第39話 敵は祭壇跡にあり

「――と、以上が私の知人が推測した内容となります」

 城へと戻ったネルは、謁見の間にて事の詳細を報告した。

 その報告を聞いた一同は、先程のネル同様に表情を曇らせる。思う所は皆同じだったようだ。

「……うーむ」

 国王は唸るような声を上げ考え込む。

 報告の詳細を聞く限り、確かにこちらの事情を知る人物である為に、疑いを掛けるのは無理もない。だが、まだ推測の段階であり確定した訳でもない。なので、裏付けを取る必要があり、国王は重い口を開いた。

「その張本人たるハドレット氏に招集を掛けよう」

 国王の言葉に一同賛同し兵に至急ハドレットの勤めている診療所へ向かうように命を出した。



「……それと陛下、もう一つご報告があります」

「うむ、申してみよ」

 ハドレットの到着を待つ間、ネルは城へ報告に向かう前にイリアから聞いた事を話始めた。

「行方の知れぬ姫様が、居るであろうと思われる場所についてですが、大凡の見当がつきました」

「なんと! ……して、その場所とは?」

「はい。結論から言いますと、恐らくですがシャルワ祭壇跡になります」

「シャルワか……何故そう至った?」

 シグルドはその根拠を尋ねるとネルはシグルドの目を見て答える。

「はい、先程もご報告致した通り敵の狙いは霊脈の活性化にありました。ならばその霊脈を利用する事は明白です」

「そうなるな」

「ならばその霊脈の合流点は何処かと探った結果、シャルワ祭壇跡と判明致しました」

「そうか! 昔祭壇としてそこに建てた理由は霊脈の合流点だったからか!」

 合点のいったシグルドは声を露わにした。

 何かしらの儀式として利用される祭壇とは、唯そこに建てられているわけではない。ある時は収集を目的としたもの。ある時は昇華を目指すもの。ある時は生贄を捧げるものなど様々であるが、共通する事はその土地に何かしらの理由があって建てられるという事である。それ程までに土地という条件は重要なのだ。


「また、敵の目的は邪神復活であろうと思われますので、昔祭壇として利用されていた彼の地程適合した場所は無いと思われます」

「うむ、筋は通っておるな」

 国王はネルの説明に納得した様子で頷いた。

「して、ハドレット氏はまだ見つからぬか?」

 国王がそう呟いたその時、一人の伝令の兵士が謁見の間へと飛び込んできた。



「陛下! 至急ご報告があります!」

「うむ、申してみよ」

「はっ! 陛下の要請によりハドレット氏のいた診療所へと赴いた所、重大な事実が発覚しました!」

「どういう事だ?」

「ハドレット氏でありますが……実は先月までで診療所から退職されていたようなのです」

「なんだと!」

 そんな話は聞いていないと言わんばかりに国王は驚いたが、それは国王だけでは無く、その場にいた者は皆驚いていた。その事実は黒幕説を裏付けるような内容であったからだ。

「……これでハドレット氏が黒幕であるという話が真実味を帯びてしまったな」

 国王は頭を抱え込む様にして口を開いた。

「至急兵を集めよ! シャルワ祭壇跡へ出撃する!」

「はっ!」

 国王にそう命じられた伝令の兵はその場を後にする。

「その指揮は俺が執ろう」

「殿下! いけません! ここは私めが!」

 一歩前に出てそう答えるシグルドにガルニアは諫めようとした。

「もし場合、真っ先に狙われるのはここ王都だ。だったら要となるおやっさんや親父はここに居るべきだろう?」

「そうですが……」

「それにだ。こういう時の為にあるのがギルドだろう?」

「……わかりました」

 自分だけで無茶するつもりではないと悟ったガルニアは身を引いた。

「つーわけでネル。お前は一足先にギルドへ要請を出しに行って来てくれ。その間に俺は招集した兵を編成しておく」

「はい!」

 そうシグルドに言われたネルは一礼をすると急ぎギルドへと向かって行った。



 一方、イリアは宿舎の自室に戻って来ていた。

 事前にやるべき要件を済ませたイリアは、これからの準備に取り掛かっていたのである。

「……これでよしっと」

 誰もいない部屋で一人そう呟く。

 以前あった王都での時の様な恰好をしていたが、荷物は少し多めなのか背負うように担ぎ宿舎を出た。

 外に出ると、少しだけ宿舎を眺め、何かを惜しむ様な趣を見せつつその場を後にしていった。



 ネルは冒険者への要請をする為にギルドへと訪れていた。

「……えっ? 既に要請されている?」

 だが、受付のシルキーに事情を話すと意外な反応を見せた。

「はい、先程イリアさんからそのように伺っておりますが」

「イリアが?」

「……多分ですが、そのような展開になるだろうと予想した上でされたのでしょうね」

 そういった類の事をする人物が身近にいたので、それとなく察したシルキーはそう答えた。

「では、その張本人は何処へ?」

「確か準備があるから宿舎へ戻ると言っていましたが……」

「わかりました」

 シルキーにお礼を言いつつネルも宿舎へと足を運んで行った。



 宿舎に着くと急ぎイリアの部屋へと向かい扉を開けた。だが、そこにイリアの姿は無かった。寧ろそれだけではなく、部屋からは物が殆ど無くなっている事に気付いた。まるで初めからそこには何も無かったかのように。

 何だか嫌な予感を感じたネルは宿舎の中をくまなく探したがイリアの姿は何処にも無かった。

「……まさか?」

 ある一つの予感がした。一人で敵陣へと向かって行ったのではないかと。そう思うと、居てもたってもいられず宿舎を飛び出した。

「……お待ちなさい」

 宿舎の扉を開き外に飛び出たネルは、後を追おうとしたその時、背中から声が掛かった。振り返るとそこにいたのは……

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