民の望み
暴動はロプノール共和国全域で起こっていました。
政府の庁舎にも投石があり、怪我をした職員も増えてきます。
「ナーキッドは独裁者だ、独立を勝ち取ろう!」
シュプレヒコールが聞こえ、今日も民が集まっていることを知らせています。
「鎮圧……いたしますか……」とソルコクタ。
「無用だ……これが……民意なのだ……」
アイハンさんは集まっていた群衆の代表と会談をすることに……しかし驚いたことに、代表者などは存在しなかったのです。
「そうか……致し方ない……人々と話あってみよう」
アイハンさんは群衆の中に入っていった、そして話しかけたのです。
「国民の皆さん、アイハンです、何が望みなのですか、それを聞きましょう」
「ナーキッドは独裁者だ、独立を勝ち取ろう!」と群衆。
アイハンさんは、
「ナーキッドは確かに、この地に対して絶大な影響力を持っています、しかし、そのおかげで今の生活が維持されています」
「周りを見てごらんなさい、四級市民地域と呼ばれる地域を、それにナーキッドが提供する『産科システム』がなければ、私たちはこの社会を維持できないのですよ!」
アイハンさんがそのように言っても……
「ナーキッドは独裁者だ、独立を勝ち取ろう!」と群衆。
アイハンさんは、
「皆さん、思い出してください!先ごろまでのみじめな奴隷生活を!命じられれば命まで差し出したあの圧政下!いまの生活を投げ出したいのですか!」
しかし群衆は、
「確かにみじめだった!しかし我々は自由が欲しいのだ、誰からも命令されない日々が欲しい」
「やっと圧政から抜け出したのに今度は支配されている、何のために貴女は圧政と戦ったのか!これでは支配者が変わっただけだ!」
アイハンさんが、
「自由の為に?それがどれほど高価な代償がいるか、わかっているのか!」
群衆は、
「そんなもの分かっているさ!我らは我らの道を自ら選びたいのだ!」
アイハンさんが、
「四級の生活でも構わないというのか!」
群衆は、
「そうなるとは限らない!我らには知恵がある、それにこのロプノールには資源がある」
「ナーキッドに頼らなくてもやっていける、昔のようにその力で必要な物は手に入る!」
アイハンさんが、
「違う!あの時はナーキッドに対抗する勢力があった!その援助で寄せくる難民を排除できたのだ」
「それがナーキッドに変わっただけだ、ナーキッドは皆さんにひどい事をしたのか!」
群衆は、
「それは無い、しかし我らを支配しているのは確かだ、支配され、生きるために尻尾を振るのは、我らの誇りが許さない!」
アイハンさんが、
「そんなものは愚かなナショナリズムといえる、いまマシな生活をしているからの言葉ではないのか、誇りなどは、飢えという象の前には蟻にしか過ぎない!」
群衆はアイハンさんの言葉を聞き、逆上したのか、アイハンさんに石を投げつける者が出てきました。
「売国奴!アイハンはロプノールの裏切者だ!」
誰かが叫び、そして群衆は呼応します。
群衆は口々に、
「アイハンは売国奴、ロプノールの裏切者!」
「アイハンを倒せ!」
そしてついに、
「アイハンを殺せ!」
と変わりました。
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