遂にログイン &初フレンド
ああ、やっと書いてあった。
【飛流電】
『事前に設定した金属オブジェクト二つの間に、上級魔法並の威力の電撃を飛ばす。スキルレベル上昇で設定数増加、電撃の種類の選択などができるようになる』
なんかさっぱりわかんないけど、コンパス(円を描くヤツ)みたいな形の武器を用意して、そこに【飛流電】を使ったらスタンガンができるらしい。別に気絶はしないけど。
「スキルレベルが上がれば麻痺には出来ますよ」
「なるほど………。存在はウザいけど思考読んでアドバイスしてくるとかちょいちょい好感度高いんだよなぁ」
黙ってれば美人だし。……いや、なんか癪だしやめやめ。
「さて。名前はアーチさん、容姿は今現在ので決定。ユニークスキルは【
「はい、オッケーです」
今思ったけど、なんで【転送】と【飛流電】には英訳が付いてないんだろ。【
「それでは次にステータス設定といきましょう。スキル選択もありますよ」
まだか……。早くしたいなぁ……したいなぁ!
終始こんな様子でようやく設定を終わらせ、十数分経ってようやく私は『MLO』を始めることができたのだった。
「お、おお……。おおおおー!!」
MLOにログインした私を迎えたのは、少しの古さを感じさせる古風な街並みだ。
なんというか、古代ローマの街に魔法要素を無理矢理捩じ込んだような街だった。
足下は石が敷き詰められていて、ずっと向こうまで続いている。
道の両サイドには露店が並んでいて、果物、軽食から雑貨まであるようだった。
当然だけど電柱や電線は無くて、けど街灯には光が灯っている。
これまでVRじゃないゲームはたくさんしてけどこれは………
「自分がゲームに入ってるんだ! 街はよくある風だけど、やっぱりリアルで見てみると迫力がすごいなぁ………!」
しばらく街に見とれて歩き回っていたら、そういえば伊月と一緒にログインしてたのを忘れてた。
私が配送日を一日間違えたせいで、伊月は私より先にログインできたはずなんだけど、優しいから一日待っててくれたんだ。優しいね〜。
さーてと、伊月はどこかなー。
私は周りをキョロキョロしてみるけど、正直知らない人ばっかりで全然伊月が見当たらない。当たり前だけどみんなアバターだから、そもそも伊月がどんな顔してるのかも私知らないし。
ちなみに、私は服装こそファンタジーになっているけど、あとは髪と目の色を変えて、右目の下にペイントを入れただけで外見は然程変わってない。家族とか友達が見たらそこそこ判ると思うんだよね。
いつものゲームじゃあ見た目は1から作るから、なんだかんだ現実離れした顔になっていたんだけど、VRゴーグルに顔を読み取る機能があるらしくて。
ユニークスキル設定の時にあんなに時間掛かると思わなかったから、伊月待たしちゃいけないと思って弄るの面倒になってパパっと終わらせちゃったんだ。
しばらく歩くと、街の中心の広場みたいなところに出た。広場の奥の方に高台があったから登り、下を見回してみる。
「人多いなぁ………」
某大佐みたいな心境になりながら見下ろしていると「おーい」と声が聞こえた。そちらに目をやると、こちらに手を降っている人がいた。
「伊月かな?」
しばらくするとその人はこっちに向けて歩きだし、高台を登って近づいてきた。
「あれ、男の人?」
気のせいか、その人は男っぽく見えた。なんか背が高くて……がたい? が良い。
「やぁやぁ。お嬢さん」
「ど、どちら様で?」
やっぱり男の人だったー!
驚いている私を見て、不審者だと疑っているとでも思ったのか。
「これはこれは、申し遅れた。僕はアラタだ。貴女が
アラタさんは騎士風装備で金髪碧眼、腰にひと振りの片手剣を差していた。金属鎧に金髪が映えてるなぁ……。
なんていうか、王子様だ! イケメンだし、優しい! ───王子様ロールかな?
ごめん、ホントにゲーム初心者なんならまだしも、あくまでVR初心者なだけだから
けど実際に格好いい人が目の前で動いていると……なんかちょっと感動かも。
………ん? 良く考えたら、今日ってサービス二日目だし、
この人︙︙王子様っぽい
「宜しければ、フレンド登録良いかい?」
「あ、はい! ……あ、そういえばメニュー開くの初めてだ」
悪魔NPCが言っていた通りに、右手の指を胸の前で縦に振る。すると、ピッっという電子音と共にメニューウインドウが開く。いつもメニューボタンとか
メニューはありきたりなスクエアタイプで、ちょうど、ウインドウに重なるようにして新しいウインドウが出てくる。
ウインドウには、
【『アラタ』からフレンド申請が届きました YES\NO 】とあった。
「あれ? 勝手に送れるんですか? 嫌がらせに使えそう」
「いや、『プレイヤーの行動ログ』というものがあって、一定時間会話を交した相手でないと申請は送れないよ。その心配は杞憂だとも」
「そうなんですか……」
やばい、この人優しすぎる。あの悪魔が霞んで消えて見えなくなるくらい優しい。
とりあえずYESを押して、フレンドになる。
「おー、初フレンド! 改めて、よろしくお願いします!
「君は……アーチか。こちらからも宜しく! それと、僕のことはアラタで構わないし、敬語である必要も無いよ。ゲームだからね」
やっぱアラタさんすごいなぁ。ゲーマーの鑑だよ。
そこいらのアンチに見せてやりたいね。
「アーチは、どこか行くところはあるかい?」
アラタさんに聞かれて、大事なことをようやく思い出した。
「……い」
「──い?」
「伊月だぁぁぁ! 忘れてた!!」
完っ璧に忘れてた! 探してたらアラタさんに話しかけられたから………いや別にアラタさんのせいじゃないけどさぁ──
「………『いつき』? 君のフレンドかい?」
「リア友です! 一緒にログインしたんですけど、初期設定に時間掛かっちゃって……お互いの顔も判らないから、ここで見下ろして上から探してたんです!」
「お、おぉ、そうか。じゃあまずはアーチのお友達を───」
「───あのさー、あんま人の名前叫ばないでくれる? 往来だよ?」
私が慌ててたら、横から声が掛かる。聞いたことある声──じゃないけど、聞いたことあるよーな喋り方? だった。
廃ゲーマーですが、運動音痴なのでVRはキツかったです。 水無月 驟雨 @highttick
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