毒薬料理のコツ


「ダフネ様、私にもお料理を教えて下さい」とアテネさん。


 ビクトリアさんが慌てて、

「アテネ!無謀なことをいうな、毒薬料理人がこれ以上増えると、本当に死人がでるぞ」


 しかしアテネさんは、

「でも、教えてもらっても、私がその様な物を作れるとは思えないが?」


「まぁ、確かにそうだな……」とビクトリアさん。

「では教えていただきます♪ダフネ様、お願いします」とアテネさん。


「私は警告したぞ!」と、ビクトリアさんがいいました。

 でもビクトリアさんは放置されます。


 喜ぶダフネさんが、

「アテネさん、こうして、ああして、こうなって、ここでね、火を入れて塩をいれるの、そして砂糖をぶち込んで、お芋をどんどんと切って、お鍋に入れると、美味しいシチューの完成よ♪」


 ドス黒い物がお鍋に鎮座しています。


 でも、ビクトリアさんが見ると、アテネさんのお鍋には、ちゃんとお芋とお肉の煮物みたいなものが入っていました。


「アテネ、工夫したのか?」とビクトリアさん。

「ダフネ様のいわれるようにしたのだが」とアテネさん。


 ビクトリアさんは、アテネさんの鍋の煮物を食べて見ることにしました。

「うまくはないが食える代物だ、だが芋の皮ぐらい剥いたらどうだ」


「皮には栄養があるとダフネ様が教えてくれた」とアテネさん。


「ダフネ、料理の常識はないのか!」とビクトリアさん。

「どうして?栄養学の常識でしょう?」とダフネさん。


 ビクトリアさんは反論します。

「その考えはおかしい!」

「それに、この口にジャリジャリするのは、土ではないのか!」


 ダフネさんは断固とした口調で、

「土がどうしたの?土ぐらいなにさ、多少付いているぐらい、大した事ではないでしょう!」


 毒薬料理のコツが見えたような気がして、ビクトリアさんは言葉がありません。

 アテネさんがダフネさんの指示通りに作ったら、土や砂混じりの煮物になった以上、隣の鍋のドス黒い代物の想像が出来るような……


 しかし、それぐらいで、あれほどの破壊力のある料理にはならないのでは……

 多分、アバウトの上にもアバウトが重なった結果であろうが、それだけでもないような気が……


 どうにも、腑に落ちない現象が起こっているような気がした、ビクトリアさんでした。

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