第22話 ギンVSゾーム①

 (ギン視点)



 ドドドドド。長い長い廊下の先から激しい地響きにも似た音が鳴り響いた。それも、牢獄にいたころに発生した爆発音よりでかい音だ。



 「何だ? この音は? もしかしてあいつすでに死んでいるんじゃないよな」



 俺は、先ほど通路の分かれ道でレイとメイと別れてからだいぶ走っている。しかし、思ったよりこのアジトがデカかったのか長い廊下をもう数分以上も同じ景色の中走っている。そして、走ってから少しして奥からものすごい音が鳴り始めた。天井も悲鳴を上げている。さぞかし激しい戦闘が行われているのだろう。俺には、それぐらいしか考えることができず、想像することしかできなかった。


 急がなければ。


 そう思い、また俺の足は1歩確実に踏みしめられていく。



 それからまた数分後。



 「はぁ、はぁ、はぁ、長い。長すぎる」



 まだ、廊下は続いていた。廊下は続くよどこまでも。いやな、フレーズが頭の中に出てきた。もう、疲れて走れない。俺は、疲れた体を休めるため急いでいる最中だがひとまずその場に腰を下ろした。



 「つめたっ」



 座ったのはいいが、床はとても冷たかった。もう、最悪すぎる。この通路はいつになったら終わりが見えるんだ。俺は、自分が進む方向を振り向くが出口らしい明かりは見えずただ暗闇が続いているだけだった。



 ドドドドオドドドド



 また、ものすごい音が聞こえた。それもすぐ近くから………すぐ近くっ! その音は俺の目の前から聞こえたような気がした。いや、聞こえた。音はだんだんと大きくなっていき、そして、俺の目の前の壁が突然爆発して中から人が飛んできた。



 ドッガーン



 「ぐっ!」



 俺は、とっさに避けた。そして、壊れた壁の向こう側を見るとそこには氷で覆われた空間が存在した。まさか、こんな場所に隠しエリアが存在していたなんて思わなかった。俺は、この後ここの存在に気付かなければ意味もなく走り続けていたのか。俺は、そう思った。しかし、ほかにも考えることがあったがその行動を邪魔する存在が、邪魔する行為があった。



 「ゼロッ!」



 「なっ!」



 背後から魔法を放たれたからだ。しかも、禁術に指定されている『ゼロ』という魔法を放たれた。ゼロと言えば無を意味することから相手の存在を消す、これは相手を殺す魔法ではなく存在を消すつまりは今まで生きていたことすらも消し去る史上最悪と言ってもいいほどの魔法なのである。そんな魔法を使うなんて何て奴なんだ。


 俺は、魔法を放った相手を見る。先ほど、飛んできた男であった。外見からすでに敵のボスであることが分かるほどの大男に豪華な服装をしていた。



 「お前が我の、我のアジトに入ってきたネズミか。殺してやる、消してやる。我に邪魔する奴は誰であろうと殺してやるっ!」



 我のアジト。この言葉からやはりこいつがこの盗賊団のボスであることが分かった。



 「殺す、殺す、殺す」



 精神が完全にいかれていた。こういう敵は今までに読んできた小説の中では負けフラグなんだよなと思ったが、ここで油断すると逆に俺が死ぬかもしれないので集中する。あいつを倒すいや、殺すことにすべての精神を研いで。



 「ファイアーボール」



 ここでも俺の火属性の魔法の中では得意であるファイアーボールを発動する。そして、この火の玉のさらに加える。



 「風の舞」



 火に風を組み合わせることでファイアーボールの威力を倍に増加させる。



 「食らえっ! 火風の舞」



 ファイアーボールは大きくなりさらに風がボールの周りを覆っている。そのまま、男にぶつかると思った。しかし、奴はそれを避けた。避けた後、魔法を放った。



 「デス・ティニー」



 「また、禁術かよっ!」



 やつが使った魔法はデス・ティニー。意味するものは死の運命だと昔読んだ書物には書かれていた。まさか、実際に見ることになるとは思ってもいなかった。



 デス・ティニー


 死の運命を知らせる時計が現れ時計の針が0を指すとき魔法の対象になったものの命はなくなる。まるで時の運命から逆らうことができないかのように。そのような説明が書かれていた。



 そして、その書物の説明通りに時計が出現し、針が1つまた1つと動き始めた。



 もし、その魔法の対象となったときには対象方は1つだけ存在している………



 その対処法とは、



 時計自体を破壊することで全ては覆される。



 「風の咆哮」



 ドーン。ものすごい怒号を放った。風の咆哮。技ランク3の魔法であり、威力もかなりのものだ。風の咆哮は時計に向けてまっすぐ放たれて奴は時計の前に立とうと走るが間に合わず、そして風の咆哮を止めることができず案外あっさりと破壊することができた。



 しかし、この時奴は不気味な笑みを浮かべていたことには俺は気付くすべもなかった。

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