしまった。


愕然とした私だけど、腹減って死にそうな栄養失調状態のドリスさんを放っておく訳にもいかず、話し合いするにしても私も招待客も腹ペコのままでいる訳にもいかず、泣きそうな料理人とゼッターランド家の人を放置もできず、しょうがないので収納袋から飛竜のゴロゴロ肉入りパンシチューやらピザやらを出して配った。

パンシチューもピザも美味しさはいつも通りではあったけど、私の意識も胃袋も完全に名物料理を食べるように準備されてたので、ションボリ気分が満載でした。


そんな私の気分の上げ下げはともかく、私の予想通りにオーランド先生はドリスさんを一目見て、その場で魔術師団に強烈な一本釣り状態で勧誘して、ドリスさんも体が治り次第ヴェラールに行くと決まった。

その後の話し合いでゼッターランド家もフローラのところと同じく、私が宣言した通りに私の寄り子になると決まった。


まあ決まったのはいいけど、私の仕事は難しい事をヴォルダーベック伯に丸投げする事ですけどね。

そしてタイラーとかいうボンクラの処分と、その父親の第六魔法師団長をどうするかってのはオーランド先生に同じく丸投げ。


本当に楽しみにしてた名物料理、しかも目の前にあったのに食べられなくなった衝撃で、私はそれどころじゃなかったからな。

でもウチに帰ってミリア達を抱きしめて、くんずほぐれつゴロゴロしたら一発で元気になったけどさ。


「そのお姉ちゃん、良かったね!」

「はやく元気になるといいね。」

「お姉ちゃんのカレーを食べたら元気になるよ。」

「わるいおとこに引っかからないでよかったね!」

「やっぱり「腹が減っては戦は出来ぬ」だよ!」


それに、マナの記憶を見せた子供らが口々に言ってきて、その元気の良さとか思いやりとかのマナに、私の気持ちも和んだわ。

何日かの間に私の頭の上で飛び交ってた書類仕事とか手続きが全部終わって、ゼッターランドの領地にミリアム基金の開設予定も決まった今日、改めて仕切り直しとしてスヴェルトの名物料理を食べに来たのだ。


でもヴォルダーベック伯が話を通してくれてて来たのはいいけど、肝心のスヴェルトのお肉がないという返事だったので、許可をもらってお兄ちゃんと一緒に狩りに来ている。

スヴェルトはその巨体も相まってかなり強いらしく、冒険者ギルドでも上級以上の二十名以上で罠や事前準備を使った集団の狩りが推奨されてる魔物だそうだ。


確かに家の大きさの巨体の突撃を喰らったら一発で空を飛ぶだろうし、代名詞のでかい角は人の持つ槍より間合いも広いし、並みの矢やら槍でも刺さりもしない毛皮の防御力も半端ないとギルドの情報にはあった。

だからゼッターランドを含めてこの地方の名物料理になってはいるけど、スヴェルトの討伐は難しいから値段も高く、よっぽどのお祝いとかでないと食べられないと後で聞かされたわ。


私らが定期的に狩ってる飛竜の、この地方版みたいな感じか?

実際に飛竜の生息地域と重なってる地方では、スヴェルトと飛竜が争ってる目撃情報も結構あるみたいだけど、戦闘力的には互角みたいで勝ったり負けたりという話だ。


だから飛竜がいないこの地域では、生態系の頂点に立ってる感じか。

男爵とはいっても一応は貴族のゼッターランド家でも、この前みたいな丸々一頭を使った料理とかは滅多にないそうで、本当に惜しい事をしたわい。


しかし一度食べ損ねたせいで、今日は何がどうあっても絶対にスヴェルトの名物料理を食べると、私の中で決まっているのだ。

それに料理というのは素材の吟味の段階で既に始まってるし、「お肉がないなら自分で取ってくればいいじゃない」という考えだし、むしろ自分の眼で確認できるのは大歓迎だからな。


お兄ちゃんもこの前は食べ損ねたのもあってか、特に突っ込みは来なかった。

美味しいは正義よ!


幸いスヴェルトの生息地域は飛竜のそれと同じぐらい、面積にして縦横それぞれ数千リーグはあるので、同じ場所で滅茶苦茶に狩ったりしなければ大丈夫そうだしな。

そして今、私とお兄ちゃんはゼッターランド家からも、一番近くの人里からも数百リーグ離れた深い森の中、手つかずの大森林の中にいる。


ゼッターランドの特産品の紙の材料となる大きな針葉樹の森の中、そのうちの一本の上に上って気配を殺し、巨体を揺らしながら眼下を悠然と歩いているスヴェルトという魔物を見下ろしている。

私はこのスヴェルトという魔物、何となくトナカイの魔物と思ってたけど、実際はそれよりも大きなヘラジカという鹿の魔物だった。


寒いところの動物の特性として、魔物でなくてもちょっとした馬車ぐらいの大きさが元々あって、何より大きな角が特徴的だな。

それが魔物になってより大きくなったスヴェルトは、余裕で街中の一軒家ぐらいの大きさがある。


元の動物のヘラジカからして角はメチャ大きいんだけど、スヴェルトのそれはさらに幾重にも枝分かれしてて上にも横にも広がってて、大人数人分以上の大きさだから格好良いの一言だわ。

私がそう思うのは他の人も同じらしく、スヴェルトの堂々とした角は貴族の家の玄関とかに飾るのに大人気らしいな。


この辺の貴族のいつくかの家は、家紋や紋章にスヴェルトの角を模したのを使ってるとヴォルダーベック伯も言ってたし。

そしてスヴェルトの角は強力な魔力もあるから、武器や防具に魔術触媒の素材としても引く手あまたの高級素材。


大きい小さいに関係なく売りに出されると速攻で売れてしまうので、手つかずで飾りたい買い手と、加工して素材として使いたい買い手の間で熱い競りの争いが繰り広げられるそうな。

角の他には毛皮も大人気で、そのままの大きさで貴族や金持ちの家の敷物に使われたり、小さく切って防寒具や寝具に使われるそうで、これまた常に品不足みたいだな。


私の興味があるのはお肉のみだけど、ついでに高く売れるなら無傷で手に入れましょう。

それにしても、たった今私らの足元を歩いて行ったスヴェルトは、先週ゼッターランド家で料理されてたのと比べてメチャ大きかったような。


普段は誰も来ないような深い森のど真ん中で、感知魔法にも超大物があちらこちらにゴロゴロ反応してるし、とっても嬉しいです。

これはこの前に頭に浮かんだ「世界味めぐり」の店の実現が、一歩近づいてきたか?


頭の中でまたまた皮算用がグルグルと回り始めたけど、お兄ちゃんに無言で脇をつつかれて我に返った。

よし、じゃあ最初は今の奴でいいか。


そのまま二人して木の上を枝から枝へと、猿も顔負けな感じで音もなく移動して、前足で地面をほじっているスヴェルトの真上に来た。

気配を殺したままお兄ちゃんが飛び降りざま、スヴェルトの首に「百鬼丸」を走らせた。


スヴェルトは気づきもせず鳴きもせず、そして自分が死んだことにも気づかずに、そのままの姿勢を保っている。

しかし数秒後に、大きな角の重さに引っ張られた首が前のめりに落ちてくるのを、私が収納袋で受け止めた。


すぐ後に、飛竜に匹敵する巨体が横倒しにどうと倒れて、枯葉交じりの雪をまき散らして地響きを立てた。

よし、別の場所であと数頭狩ったら引き上げよう。


「ミリアムさん、これがスヴェルトですか! 本当に飛竜並みの大きさですねえ。 もちろん見るのは初めてです!」

「アンタと付き合うと、この年になっても好奇心ってのが刺激される毎日だよ。」

「こんなにデカいのか。 飛竜と同じぐらいの大きさの鹿とか。」

「また「逆鱗」のところか。」

「今日は徹夜かもだな……」

「あの角、すげえな。」

「また臨時賞与が出るかな?」


合計で四頭のスヴェルトを仕留めて、ゼッターランドの領地のギルドに直行した。

でも私らが狩ってきたばかりの個体は、普通に持ち込まれるそれよりもかなり大きくて、そのギルドの建物に入りきらなかったのだ。


話し合った結果、おなじみのイタペセリアのギルドに持ち込んで解体を依頼することにした。

いつもの飛竜の狩場は自由国境地帯みたいな感じだけど、今回のスヴェルトはイタペセリアのギルドで解体料を払えば、残りのお金はゼッターランドに入るのは確認したしな。


素材をどちらのギルドで買い取るとか、素材のままで扱うかは話し合いで決めてくだされ。

今までのバジリスクや飛竜と同じく、スヴェルトがイタペセリアのギルドに運び込まれるのは初めてだから、解体に慣れた人もゼッターランドのギルドから連れてきた。


解体場で収納袋から首と胴体が切断された最初の一頭を取り出すと、飛竜に匹敵する巨体に驚きの声が出た。

そして魔力でぼんやり光っている、ちょっとした木のような大きさの角を見たシドニーさんとギルド長のハレーティーさんに続き、職員さんや居合わせた冒険者に野次馬の声が上がった。


最初の大きさに対する驚きが覚めると、今度は素材の方に意識が移ったのか、シドニーさんもハレーティーさんもギルドの人間としての眼でスヴェルトの角の先から尻尾まで、全身をじっくりと吟味し始めたわ。

今日は全部で四頭狩ってきたけど、どれも首をキレイに切断したから状態は良いと思います。


一番重要な角は無傷だし、毛皮もお肉も傷んでないし、なるべく高く売れてゼッターランドにお金が入ればいいな。

解体場には大勢の人間がすし詰め状態なんだけど、大商会から個人商店までの買い付け専門の人はイタペセリア初入荷となるスヴェルトに向けて、全員が単なる好奇心以上のギラギラした視線を向けてるし、私が心配しなくても高く売れるかな?


一頭分のお肉は私が買い取りたいけど、他の部分はギルドに任せよう。

フローラからのつながりでドリスさんと縁ができて、またまた成り行きでゼッターランドの寄り親になっちゃったけど、既に上質な紙という特産品もあるし、それに加えて私らがスヴェルトを定期的に狩ればお金には困る事はなくなるだろ。


「こりゃうめーわ!!」

「おいしい!」

「うめえええっ!!」

「これはいけるな!」


そしてさらに一週間後、想像したら口の中がよだれで溢れそうになるのを我慢に我慢を重ねて熟成させたスヴェルトのお肉を、ゼッターランド家の料理人に教えてもらいながら名物料理が完成。

出来立て熱々のそれにかぶりついた最初の一口に、私から出たのはいつもの一言のみ。


それにお兄ちゃんやミリア達の感激の叫びが続いた。

本当にうめーわ!!


こういう寒い地方の動物は熱を体に蓄えるためにクマでもオオカミでも大型になって、毛皮の下には脂肪もそれなりについてるんだけど、このスヴェルトのお肉自体には脂肪のサシはほとんどないわ。

そのままだとバジリスクとは違った独特の匂いはあるけど、それはコリンヌという例の香草がいい感じに消すというより、元のそれと交じり合って逆に食欲をそそるいい匂いへと昇華されている。


お肉は部位にもよるけど、柔らかすぎず固すぎずの素直な感じだけど、肉自体に魔力がこもってるので旨味は凄い。

味付けは香草のコリンヌと擦りこませた岩塩のみだけど、これ以上はむしろ蛇足になるであろう完成度、まさに自然の恵みという表現がピッタリなのだ。


ひと口食べた後は言葉は不要、右手に肉の塊を掴んで左手のパンと交互にひたすら食べまくる。

あー、本当に美味しいわー、最高だわー。


お肉を無心で十人前ぐらい食べたら、今度は体の中に詰め込まれていたジャガイモやら野菜へ移る。

むむっ、旨味いっぱいの肉汁と香草の匂いが染み込んで、これまた最高じゃないか!


私がひたすら感激のマナを迸らせて食べ続ける中にも、お兄ちゃんやミリア達の他にも、ゼッターランドの領民の人達の喜びのマナとにぎやかな会話が聞こえてくる。

持ってきたスヴェルトは大きすぎてゼッターランド家の調理器具には収まらず、マックスとイーディーが適当に錬成した特大の調理器具にぶっ刺してグルグル焼いてるんだけど、それも大きすぎて屋敷に入らなかったから野外での大宴会なのだ。


いくら私とウチのみんなが食べると言っても流石にちょっとした家の大きさのスヴェルトは食べ尽くせないし、私が寄り親になりましたってのをお知らせするのに都合も良かったので、領民のみなさんに告知して誰でも参加自由の大宴会になった。

ミリアム基金も開設するし、これからは困った事があれば何でも相談してくださいね!


力仕事やら開拓は私が、頭脳労働は賢い人が担当させてもらいますよー。

ゼッターランド家のみなさんも領民に交じって和気藹々としてるし、ドリスさんも初恋は完全に吹っ切れて、今までを取り戻す勢いでモリモリと食べてるし安心安心。


数か月後にはオーランド先生についてヴェラールでの魔術師修行も始まると聞いたし、しっかり食べてくだされ。

ミリアム基金に転移陣も設置させてもらう話もついてるし、ちょっと時差はあるけど通いでもいけるんじゃないかな。


いろいろ考えながらも最初の勢い衰えずに食べまくるのに、ゼッターランド家の料理人がシャケの香草焼きを追加で大量に持ってきたわ。

おおっ、何とも肉厚なシャケですな!


シャケと言えば真っ向勝負の塩シャケのお茶漬けとかちゃんちゃん焼きが定番だけど、この料理はもちろん初めてだし、新しい料理すなわち新しい世界との出会いは常に喜びに満ちているのだ。

カクノシンおじさんは塩漬けの荒巻シャケが好きで、わざわざアルブ様の執事のバクナラッティさんに許可をもらって、永久氷原に建てた専用の小屋に吊るして毎年作ってたもんな。


冬になったら毎年一緒にそこに行って作業してたけど、数百匹のシャケが天井から吊るされているのは何度見ても壮観でしたなー。

そして十分に時間をかけて完成した塩味がきつめのそれは最高で、お茶漬けなら天井知らずの数十杯は余裕だし、おにぎり四天王の座の一つに不動の如く君臨し続けてるのも納得でしたわ。


ここで獲れるシャケを分けてもらって、カクノシンおじさんのお土産に持って行こう。

ゼッターランドで獲れるシャケを買わせてもらう契約も出来たら、あそこを建て増しして増産しまくるぞ。


むむっ、この脂のたっぷり乗ったシャケと、コリンヌの香草の匂いが最高ですがな!

これまた美味すぎるので私の箸は止まる事なく、高速で皿と私の口を往復ですわ。


このシャケならば、ムニエルにしても新たな地平が拓けるであろう!

外側の皮はパリパリで中身は風味を残しつつ、バターをすくってはかけてを繰り返してしっかりと火を通したムニエルにも自信ありよ。


でも去年の冬にも結構作ったのはいいけど、ミリア達は私が各種調味料にレモンやニンニクを混ぜて手間暇かけて作ったソースより、素直にトンカツソースをかけた方が好きなのにはちょっと凹んだわ。

いや、確かにどっちがご飯が進むかと言われたら、私もトンカツソース一択だけどさ。


それからも私が新しい料理との出会いに感激しつつ最初の勢いのままで食べまくるのに、いつも通りミリア達が食後の甘味に移って、大人組の酒盛りが始まった。

今日は竜酒も二等のを飲み放題にしたらしいし、思い切り楽しんで明日からはまた頑張りましょう。


二等といっても重病や大怪我を治す能力がないってだけで、味は上級のと変わらない美味しさとウチのドワーフ軍団が言ってたしな。

楽しいお酒でお願いします。


そういえば、竜酒はウチで作ってるだけでは足りないから、葡萄酒とかエールを作ってる酒蔵にも製造の協力をお願いしてるんだよな。

そしてこの前にジパンと有難い縁ができたし、来週あたりにビャクヤさんからジパンの杜氏と呼ばれる、セイシュというお酒造りの偉い人を紹介してもらえるのだ。


それを聞いてドワーフ軍団は全員揃ってバンザイして大喜び、オーランド先生にお祖父ちゃんも楽しみにしてるけど、私も料理用のお酒にはかなり期待してたりする。

なんつっても本場のお酒だからな、東方料理とは相性的にもパッチリであろう。


かと思えばミリアム基金を開設したばっかりのロドメリア王国では、ここ数年の気候が悪かったり、病気が流行って葡萄が全滅したりしてて、ミリアム基金に経営に困ったと相談がいくつも来てるらしい。

そっちも来週にヴォルダーベック伯と、ウチの植物博士のサイモンさんと一緒に行く予定だったと思うけど、畑の土を混ぜ返したり用水路を引くみたいな力仕事はお任せくだされ。


しかし今年も気づいてみれば、もうすぐ夏も終わりですなあ。

秋になったらまたすぐにヴェラリオンの収穫祭があるし、それが終わったら私も十七歳の誕生日ですか。


ママの城から外の世界に出てからというもの、毎日楽しく過ごすうちにあっと言う間に二年が経ったわ。

私の中身は全く変化なしで、精神的に成長した実感は欠片もありませんが、そこは竜の成長は遅いって事で。


収穫祭の武闘大会に子供らを出場させるかどうかは、まだお兄ちゃん達と考えているところだ。

確かにミリア達は普通の騎士ぐらいの強さもあるし魔法も使えるし、誰の相手をしてもそうそう引けを取らないとは思う。


でも誰とでも戦えちゃうぐらい強いから、逆に強い相手と当たる可能性も高まるし、子供ら自身も無理しないか心配でたまらんからなあ。

全員で戦う団体戦の部ならともかく、個人戦だとみんなの一番の強みの連携が使えないし、もうちょっと考えないと駄目だわ。


ミリア達はともかく、ネフィとイングリッドさん、それとアエネアスさんは今年も出る気満々で、お祖母ちゃんも交えて毎日暇さえあれば戦っている。

お祖母ちゃんも今年こそは参加する気だったみたいだけど、他国の王姉を出場させて万一にも何かあったらシャレにならんので、アンドレアス達が勘弁してくれと頼んでたわ。


頬っぺたを膨らませて拗ねてたけど、それは流石にお祖母ちゃんが駄目だと思うよ?

次のスヴェルト討伐には一緒に行けるようにするから、それで我慢しておいて。


今年の収穫祭はエーテルの王様もマルドゥクの王様もヴェラリオンに来るみたいだし、そしてブルガール王国からはクリスティーナ女王本人が参加するそうな。

ジパンからもビャクヤさんが、今年は国の一番偉い人として来るらしい。


そして私と縁が出来たディハーケンからは、アマリエルさんの侯爵家が代表で来ると、ちょっと前にご飯の時に言われた。

アマリエルさんの肩書は竜騎士だし、もしかしたら私が竜に変身してまた頭に乗せないと駄目かなと思ってたら、また竜のみんながウチに来るからとママに言われたわ。


ジパンの異界の門への対応がひと段落したものの、まだ世界規模のマナの流れの調整があるし、前みたいに竜のみんなが全員でウチに常駐は無理らしいけど、順番に週替わりで来るそうな。

一番の理由は、竜のみんながいないと私の様子を常に確認できないとママが騒いだらしい。


私もブリシーズ達が来るのは嬉しいけど、バルメロイさんと他の執事さん達の胃がキリキリしそうなのが目に見えるな。

来週行った時に、また話をしてこよう。


とにかくウチではしょっちゅう各国の王様とか偉い人が一緒に、あるいは入れ代わり立ち代わりでワイワイとご飯食べてるんだけど、国と国の行事に公式に参加するとなったらいろいろ準備が大変みたいだな。

私には無縁の世界と思いますけど、頑張ってくだされ。


お兄ちゃん達にちょっと冷たい眼で見られたけど、そういう事をするのが無理だからこの陸の孤島に引き籠っているんだよ。

私からのマナに、自分らもそんな面倒はお断りと思ったのか、それ以上は何も来なかった。


私には遠い世界のお偉いさん大集合はともかく、今年も食べ物の屋台は大々的に出す予定だ。

今回からはミリアム基金として参加するし、オーランド先生からは既にかなり広い場所を割り当ててもらった。


ミリアム基金としての参加だし、各宗派のみなさんもやる気満々、特に教義が「全力で生きよ」な感じになった「白教」と「月光」は教主自らが屋台の売り子でもしそうな雰囲気で力が入っている。

どの宗派にしても炊き出しとかで慣れてるし、設備も揃ってて専門の人もいるみたいだし、とっても頼りになります。


今年はどんな料理を出すかまだ思案中だけど、客引き用の飛竜のステーキとカレーは外せないとして、このスヴェルト料理も決定だな。

私の中で盛り上がっている、「世界味めぐり」の店を出店する布石として、ヴェラリオンでは馴染のない料理を出すようにしよう。


その他にはヴォルダーベック伯とオトウェイ枢機卿に今から相談はしてるんだけど、収穫祭の間に限ってヴェラリオン国内のミリアム基金の転移陣から王都ヴェラールに行き来できるようにと計画中なのだ。

ヴェラリオンと一口に言っても超大国で領土の端から端まで数万リーグの大きさだし、真ん中の街道沿いならともかく地方の人は普通に移動するだけで一苦労だし、それに加えて盗賊やら魔物やらの危険もあるし難しい。


でもミリアム基金の子供らには、いろいろと自分で見聞きして体験させたいんだよな。

小さいうちから世界は広いし楽しい事も多いってのを知ってて欲しいし、想像力も広がるし、将来やりたい事も早いうちから考えられるようになるだろ、たぶん。


来年ぐらいからミリア達もアークライトのお祖父ちゃんの館とか、ヴェラリオンの白銀城やアルヴェレス公に食事会のお呼ばれして、礼儀作法の練習も始める予定だからな。

料理研究会のみなさんの発表ついでだけど、いずれ全員が世界中に名を知らしめるウチの子供らだからな。


貴族やらお偉いさんとの付き合いも必要になるだろうし、今のうちから練習させないといけないのだ。

フフフ、ミリア達が将来世界中で活躍するのを想像しただけで、私は背中を弓なりにのけ反らせて鼻息も荒くドヤ顔になるわい。


そんな気の早い事は別にしても、みんなが笑ってる顔を私が見たいってのが単純な理由だ。

生きるってのは楽しくないとな!


「燃料と薬の備蓄は十分です。」

「各地の治療院や個人の治癒師との契約もほぼ完了しました。」

「冬が来る前に余裕をもって準備できたのは喜ばしいですね。 これからも気は抜かぬように備えましょう。」

「「「ははっ!」」」


いろんな事を考えながら食べ続ける私の地獄耳に、「陽光」のオトウェイ枢機卿が部下の人と喋ってるのが聞こえた。

ヴォルダーベック伯と一緒に、実質的にミリアム基金の全てを取り仕切っている大黒柱だけあって、もう冬の事まで考えてるんだな。


燃料やら薬やらはヴォルダーベック伯に言われて私も準備のお手伝いした覚えがあるけど、冬に向けての備えでしたか。

そういえば去年の収穫祭の後、ウチのアベルやニッツも五日熱にかかって寝込んじゃって、私も一週間ぐらい寝ずに看病したっけ。


まあ、以前とは違ってミリアム基金の子供らにはお腹いっぱいに栄養満点の食事もさせてるし、体の抵抗力自体も上がってるから病気にはなりにくいと思うし、病気になっても治りやすいだろ。

いざとなったら私が絶対に治すし、それ以前の問題として私も食事担当として無策でいようはずもない。


ちょっと前にブルガールのクリスティーナ女王との話し合いで、特産品のダイコンをあるだけミリアム基金で買い取ると決まったからな。

ママの火山地帯で火のマナをたっぷりと蓄えた絶品のダイコン数万本、ふろふきダイコンとして、オデンとして、みぞれ鍋として、冬の長い北国でも子供らの身も心もポカポカに温めるであろう!


またジパンでは老舗の餡子屋といくつも契約を結べたし、今度の休みはミリア達と一緒にウチの石窯で手ごねあんパンを作る予定なのだ。

満足できる味になったらミリアム基金にも配りまくるし、馴染のパン屋のおかみさんに話して大量生産も依頼しようかな。


ママの城を出てもうすぐ二年、持ってきたカレーのルーも少なくなってきたし、それも作らないといかん。

自分らで食べる分だけならママの城で作らせてもらうんだけど、カレー屋さんの分もあるしミリアム基金の分もあるし、ウチの庭の端っこに製造小屋を建てましたわ。


今まではカクノシンおじさんから教わった材料と配分の通りに作ってきたけど、外の世界のいろんな食材も手に入るようになったし、いろんな味の違いのルーを作ってみようと計画中なのだ。

基本は色付け、香り付け、辛み付けの香辛料をそれぞれ数種類ずつ混ぜ合わせて炒めるんだけど、種類を足したり配分を変えたりして、そこに隠し味なんかを追加でいろいろと試してみっか。


最初の隠し味はラシール村の奇跡のハチミツで決まりかな。

子供向けの甘口には、さらにリンゴとかパパイヤみたいな果物を追加で攻めてみるものいいかも知れんな。


あー、本当に平和でこういう事をのんびり考えられるのが一番の幸せだわ。




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いつも読んでいただきまして、ありがとうございます。

この話までが「小説家になろう」の全年齢版に投稿していた分になりまして、ようやく修正作業が終わりました。


意図せぬ引っ越しでしたが、これを機に分かりやすく内容の補完や、表現の追加や修正をできたので自分でも良かったと思います。

ここまで書くのに4年9か月の間、時間を見つけては細々と更新してきました。


次からの更新は早くて2週間に一回になりますが、私の本業はこのコロナ騒動で逆に忙しくなりそうな業種で、職種もこの数週間はその対応に追われる部署ですので、当分の間は努力目標とさせていただきます。

引っ越し前からお伝えはしていましたが、この話を一番読みたい&読んでるのはたぶん私自身ですので、私が死なない限りエタる事はありません。


よろしければ、これからもお付き合い願います。


感想や評価も大歓迎です(ダイレクトマーケティング)


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