Darlin'(Sample ver.)

想人~Thought~

今日、めっちゃ寒い。雪降ってるし。誰やねん、ヒ○ド唱えた奴?藁

「じゃあ、また明日。・・・」


 蜻蛉達が空を舞い、太陽が沈みゆく夏の日の夕方。学校終わりに彼氏のもとを訪れていた泰希(やすき)は、軽く手を振りながら別れの挨拶をした。彼は、何も言わずに、ただただじっと、佇んでいる。そんな彼を背に、泰希はショートヘアを涼風に靡かせながら、徐々に彼との距離を延ばして歩き去っていった。




 都内のとある閑静な町の中にある我が家に着いた泰希は、正門を潜り、その古典洋風の小さな建物の玄関の開き戸を潜った。


 学校指定の黒革靴を脱いで下駄箱にしまい、十メートル程の廊下を渡って突き当りの木製の引き戸を開ける。


「泰希お姉ちゃんお帰り!」


 広々としたダイニングルームで夕飯の準備をしている十人の元気な子供達が、大きな声で泰希を迎えてくれたのだった。


「ただいま、みんな」


「泰希お姉ちゃん、今日の晩御飯ね、……何だと思う?」

「え、……?」

 泰希のもとに歩み寄ってきた女の子が、いきなりそう言ってきた。


Q:晩御飯は?

①カレー

②カレー

③カレー


「んんー、……②の、カレー!」

「サイシュウアンサー?」

「……はい」

「…………残念!」

「え、何で?めっちゃカレーの匂いしてるし。てか選択肢三つともカレーしかないじゃん」

「あー、泰希お姉ちゃんが選んだやつね、スリランカ式のカレーなんだよ。正解は、①のカレー(イギリス式)でした。因みに③は、グリーンカレーです」

「…ああ、そう。知るか!ってツッコミをする気も起きない…てか、脱線する事言っても良い?私、グリーンカレーとスリランカカレー、めっちゃ大好き」


 ─―ここは、泰希が幼少の頃から高校三年の今日迄過ごしている、孤児院である。




 幼い頃に、母親を亡くした。とても優しくて、美しい母親だった。そんな母親が、自らの命を絶ったのである。それ以降、父親と二人で暮らす事となった泰希。


 父親は、脳も見て呉れも荒廃しきった、泰希と同じ血が流れているとはこれっぽっちも思えぬ、まるで放送中の昼ドラの画面から飛び出て来たかのようなキ〇〇イの屑中年親父だった(屑と言ってしまうと、人の役に立ってその生涯にピリオドを打たされた屑に対して大変失礼なのだが、私柳野はト◯チキであるが故他にどういう言い方や表現の仕方をすれば良いのかが分からないのである)。そもそも何でこんな奴と母親が結婚したのかが甚だしく謎めいているのだが、泰希は……



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