第89話〜トレントのトレンさん
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『まさかあの白夜王が仔猫に転生、いや憑依して猫人族の子供の従魔になってるとはね』
トレントの特異種さんは、ボーイッシュな女の子みたいな声でそう言った。
といっても白夜ちゃんと同じ【念話】によるものだけどね。
頭の中に響く不思議な声。
あ、ちなみにトレントには動物みたいな明確な性別はないんだって。
トレントに生まれ変わる前の記憶もほとんどなくて、自分の名前も顔も性別も分からない。
人間だった時の断片的な記憶と意識だけがぼんやりとあるだけなんだって。
転生してからどれだけ経ったかも覚えてないみたい。
白夜ちゃんが魔王だった時には出会ってるらしいから、ものすっごく長生きなのは間違いないみたいだけどねー。
『改めて名乗らせてもらおうかな。私の名前はトレン。【母なる魔樹の森】の守護者をやっている』
トレンさんは体が木で出来てるとは思えないほど滑らかな動きで一礼してみせた。
トレントのトレンさん。
まんまだね。
(°△°)ぴょ〜
…………。
トレンさんはこの森のずっと奥からやって来たんだって。
厳密に言えば、一つの森を囲むようにして、この森みたいな普通の森がある?みたい。
地図で見ると、中心にそこそこ大きな森があって、囲うように草一本生えてない土地、そしてさらにそれを囲むようにしてこの森があるって感じみたい。
真ん中の森はここの森と同じ、というかトレントだけしかいない森で、中心には雲よりも高くそびえ立つ大きなトレントがいるんだって。
何それ!
見てみたい!
『最初は母と私だけしかいない土地だったけどね。寂しがり屋な母のために、少しずつ仲間を増やしていったんだ。普通の樹木じゃ栄養が足りなくて枯れてしまうから、トレントたちの元を巡って、移動してもいいって言ってくれる子たちを一本ずつ移植していったんだ。さすがにその土地に深く根ざした大きなトレントは無理だったけどね』
今では大きな森と言えるくらいにまでトレントが増えたんだって!
巨大なトレントが地脈にまで伸ばした根が栄養を吸い上げて、光合成するみたいにトレント達にとって栄養になる魔素を出すからトレントの苗木も生まれやすいんだとか。
代わりに普通の樹木は生えないし、生き物もモンスターしかいないし、対策をしてない人だと半日ももたずに倒れちゃうほとんどダンジョン?みたいな場所らしい。
離れた位置にあるこの森にトレントが生まれやすいのは、中心の森と地脈とかの流れが云々……難しい話だったから以下略!
…………。
お母さんのために大きな森を作るなんて、トレンさんすごいね!
けど、金のなる木とも言えるトレントを密猟者たちが見逃すはずがなく。
ましてやトレントの苗木が生まれやすいとなると宝の山も同然!……森だけど。
モンスターだから人攫いだって領主とかに訴える事も出来ないしね。
トレンさんが見回っていても大きくなった森の全部はカバーできず、さらわれちゃう事も多いんだって。
トレントもモンスターだから撃退することは出来るけど、移動は自由に出来ないから離れた位置に生まれた苗木は守れないことがある。
話せないし、動けない子がほとんどだけど、それでもトレント同士、意識の繋がりがあるから助けたい。
トレンさんがこの森まで来たのも、トレント特有の意識の繋がりを辿って、その場所のトレントたちに話を聞きながらだったみたい。
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