第6話 モールス信号機
翌日、アマリリスは、何とか起きられるようになっていた。
それは、体力が回復してというよりも、じっと横になっていることが耐えられないからだった。
父親の消息に関しては、何日経っても、わずかな手掛かりすらもたらされることはなかった。
希望を持たせるようなことを言ったことを、今となってはクリプトメリアは後悔していた。
その希望は、むしろ一層、アマリリスの苦しみに加担しているように見えた。
モールス信号を送受信するクリプトメリアを、側でじっと見つめるみどりの瞳は、
交信を終えた彼が胸の潰れる思いで結果を告げる時、
悲痛とか絶望とかいった生やさしい状態を超え、
本物の病におかされて、死の床にある人のように見えた。
奇妙な話ではあった。
アマリリスとヘリアンサスは、小型の救命ボートでトワトワトに流れ着いた。
ファーベルが発見したとき、ボートには二人だけで、ともに気を失っていた。
しかし二人は、父親と一緒に海に落ち、それ以降は記憶がないと言う。
それなら、彼らをボートに乗せた人物がいることになる。
それが二人の父親なのかも知れないが、その人は一体どこへ消えた?
まだふらふらする足取りで、アマリリスは海岸に行きたいと言い出した。
自分たちが漂着した場所の周りを、自分で探すのだと。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます