15 翔破-2-
(その手があるか!)
操縦にもある程度慣れてきたカイロウは真っ直ぐに海を目指した。
「リエ君! あの男はどこにいる?」
「車輪の……車軸に掴まっています!」
「どっちのだ?」
「右です、右!」
「よし分かった!」
地上の明かりを頼りに海の上に出る。
途端、視界は暗闇に包まれた。
上にも下にも光はない。
漁船の一艘さえないようで、どこを探しても漁火は見えない。
「どうするんですか!? 何も見えなくなりましたよ!?」
「もうすぐ見える!」
町から充分な距離をとった彼は旋回した。
重心が傾いていることで機体がぐらつく。
真の暗闇では左右どころか上下の感覚も怪しくなる。
いま自分はどこを向いているのか。
北に向かっているのか、東に進んでいるのか。
その感覚を確かなものにしてくれるのは、座り心地の悪いシートと――、
「よし、見えた!」
はるか彼方に浮かび上がる灯台の光だけだ。
「右で間違いないな!?」
「は、はい!」
カイロウは目を凝らした。
どうやら浜辺でもお祭り騒ぎとなっているらしい。
仄かに見える小さな光の集まりは、そのまま海岸線を示していた。
これは好都合だった。
彼は再び桿を倒すと、海岸線をなぞるように機体を捌いた。
高度を下げ、灯台の光を正面に捉える。
地上の光が肉眼でもはっきりと確認できる。
「揺れるぞ! しっかり掴まるんだ!」
灯台が目睫の間に迫る、その瞬間――。
機体はわずか左に傾き、車輪を灯台の外壁に叩きつけた。
シートが大きく震動し、一瞬遅れて激しい衝突音が響き渡る。
機体は砲撃を受けたように墜落する姿勢を見せたが、海面ぎりぎりの高さで体勢を立て直して再び上昇した。
テラには――。
たとえ身に危険が迫ろうとも金で雇われた傭兵としてのプライドがある。
この手を離すワケにはいかない、と。
それが彼の矜持である。
だからその信念に従ったのだ。
彼の左手はまだしっかりと車軸を掴んでいた。
だがその先には何もなかった。
灯台にぶつかった衝撃で弾け飛んだ車軸は真っ暗な海に落ちていった。
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