彼女の名前は黒薔薇姫
俺は彼女の要求に答える為、朝からトマトを買いに行くために玄関で靴を履いた。黒薔薇姫は、俺のベッドの上でのんきに寛いでいた。見た目は普通の女の子なのに、この子がヴァンパイアだと言うことが未だに信じられなかった。むしろヴァンパイアは迷信で、誰かのつくり話や、架空の人物にしか過ぎない話しだ。それなのにヴァンパイアは本当に実在した。それが俺の中では、ますます信じられなかった。
――正直、宙を浮いた少女なんて見たことがない。なのにあの日、彼女は宙を浮いて俺のことをジッと見ていた。そして、俺は彼女に雨の中でキスを奪われた。
俺のファースト・キス……。
その瞬間、頭の中で彼女にキスされた光景を思い出した。そう思ったら急に顔が真っ赤になってしまった。玄関で真っ赤な顔で佇んでいると、黒薔薇姫はベッドの上から声をかけてきた。
「何をぐずぐずしているの? 早くトマトを買って来なさい。この私を飢え死にさせる気かしら?」
黒薔薇姫はそう言ってツンとした態度で声をかけてくると、俺は台所の横にある玄関付近から彼女に質問した。
「なっ、なあ……? その、1つ質問していいか……?」
「何をかしら?」
「その……なんであの日、俺にキスして来たんだ? まさか一目惚れだったり……?」
その言葉を口にした途端、ベッドの方から本が飛んできた。顔面に分厚い本が当たると、黒薔薇姫はそれを否定してきた。
「バカな質問はよしてちょうだい。私が貴方みたいな下僕に一目惚れするわけがないでしょ? ヴァンパイアにとって人間は只の下僕か、餌に過ぎないわよ。そんな人間にヴァンパイアが一目惚れするなんて聞いたことがないわ!」
黒薔薇姫はそう言って否定してくると、自分の腕を組んで不機嫌な顔でそっぽを向いた。俺はその言葉に『チェッ』と、心の中で残念そうに呟いた。
――まあ、確かに彼女はヴァンパイアだけど、見た目は凄く可愛い。まるでおとぎ話に出てくるような美少女だった。たぶん普通の女の子でもここまで可愛い女の子なんて早々にいない。そう思うと、やっぱりちょっとガッカリした。俺は僅かな可能性にかけてみようと再び聞いてみた。
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