第19話 拓也・ご神託の手伝いを終えて
拓也は弥生と別れ、電車を乗り継いで自宅のアパートに戻ってきた。
部屋に入ると、しばらく留守にしていたこともあり部屋は寒々としていた。
慌ててストーブを点け、炬燵のスイッチも入れた。
そして部屋着に着かえる。
「うっ! 寒い!」
着替えた部屋着が肌に接する冷たさに思わずブルっとなる。
部屋着に着替えるんじゃなかったと後悔した。
キッチンに行き、
寒さに手をこすりながらリビングに移動した。
「はぁ~・・、疲れた。」
そう言って
子供の頃に、よくこんな格好で寝ていたっけと思いながら、手でしっかりと炬燵布団と肩口に隙間がないように押さえ込む。
とうぜん、足は出ないように丸めているので、ちょっと体制を変えようとすると炬燵が持ち上がる。
なんとか、体全体が炬燵に入るように姿勢を調整した。
しばらくすると炬燵が段々と温かくなってきた。
やがて体も温まってきて、眠気が襲ってくる。
「ふぁ~・・っ」
思わず
思いっきり口を開き遠慮なくしたので、涙のおまけつきだ。
「えらい目にあったよな~・・。
彼女のいない俺が、美人の巫女と、かわいい女子高校生とお話しだよ・・。
信じられないよ、まったくもう!
まあ、もう会うこともないだろうから、いいけどさ。
はぁ~・・、でも弥生さんか~・・。
一般常識はないけどさ、美人で性格よかったよな~・・。
あんな子が彼女だったらいいだろうね。
まあ、俺とじゃ釣り合いがとれないけどさ。」
と、後ろ向きの考えを口にしながら、また前に考えたことを
「なんで俺が男巫なんだよ・・・。
世の中、ちゃんとした神主もいるだろうに、さ。
はぁ~・・・・。」
そう言って、上半身を炬燵から出した。
そして頭を炬燵板の上にのせる。
かるくゴンという音が出た。
うっ、冷たいな炬燵板・・。
まあ、ストーブもつけたばかりだし。
どうしようかな、と、顔を上げた。
目の前に
「ありゃ~・・・、干からびてる。」
その蜜柑を見て、今の俺の疲れ方を表しているようだと感心した。
いや、感心している場合じゃないだろう!
明日は仕事だ!
今日は、休日になっていないじゃないか!
と、思わず内心で叫んだ。
叫ぶのはいいが、休日は昼迄寝ていて、あとはレンタルビデオでも借りてきて見て終わるのが関の山だ。
それに比べたら、長野県までの美人との日帰り旅行をしたのだから、よぽど有意義だ。
ただ、動向したその美女は彼女ではないというオマケ付きではあるのだが。
「それにしても、神様の考えることは分からないよな。
まあ、俺みたいな凡人が考えることじゃないしね。
弥生さんのような人だったら、わかるのだろうね。」
そう独り言を呟いてから、ふと、考えた。
でもさ、今回、俺、必要だったのだろうか?
雪里さんと弥生さん、そして猿田彦大神様だけで済んだんじゃないだろうか?
弥生さんが聞く耳をもって、1柱の神様の助言を求めれば簡単に済んだ気がする。
まあ、いいか・・、男巫やめさせられて不幸になる結果は免れたことだし。
何よりも雪里さんの希望が叶い、明るい笑顔が見られたことが嬉しい。
そう思い、すこし笑みがこぼれた。
でも、御神託で雪里さんが明るくなったのはいいのだが・・。
「御神託ってさ、もうすこし俺の都合を考えて、曜日や、日にちを選択してくれないかな~。」
少し声を出して独り言をわざと言ってみた。
神様、聞いているんだろう? と、内心で叫んでみる。
いや、神様に聞かれていたら、どうせ男巫やめるか?と、脅かされるに違いない。
しばらく神様が何か言ってくるかと待っていたが、どうやら無視されたようだ。
「あ~、やってられない、お酒でも飲もう!
そうだ! お湯わかしているから、それで熱燗でもするか?」
そう思い立って炬燵から勢いよく飛び出した。
呑むと決めたら、すこし気分が上向いて、軽い足取りで台所にいく。
食器棚から
そして、食器棚の下の扉を開け・・。
「げっ! 日本酒が無い!
え~っ!!! この寒いなか酒屋かコンビニまでいくのかよ!
う~!!! 宝くじに外れた気分だ!」
ため息を一つ吐く。
「
せっかく沸騰しかけた薬缶の火を、苦虫を噛み潰した顔をして消す。
寝室に行き普段着に着替え、外に出た。
「さ、寒い!!」
あまり歩く気になれない。
酒屋よりはコンビニが近いか・・。
ぶるっと震えてから、トボトボとコンビニに向った。
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