第95話 破られた封印
男に回復魔法を施し水を飲ませたらようやく落ち着いたが、ここは恐怖感があるらしく、とにかくこの場所から離れたいとガタガタ震えながら言う。
この男の体からは呪いは感じられなかったから、他の場所へ行っても問題無いだろうと思い空間移動でこの場を離れた。
ゲルヴァイン王国の城に行くとまたややこしそうだから、一旦俺の知っている場所に移動する。
やって来たのはアクシタス国にある村。
そこは以前裏組織が作った村で、俺がこの村を乗っ取った感じになっている。
今は捕まって売られそうになってた孤児を村中の皆で面倒を見ている。ここで働く人達も捕まって行き場のなくなった人達で、人手が足りない所は俺のゴーレムで賄っている。
村人達はこのゴーレムをそうだと分かってなくて、只の村人として接している。そうなるように俺がしてるんだけど、皆が仲良くやってくれてるみたいで、この村の生活は安定していて平和だ。
男を回復させたからと言っても、体力は著しく低下しているし、恐らく食事も儘ならなかったんだろう。
まだまともに歩けない男を支えて村へと入っていく。
いきなり景色が変わった事に、男は驚きの表情をしたままだった。
「あ、エリアスさん!来てくださったんですね!」
「わぁ!エリアス!遊んでー!」
「あれ、それは誰なの?」
「ちょっとコイツを休ませてやりてぇんだ。場所、借りるぞ? あ、あと消化に良い食いもん持ってきてくれねぇか?」
「はい、分かりました!」
集会所になっている建物に入って、そこにある宿泊室に男を連れていく。何日も遺跡にいたのか、痩せて服も泥々でボロボロだったから、浄化させて綺麗な状態にしてやって、それからベッドに寝かせた。
自分がそうされた事にも驚きを隠せない男だったが、やっと安心できたのか、グッタリしてベッドに身を任せた。
「すまない……恩に着る……」
「何があったのか聞きたいけど、まずは落ち着く事が先だな。あ、俺はエリアスだ。あの遺跡の調査を依頼された冒険者だ。」
「私はオルヴァーだ。新たに調査隊に加わった者で……」
「オルヴァー……あ、イェスベルって侯爵の息子か?!」
「な、何故知っている?」
「アンタの父親からの依頼だったんだ。アンタの事、心配してたぞ?」
「父上が……そうか……」
「とにかく飯でも食って落ち着いてくれ。それからで良いから、あの遺跡での話を聞かせてくんねぇか?」
「あぁ……そうだな……」
遺跡の事を聞くと、まだ顔が強張ってしまうな。仕方ねぇ。自分以外皆黒くなって亡くなってしまったんだろう。そんな中、命からがら逃げ出せたんだ。その時の恐怖とか、自分だけが、とか、そんな感情が手に取るように分かる。
頼んでいた食事を持ってきてくれたから、ひとまずオルヴァーには食事を摂って貰うことにする。
温かい食べ物を口にして、オルヴァーは震えながら涙を流した。
少しの間一人にしてやって、その間に村を見て回る。
村には畑があって、そこで農作物を栽培している。酪農もしていて、乳製品を作り出したりなんかもしている。
インタラス国にある俺の家の孤児院みてぇに、子供達には勉強してもらってもいる。午前中に勉強をして、昼食後に仕事の手伝いをしてもらう。
俺の姿を見ると、皆が俺に挨拶してくれて近況を話してくれる。皆笑顔だ。ここでの不満はなさそうだ。良い村だ。
不意に涙が込み上げてきた。
きっとあの村にいた人達もこんなふうに生活していた筈だ。それが今は全滅状態になってしまっている。
さっきの悲惨な状況を目の当たりにして、どうにも出来なかった無力な自分が情けなくて、言い様のない感情が胸を締め付ける……
オルヴァーはきっと、俺以上にそんな思いに駆られてるんだろう。
踵を返して、オルヴァーの元へ行く。
だからこそだ。だからこそ、辛い事情であったとしても聞き出さなきゃなんねぇんだ。俺は感情を読み取ることも出来るが、詳細を聞きながら感情を読み取る方が、より詳しいことが分かってくる。話して貰う方が今後に役立つからだ。
食事を終えたオルヴァーの目をしっかり見て、そこから負の感情を取り除くようにして、自責の念を和らげてやる。これで少しは話しやすくなった筈だ。
「すまなかった。今回は助かった。改めて礼を言う。」
「それが俺の仕事だからな。落ち着いたらゲルヴァイン王国まで連れてくよ。その前に遺跡であった事を聞かせて欲しい。」
「そうだな……私が隊長となり、調査隊として遺跡に向かったのだが、遺跡はまだ手付かずの場所が結構あってな。名のある魔術師を雇い、人数も先発隊の倍以上の人数を導入し、遺跡の解明に乗り出したのだ。その甲斐あって、今まで火山灰で遮られていた場所が魔術師により拓けていったのだ。」
「そこで何かあったんだな?」
「そう、だ……至るところに魔法陣があり、そこから召喚された魔物に襲いかかられる。が、それは後発隊にいた高ランクの冒険者に討伐されていった。倒した場所には珍しい宝もあった。それに我等は一喜一憂したものだ。しかし……城の地下の牢獄であったと思われる場所へ行った時に……」
「そこに何かあったんだな?」
「あぁ……何かが封印されているような……結界が何重にも張られている場所があったのだ……今まで見つけた宝よりも凄い物があるかも知れないと躍起になって魔術師を何人も導入し、その結界を破ることに何とか成功したのだ。だがそれは破ってはいけない封印だったのだ……!」
「それが……呪い……か?」
「呪い……そうだ、呪いだ……紫に怪しくどす黒く光る人程の大きさの水晶のような塊から……気味の悪いモノが這い出るように広がっていって……その場にいた者は皆すぐに倒れていった……」
「すぐにか?」
「そうだ……すぐに倒れて、しかしすぐには死ななかった。それが苦しさを長引かせた。動くことも出来ず、体は黒くなっていき、ジワジワと苦しめられて、皆助けを求めながら絶命していったのだ……私は……私は何も出来なかった……!」
「アンタは何故無事だったんだ?! 他にも無事でいた奴はいなかったのか?!」
「私の知る限りではいなかった……何故私だけが生き残ったのか、それは分からん……」
「けどその封印を解いてから、結構日が経ったんじゃねぇのか? なぜすぐに出て来なかった?」
「何か術がかけられていたのだ……地下の牢獄は全体がそうなっていたのだろう……その術に翻弄されてしまってな……仲間が日に日に亡くなっていくさまを見て、私も正常ではいられなかったのだ……持っていた食べ物を少しずつ食べながら、無くなれば生き絶えた仲間の食べ物を探り取り食べていき……私だけが生き残った……っ!」
「そうか……そうしても仕方ねぇ。その呪いが牢獄から出て、近隣の街や村に蔓延って行ったってわけだな……」
「なに?! 外にも被害が及んだのか?!」
「そうだ。アンタ等が寝泊まりしていた村には、もう生きてる人達はいなかったよ。近くの村も……絶望的だ……」
「そんな……私達の……せいだ……っ!」
「こうなったら、今はそんな事を言っててもしょうがねぇよ。アンタは城に帰って、この事を報告してくんねぇか? 俺はいまいちあの国には信用されてねぇみたいだからな。報告が終わったら、俺はその封印されていた呪いを解きに行く。」
「一人でか?! それは無謀だぞ?!」
「何人も連れてけねぇだろ? 俺も呪いにはかからなかった。けど、殆どの奴が呪われるんだ。誰を連れてけばいいんだよ?」
「それは……」
「アンタと俺に共通するモノはあるか? 何か分かるか?」
「何か……共通するモノ……」
「ん?……アンタの右手の中指の指輪についてる石は……」
「え?あぁ、これは出発前に父上に頂いたのだ。この石は邪気を払う石で右手中指に嵌めると更に効果が強くなると言って……御守りとして贈られたのだが……」
「邪気を払う黒の石……俺の耳にも……同じのがある……!」
「これが呪いを退けてくれたのか?!」
「それしか考えらんねぇ! すげぇっ!」
「あぁ……! 父上っ!」
「リュカが俺を守ってくれたんだな……有難てぇ……っ!」
俺が呪いをはね除けたのは、リュカがくれたピアスのお陰だった。耐性もあったかも知んねぇけど、とにかく俺はリュカに助けられた。これが無かったら、あんな黒く固くなっても死ねない状態で生き続けていたかも知んねぇ。
その方が死ぬよりよっぽど怖ぇわ!
この事を踏まえて、イェスベルに報告してもらう事にする。
どうやら、オルヴァーが調査隊に組み込まれたのは、イェスベルの事を邪魔だと思っている奴等の策略だったようだ。調査隊になれば、数ヵ月、長けりゃ何年か帰って来れない状態になるからな。オルヴァーは結構優秀な奴だったみたいだな。だから選ばれたか。
オルヴァーがいない間にイェスベルを暗殺しようと考えたか? けど、イェスベルは思ったより防御能力に長けている。周りにも暗殺に対処できうる凄腕の護衛の者もいる。だから今も無事生きているのか。
ったく、マジでややこしい国だな!
いや、どこにでもあるか……こんなことは……
今は平穏なオルギアン帝国だが、ディルクが皇帝になるときも色々あったみたいだからな。マジで面倒だな。王族争い?派閥争い?とかいうのは。
とにかく、オルヴァーをイェスベルの元へ送り届ける事にする。
貴族だから、今回はすぐに俺と共にイェスベルの元まで通された。
無事に親子再会となった訳だが、これからの対処が問題だ。
俺も関わってしまったからには、どうにかしてやんねぇとな。
呪術のレベルでも上げるとするか……
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