ミルクにはカルーアを


 このころになるとサクラ・ハウスのメンバーにも、ヴィクトリア朝末期の女性用軍服、つまりはナーキッドの軍服が支給されています。

 一応、礼服代わりのようです。


 ヴィーナスの惑星記号と、ヴィーナスの象徴といわれる赤いバラを組み合わせた紋章が、徽章としてつけられています。

 青木紅葉さん、良く似合っています。


 背が高く、かなりスラリとしたスタイル、ただ相当に引き締まった体で、男装したら間違いなしに宝塚です。

 女学生の憧れの的になりそうですね。


 チョーカーを不可視にしていますので、私服ならナンパのあらしでしょうが、女性用軍服ですからね、危険な女と皆思うのでしょう。

 ナンパなど、一つも起こりませんね。


 S&W M686Plusディスティングイッシュド・コンバットマグナム・プラス などという、とんでもない銃が、腰にぶら下がっていますからね。


 三五七マグナム弾ですよ!しかも七発です。

 通称マグナム・プラスと呼ばれるこの銃、チョーカーの魔力ゆえに、扱える代物です。


「シベリア……美味しいでしょうかね……」と紅葉さん。

「甘くはないでしょうね……」と忍さん。


「もう一つ、いただきましょうか……ミルクにはカルーアを入れてね」

 忍さんはホット・カルーア・ミルクで、シベリアを食べています。


「変な取り合わせですね……」

 と紅葉さんが云いますが、彼女のミルクにはクレーム・ド・モカが入っています。


「変わらないじゃないの?モカ・ミルクでしょう」と忍さん。

「クレーム・ド・モカは、カルーアよりコーヒーの風味が強いのです!」と紅葉さん。


 どうやら紅葉さんは、かなりリキュールがお好きなようです。


「リキュール、お好きなの?」と忍さん。

「はい♪」と紅葉さん。


 この後、リキュールについて喋る喋る……

 紅葉さんのお言葉を拝聴した忍さんでありました。


 怒涛のお酒の薀蓄を二時間ばかり、午後の陽ざしも多少かげってきました。


 紅葉さんが、

「いけない!はしたない事を、申し訳ありません」


 忍さんは、

「いえ、私もお酒は嫌いではないので、楽しく拝聴いたしました」

「すいません……」と紅葉さん。


 忍さんが、

「私、京都の出でしょう?でもお酒は焼酎の方が好きなのよ」


「焼酎ですか?京都といえば伏見の清酒ですが……」と紅葉さん。


 忍さんが、

「少しはあるのですよ、案外においしい物があります、吟醸粕の焼酎とかね」


「おいしそう……」と紅葉さん。

「今度、一緒に飲みませんか?」と忍さん。

「上杉さんはお強いのですか?」と紅葉さん。

「人並みですよ……」と忍さん。


 そんな話で、束の間のティータイムは終わり、ハンヴィーM1152は二人を乗せて、東京ハウスにたどり着いたのでした。

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