十話 感謝
助七の母マツの部屋に行くとマツは布団に寝ていた。
「すみません。わたしは真明という僧侶なのですが、助七さんに頼まれて来ました」
「そうですか…助七に何かありましたか?」
マツは何かを悟ったかのように聞いた。
「実は不治の病にかかっていて、わたしが最期を看取りました」
「やはり、そうでしたか…あの子は、自分を犠牲にするところがあって、その病気も隠しながら、私の看病もしていたんですね…」
マツは涙を流しながら助七のことを思い出しているようだった。
「それで、助七さんから薬を預かりました」
真明はマツに紙に包まれた粉薬を手渡した。
「これは、いつも飲んでいる薬です。あの子が残した置き土産ですね…」
マツは真明に手伝ってもらいながら、粉薬を飲んだ。
そして、しばらく眠りについた。
マツは薬を飲んでしばらく眠ると少し元気を取り戻した。
その後真明とマツが助七の話をしていると、誰かが訪ねてきた。
少し助七に似ている男の人だった。
「助彦!?お前、助彦じゃないか!戻って来たのかい?」
「分からないけど急に戻りたくなって帰って来たよ。……この人はどちら様?」
真明は自分のことと助七のことを助彦という人に説明した。
助彦は助七の弟だという。何年か前にこの家を出たまま音信不通だったが、急に家に帰りたくなったという。
「そうか…兄貴が…。全く知らなかった。おれはなんて馬鹿なことを…」
「いいえ。そんなことはありません。あなたがこの家に来たのはおそらく、助七さんの願いが通じたからです。助七さんは最期までマツさんのことを心配していましたよ」
「ありがとうございます、真明さん!おれはこれから母さんと暮らします!兄貴の分まで母さんと一緒に生きたいと思います!」
助彦は鼻をすすりながら真明に感謝した。
「真明さん…助七のことを看取ってくれて、ありがとうございました!また何かありましたら立ち寄ってください!」
「はい是非!」
真明はマツと助彦に別れを告げ、再び北を目指すのだった。
弔い者~真明の旅編~ ざわふみ @ozahumi
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