第7話
羽黒は唖然としていた。いつも自分のペースを乱されることなど無かったものだから、動揺もしていた。
俺が芽内に振られた、だと?
この女は何を言っているんだ。そもそも芽内に絡んだのは、これで二回目だ。好きも嫌いもない、と思ったが
いや、それはやや嘘になるな、と考え直す。
HRで自己紹介した瞬間から、羽黒は目を奪われた。
圧倒的な華やかさ。同級生にはいないタイプだった。陰キャじゃなさそうだし、これから話す機会もあるだろう。仲良くなれるかもしれない、などと浮ついた気分があったのは否めない。
だから、昨日の玄関口での出来事は衝撃的だった。
羽黒が常日頃いじっている陰キャ代表みたいな金沢の彼女だと芽内は言う。
それが本当かどうか確かめようと、朝から芽内に絡んだのだった。
もちろん、金沢みたいなやつに自分が劣る訳はない、という自信もあったからつい口調は攻撃的になってしまった。
だけど、芽内は思わぬ切り返しをしてきた。しかも厄介な事に、クラスメートが興味深く羽黒と芽内のやり取りに耳を澄ませているのがわかる。
とんだ出まかせを言った芽内は、羽黒に怯む事なくにこにこしている。
なんなんだ、この女。
目の前の魅惑的な笑顔を浮かべる少女が得体の知れない生き物のように思えてくる。
ぞわりと居心地の悪さがのぼってくる。
「何言ってるんだよ。ふざけたこと抜かすんじゃねぇ!」
とやっと怒鳴り返す。しかしそうムキになったところで、クラスメートたちが「あぁ、振られたのか」と察するような空気を出してきたので、逆効果だったと後悔した。
続けて、弁解の言葉を出そうとしたら担任の増田が入ってきた。
「HR始めるぞー」
と、今日もやる気のない声で言うのを聞いて羽黒は、仕方なく自席に着かざるを得なかった。
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