墨汁Aイッテキ!2021十一月号

とうに過ぎ去った冬の夢


季節外れに降る雪の夢を見た。

雨が止まない日々の中、空から舞い降りる純白の結晶をただ眺めていた。


こんこんと降り続く雪。

ふわふわと空から舞い降りる天使。


鈍色の世界を純白の混沌で染め上げていた。

それをただ黙って眺めていた。


その白さに恋い焦がれていた。

とうに過ぎ去った何かによく似ていたから。



壊れてしまいそうな純粋さは傷をいやしてくれた。

崩れてしまいそうな優しさは心を開かせてくれた。



そして、消え去ってしまった。

災いが純潔を奪ってしまった。


私にとって、何よりも大切なものだった。

手放したくなかった。


だというのに。


生命の息吹がその冷たさと静けさを奪ったのだ。

騒がしい声に、すべてがかき消されてしまった。


極彩色の世界はあまりにもまぶしすぎた。

嵐のように過ぎ去る日々はあまりにも退屈すぎた。


だから、あんな夢を見たのだろう。

世界が一瞬にして凍り、白銀に染まる夢。

まぶたのうらに強烈に残る世界。


けれど、今は待たなければならないのだろう。

あの純粋さと過ごすためには、まだ足りないのだろう。


けれど、今は耐えるときなのだろう。

あの冷たさを手に入れるには、まだ足りないのだろう。


長い終わりを告げる冬。

空から落ちる白い天使。

すべてを麻痺させる冷たさ。


もし、季節を乗り越えて、また貴方に出会えたなら。

今度は私から会いに行く。


だから、どうか待っていてほしい。

今度はこの世界を越えて会いに行くから。




墨汁Aイッテキ!2021十一月号

https://www.pixiv.net/artworks/94465927


クロスフォリオ

https://xfolio.jp/portfolio/debrisbottle00/works/4473537

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