もう一人の娘はキム・バルヒェットさんといい、金髪でキリッとした顔の大変綺麗な女性でした。

　ペンシルバニアの小さい地方空港で二人は引き合わされました。

　ディヴィドソンのプライベートジェットが待機しています。

　キムさんが、

「フィオナさん、神の花嫁とは何をするのでしょう、なにかご存知でしょうか？」

「キムさんは、何も聞かされていないのですか？」とフィオナさん。

　キムさんは、

「はい、神のお側に仕える、それだけしか聞いておりませんので……私たちは、神のお子を身ごもるのでしょうか……」

　フィオナさんは、

「それは無いと私は聞きました、私たちがお仕えするのは神の更なる神、女神様との説明でした」

「ただ、お住まう場所は快楽が満ち満ちている土地、だから『絶縁』はなくても、家族と一緒の生活は出来ない、里帰りぐらいは認める、そんな話でした」

「……」

「ところでキムさんは、この乗り物は怖くはないのですか？」

　フィオナさん、飛行機などは乗ったことなどなく、顔がかなり蒼白いようです。

　キムさんは、

「私は何とか大丈夫なのだけど……フィオナさんは里帰りは出来るのね……」

「……キムさんは戻れないの？」とフィオナさん。

　キムさんが、

「私の両親は去年なくなったの、そこで教区の学校になんとか勤めて生活していたわ」

「学校といっても、ドイツ語と英語と算数だけだけど、あとは聖書……」

「先日、この話があって、私は神の花嫁に選ばれたと……学校は退職させられてもう帰るところなどないの……誰も説明してくれないのはその為よ……」

「……」

　フィオナさんが、

「ねえ、キムさん、私たちは互いに神の花嫁、これから仲良くしてくれませんか？」

「私も里帰りは出来ても、家族とは過ごせない、お友達もいないし……」

「それに、妻の真似事もすることになると、聞いていますから……私……どうすればいいか……教わっていないし……」

「私も詳しくは知らないの、でも痛いと聞いているわ……」とキムさん。

「痛いの？」とフィオナさん。

「そう聞いているわ」とキムさん。

　その時、プライベートジェットは、アーカンソー州のホットスプリングス・メモリアル・フィールド空港に着陸しました、ゲストを乗せるためです。

　そのゲストは女性のようで、タラップを軽快に上って来ました。

　細い面立ち、ほっそりとしたスタイル、信じられないほど美しい……黒髪で東洋人のようです。

　しかし全身に威厳がまといついているような、女帝という言葉が近いのでしょう。

　その女性がフィオナさんたちを見て、

「あら、先客がいらしたの？悪かったわね、強引に乗り込んで」

　フィオナさんが、

「いえ、私たちこそ割り込ましていただいたようで……申し訳ありません」

「アーミッシュの方よね、東京へ行くの？」とその女性。

「はい」とフィオナさん。

　その女性が、

「事情は聞いているわ、ご家族と住めなくなりそうですが、大丈夫？」

「失礼ですが貴女様のご尊名は？」とフィオナさん。

　その女性は、

「そうでしたわね、吉川茜といいます、ナーキッドの関係者です」

　姉上様は、どこでも誰とでも、上から目線ですね。

「私も東京へ行くのよ、しばらく同じ機内の乗客、話などしましょうか」

「何か聞きたいことがあるなら、答えてあげるわよ」

　するとフィオナさんが、

「ありがとうございます、私たち、不安で……これからどうなるかと思うと……」