茜おばさま


 今日はこのマンクス・レディス・ハウスで、チャリティパーティを開くことになっているのです。


 エステラさんが、

「それにしてもイシス様、遅いわね……」

 ブレンダさんが、

「エステラ様、なんせイシス様ですから、時間なぞ守られるとは思いませんが?」

「イシス様ですからね……」

 とテレーサさんも……


「誰が遅刻魔だって!」

 ぶつぶつ云いながら、イシスさんが転移してきました。

「ニライカナイからきたのよ、結構きついのよ」


 綿パンとポロシャツなんか着ているイシスさん……

「イシス様、その恰好!パーティドレスは!」

 エステラさんが叫びました。


「なに、それ?」とイシスさん。


 エステラさんが、

「……ブレンダさん、ドレス持ってきていますか?」


「いえ……イシス様に似合うようなものは……」とブレンダさん。

「何でもいいですから!時間がないのよ!」とエステラさん。


 寸法が合うブレンダさんさんのドレスを突き付けられたイシスさんは、

「これは何よ!お年寄り用ではないですか!五十代ではないの、嫌よ!」

 ととても失礼な言葉を飛ばしています。


 エステラさんが、

「イシス様!テラより長く生きているのではないですか!今さら歳なんか気にして、どうなるのですか!」


 あまりの剣幕に、さすがに我儘で超有名なイシスさんですが、黙ってしまいました……

 このあたりは、妹のミコさんと似たようなところがあります。


「……じゃあ……せめて私に選ばせて……」とイシスさん。


 エステラさんが、

「何でもいいですから、パーティドレスを着てください、後十分しかないのですよ!」


 エステラさんはマンクス・レディス・ハウスの中にある衣裳部屋などから、すべてのドレスを持ってこさせました。


 で、イシスさんが選んだのは……テレーサさんの部屋にあったドレス……

「そのドレスは……」と言葉を濁すテレーサさん。


 その衣装はかなりゴージャス、パステルのピンクとシアンの大胆な色使いで、背中も肩も露出して、あまつさえミニ……

 それでもカクテルドレスなのは間違いなし……パーティーではありますし……

 大きなため息をついたエステラさんではありましたが、あきらめたようです。


 でも、イシスさんが着ますと……何でも似合うようですよ。


 もともとこの世の者とは思えぬほどの美貌……古代エジプトの絶世の美女、ネフェルティティに似て、はるかに綺麗にしたような方、言葉に困る美貌ですし……その上、スタイル抜群……


 圧倒的な美しさ……ミコさんぐらいでしょうか……美貌で勝てそうなのは……

 

「茜おばさま、綺麗……」

 タバサちゃんは、うっとりとしながら云いました。

 二人の姉も同じように、うっとりとイシスさんを見ています。


 アディントン三姉妹にとって、イシスさんとは親代わりの優しい優しいおばさんで、本当はママと呼びたいのですが、さすがに遠慮しているのです。


 エステラさんが、

「いつも思いますが、イシス様を『おばさま』と呼べるのは貴女たちだけね……『おばさま』ね……」

 イシスさんを見ながら、ちょっぴり笑いました。


「エステラが云ったら、ぶちますからね!」とイシスさん。


 エステラさんが、

「はいはい、イシス様はいつでも『娘さん』ですよね、誰も『おばさま』とは思っていません、怖いですから」


「エステラ!」

 イシスさんの怒鳴り声が響いています。


 こんな話で、パーティーは少しばかり開始が遅れてしまったのです。

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