第41話 ガレットもどき

 今の自分には、リザラの笑顔は眩しすぎたらしい。

 私は宿につくと、食事もとらずにベッドに潜り込む。ぐるぐると交錯する思考を手放し、そのまま寝てしまった。


 どんどんどん


 扉をノックする音で睡眠が破られる。

 はっと目を開く。

 窓からは西日が差し込んでいた。


 しわしわの服を適当に手で伸ばし、ドアを開ける。

 そこには、また、ガーリットの姿が。


「あれ、また、ガーリットさん?」


「そうだよ、また、俺だよ。全く、一日に二回もお使いやらされるとはな」


 と、いつもの軽口を叩くガーリット。しかし、その笑顔は硬い。

 私はその強ばった笑顔を見て、寝ぼけていた頭が一気に覚める。今日の出来事を思いだす。そしてガーリットが、何があったか、私が何をしたかを知っていることを確信する。


「……ガーリットさん、怪我とか大丈夫だったんですね」


「おう、おかげさまでな。ちーとばかし火傷したが、ポーションであっという間に治っちまったよ。凄い効果だな、ありゃ。……ありがとな」


 お礼を言うカーリット。その目は少し泳いでいた。しかし、最後のお礼を言うときには、しっかりとこちらを見ていたガーリット。


「いえ。良かったです」


 私はそれで、少しだけ肩の力を抜く。


「それで、今回もお使いってことは、冒険者ギルド、ですよね?」


「ああ。察しが良くて助かるよ。今からいいか?」


 またまた私のお腹が鳴る。

 そういえば、朝、串肉を食べてから何も食べていない。

 私の腹の音を聞いて苦笑していたガーリットが口を開く。


「また、おごらせてくれ。今度はお礼がてらな」


「わかりました。じゃあ串肉以外で。」


「おお、今度は急ぎじゃないからな。少し遠回りして行くか。良い肉料理出す屋台あるんだよ」 


(肉なのは変わらないのか)と私も内心苦笑しながらこたえる。


「仕方ないですね。じゃあそこで」


 ◆◇◆


 私たちは口の回りについたタレをぬぐいながら冒険者ギルドへと向かう。

 ガーリットのおすすめの屋台は、肉山盛りのガレットのようなものだった。


(そばの実っぽい物があるんだな。日本の味が懐かしい。そういえば、ガチャって食べ物出ないよな。今後のレベルアップか、機能拡張で出るのだろうか)


 現実逃避にそんな事を考えつつ、気がつくと本日二度目の冒険者ギルドが見えてきた。


(あーあ。ついちゃったよ。何言われるんだろうな……。損害賠償とかだったら軽く死ねる額だよ、きっと。ジョナマリアさんも知ってるのかな、今回のこと……)


 そうして私はガレットもどきを食べて上向いた気分が再び下がるのを感じながら、足取り重く冒険者ギルドへと入っていった。



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