新技術の代償として、隔離されたディストピアとなった街。
発生する【音喰い】。発現する【叫詩】という特殊能力。
主人公の回りに忍び寄る影。【敵】は一体誰なのかーーーー?
本作の重要なキーワードは【音】で、登場キャラたちの特殊能力も音に関係する。戦闘向きではないような能力を戦闘で応用したり、戦闘向きな能力を別の側面で活かしてみたり。作者はそれぞれの能力を旨味を充分に引き出し、複数回に渡って新鮮な活躍をさせる。さりげないが、これは凄いことである。
もうひとつのキーワードは個人的に【真実】かと思う。
主人公は、あるものを見ることによって、本来知り得ぬ情報を知ることができる。そして、それゆえに真実に到達することもあれば、それゆえに遠ざかることもある。ここが面白い。だからこそ、ラストシーンが光る。
あと、【愛】。
主人公のヒロインに対する愛が半端ない。
恋愛感情なんてもんじゃない、もっと恐ろしいものの片鱗を見たぜ……。
完璧なホットスタートを決めているので、1話目で合う合わないがわかると思います。引き込まれたならそのまま読んじゃいましょう。10万文字ちょっとです。
私は読んでいてあっという間だったので、10万文字読んだと思いませんでした。それくらい文章が洗練されていて、句読点の配置が適切です。
一種最高の褒め言葉「極めて読みやすい」ってやつです。
さて。
ジョジョの奇妙な冒険、というのをご存じでしょうか。簡単に言うと異能バトルの大御所で、なんかすげー漫画です。
この小説は、小説で描くジョジョの奇妙な冒険、ですね。
小説には、漫画のように絵はありません。強調方法もさほどありません。
でも詩一さんには極めて綿密に作れる文章構成と変幻自在の文体。そして最強の比喩表現手法をもっています。
この3つを最大限に利用することによって、読者に脳内で漫画を描かせる、ということに成功しています。それってつまり漫画と一緒じゃん?
ここで、私がこれぞ比喩表現の詩一と思った描写を紹介します。
~破顔した彼女はその瞬間絵画になった。僕は呼吸を忘れてその芸術に見入る。それほどの秀麗《しゅうれい》を極《きわ》めていたのだ。~
ここですね、ここ。とあるところの1つの描写なんですが、さいっこうの比喩表現だと思いませんか?
些細な箇所なのですけれども比喩表現の詩一を出しています。
こうやって些細な箇所こっそりとした場所に比喩爆弾を置いていくのが詩一の神髄です。
どこにこの記述が書いてあるか、読んで探してみては如何でしょうか。
それで。
良い感じに過激なエロも序盤に多くあり、愛も後半にあふれんばかりにあり、異能バトルは最初から最後まであります。
山盛りですね。
物語の登場人物には幸せになって貰いたいものです。
以上、音喰いに囲まれている現場からお送りしました。
まず、残念ながら私はACIDMANの曲が分かりません。もしも聞いてからだと、この作品にはまた違ったイメージを持つのかも知れません。ですが、ACIDMANを知らない人でも問題なく楽しむことができます。
閉塞的な街やその原因。そしてそれを発端とする特殊能力。全体的に色のない静かな雰囲気のなかで、一貫性をもちぶれない主人公コトヨシから伝播する諦めない「色」が鮮やかに感じられます。
それぞれのキャラクターがきちんと活躍できる安定したストーリーと応用がきく魅力的な能力に、逃げ場のない街。そして筋の通った主人公。読み終えたあとの爽やかさ。安心して読める作品です。
色々詰まってて面白かったです。
ざっと思い出せるだけで、『異能力バトル』『ラブコメ』『純愛』『学園もの』『秘密結社』『VS政府』『微エロ』なんて、ワクワクする単語がたくさん浮かびます。
よくここまで、詰め込んだなぁと思います。
それでも内容がごちゃごちゃしていなく、一本の棒が最初から最後まで通っています。
一本の棒というのは、『コトヨシが幼馴染で愛する杏を守る』というこれだけで興味が湧く一本。
この作品はかなり厨二心をくすぐられます。
ルビはかっこいいし、設定も凝ってるし。
アクションシーンなんかは、迫力しかなくて読むスピードが止まりません。
完結してます。十万字ちょいです。でもすぐ読めます。
さあ、読みましょう!
様々なタグ付けがなされている通り、あらゆる要素が込められた現代ファンタジーです。
そしてこれはわたしが小説だけでなくあらゆるエンターテイメントに触れるときに一番重要視しているものと重なりました。
「どこから読み始めても読む人間を引き摺り込む!」
そのためには単にストーリーが優れているだけではダメでしょう。
センス、と言ってしまえば才能みたいですけれども、わたしはそれを努力で築き上げられた『感性』と表現したいです。
書き手がこれまでに触れてきたありとあるエンターテイメント、そして、それと共にある日々の日常の瞬間瞬間。それから築き上げられる単語のひとつひとつの選び方。
スクロールしたそのシーンが一枚の鮮烈な『絵』として飛び込んでくるような、そんな小説がわたしが求めるものであり、わたしもそういう小説を書きたいと願っています。
序盤、中盤、好みのシーンはそれぞれかと思います。けれども、必ずやあなたに完全適合する瞬間が『ねじ込まれて』くるでしょう。
連載中の早い段階にどうしてもレビューさせて頂きたかった作品です。
おススメです!