墨汁Aイッテキ!2019五月号

「     」



一番目の彼は下を向いて嘆き悲しんだ。

二番目の彼は前を向いて世界を駆け抜けた。

三番目の彼は上を向いてあることを思いついた。


それは誰も手を出したことがない禁断の方法。

それは誰も成し得たことがない絶対の方法。

それは世界がひっくり返ってしまう程の方法。



実現してしまえば、世界が消えてなくなる。

けれど、世界がどうなろうと彼には関係なかった。



彼にとっては世界をひっくり返す程度に過ぎなかった。

彼にとって世界の正義など存在しなかった。

彼にとっての正義とはそれを成し遂げる自分自身だった。



彼は求めて歩き続けた。それは長い長い夢の旅路。



そして彼はついにたどり着いた。

そして彼はついにその答えを見つけた。


そして彼はついに朽ち果てた。


果てなき夢に溺れて死んだ。

叶わぬ理想を夢見て死んだ。


長い長い夢の旅路に終わりを告げた。



墨汁Aイッテキ!2019五月号

https://protozoa.booth.pm/items/1368675

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