第10話 月曜日だって優しい時もある

月曜日の朝、皆が憂鬱な朝、会社へ向かう生きる気力を失っているサラリーマン、目の下にクマを作りながら朝早くから働く新聞配達員、寝癖を直さないままやる気なく学校へ向かう学生。


そんな中ある学生だけは、周りのそんな憂鬱な気分さえも払ってしまう程明るかった。


「先輩おはよー」


「おお小波か、おはよう!」


「やけにテンションが高いわね」


「あ、岡野先輩もおはよう!」


「なんかあったんですかー?」


「みんなもう忘れたのか、今日はあの海人が学校に転校してくるんだよ!」


「ああ、あの泥棒猫ね」


「先輩最近キャラ壊れてるけど大丈夫?」


「ダレソレーシラナーイハハハー」


「小波目が笑ってなくて怖いよ…」




学校に着くと琢磨はその修羅場から逃げる様に自分の教室に入った。


教室では、今日学校に来る転校生の話で持ち切りだった。


琢磨は勝手に優越感に浸りスターにでもなった気分で自分の席に着いた。


着席のチャイムが鳴り、教室には沈黙が流れ緊張感が張り詰めた。


その教室の沈黙を破りガララ、と教室のドアが開く音がした。


スマホをいじっていた生徒やさっきまでコソコソと話していた生徒、緊張感を楽しむかのように静かにソワソワとしていた生徒全員が音の方に意識を向けた。


「みんなおはよう、今日はこのクラスに新しい仲間が来る」


一気に湧き上がる歓声それをなだめる様に担任は話をつづけた


「いいかお前ら、高校生にもなって転校生を仲間外れにするとか子供みたいなことは絶対するなよ」


担任はそう言い終えると「入ってきていいぞ」と転校生を手招きした。


「海人 春佳と言います、よろしくお願いします」


サラサラとしていて艶もある少し茶色の入った長髪の髪。


スベスベとしている肌。


ぱっちりと大きい目。


その美しすぎる転校生の春佳の姿に全員が見惚れ、教室の時間は止まった。


春佳は目だけを動かし琢磨を見つけ、ニコッと微笑んだ。


琢磨はその瞬間自分の心臓が彼女に掴まれたかのようにドキッとし、心拍数が上がっていった。

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