ヴァーチュアス・ゴドレス〜きみの生命は僕が死守する〜

天秤アリエス

❖Virtuous Godress❖第一部「パラリアル・Hero’s journey」

暁月優利、ヴァーチュアス・ゴドレス・オンラインへ

アバン:第1話 ようこそキャッスルフロンティアKK、VRキャッスルへ

 パラリアルワールドに立ち尽くす。


 あまりに高性能で、鮮明な画像のような建物に、淡く光る人々がせわしなく歩いている。


 とっさのことで、まだ脳裏が動いていない。


 ――これは、入社の為の健康診断ではなかったのか? 


 だが、見回しても、現実とは違うクリアな世界が暁月優利を取り巻き、少しの独特の感覚のズレが、これもまた現実だと脳裏にゆっくりと伝えて来る。

 すぐに納得が出来るものか。

 だいたい、VRMMOなら、手にグリップを握っているはずだ。HMD(ヘッド・マウント・ディスプレイ)の重さも感じなければ、まるでこの目で! 耳で! 肌で! 感じているようにしか思えない。

 リフレッシュレート最大144HZ,光の反射を最大限にリアル際限したレイ・トレーシング……リアルなVRMMO技術など、くらべものにならないくらい。


「ようこそ、キャッスルフロンティアKKの誇る、日本最大のVRキャッスルへ」


 遠くに霞んで廃墟の塔が見えたが、一瞬で空が覆い隠してしまった。

 ヴァーチュアス・ゴドレス・オンライン(VGO)の構築に似ている塔。


 命を懸けたゲームの名前から、正気を取り戻した。




「ここ……まさか、Virtual・Realityの……ヴァーチュアス・ゴドレス・オンラインの世界ですか!」




 主人公暁月優利あかつきひろき門奈計磨もんなかずまろは、にっこりと笑顔で頷いて告げた。


「5Gによって都市はVR化する――パラリアルの語源。残念ながら、きみの好きなVGOではないけれどな」




 話は、暁月優利がまだ深夜のピザを運んでいた、数時間前に戻る――。

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