デメテル2

「…じゃあ、私はここに居ないといけないのか。」

なんて救いがない…。

「いや、蘇る方法はない訳じゃないわ。そちらには帰えれないけれど…」

生きることは出来るのか。

「…生き返ると言うより時間軸を変えて転生すると言った方がいいわね。」

「どういう事だ?」

「例えば貴方のいた時間を1とするじゃない。そして貴女が生まれ変わるところは1以外の時間じゃないといけないの。そうなると同じ時間の流れで1に追い付くのは不可能なのよ。」

あぁ…そう言うことか。じゃあ私は彼らにもう会えない…。

「これは私にもどうにもならない。だけどね。私は神の力があるから。あなたを再び転生させることも出来る。だけどそれは貴女が決めて欲しい。」

甥っ子ヘパイストス…親戚がやったことよ。私には貴女を助けることをしないと、申し訳が立たない。

「…不遇だな。娘さんのことも‥‥兄ちゃん姉ちゃんたちの事も」

「…よく言われるわ。取り敢えず問題を片付けないと‥‥。」

「ふーん、まあいい。どのみち、私はここが好きにはなれそうにない。刺激も少なそうだし転生させる方針で頼む。」

「……分かったわ。じゃあ

『我が名はデメテル。豊穣を司る女神なり。今ここに河璧せんぎょく凰縁こうえんの新たなる転生を公言する。』…これで転生させられるわ、凰縁嬢。さぁ、次は魔力マジック パワーね。どんなのにしようかしら。」

デメテル…いやぺルさんはうきうきと本を取り出し私に差し出した。

「ここからここまでのやつでお願いね。」

そこには何かしらの魔法が書かれているのだろうが残念ながら私はギリシャ語が分からない。

「…ぺルさん。日本語のやつはないのか。」

「……私は持ってないわ。少し待ってて。」

ぺルさんは10メートルほど走って飛び上がりそのまま消えてしまった。

「…時計もそのままなのか。」

デジタル時計ならそのまま壊れていたかもしれないがアナログ時計だから動いている。

「18:54…もうすぐご飯の時間なのか。」

手元では父親から貰ったアナログ時計が小刻みに動いている。

「ふぅ……」

「あらっ?お客さんですか?」「て言うか人間?」

振り向くと白金プラチナブロンドの髪を一括りにして月桂樹ダフネの冠をつけた男の子とベリーショートにした栗毛ブリュネットの髪の女の子がいた。どちらも私と同じぐらいの都市に見える。

「…人間です。凰縁こうえんと申します。呼び方は……何とでも。」

「ではおうと呼ばせてもらうぜ。」

「私はこうちゃんと呼ばせていただきます。」

顔だちは一卵性の双子のようににている。おそらくアポロン太陽と芸術の神アルテミス月と狩猟の女神だろう。それを二人は読み取ったのか説明してくれた。

「双子ですから。」

「おれが兄ちゃんなんだけどな。お嬢ちゃん。」

お嬢ちゃん?

「…あぁ、神だから私より年上なのですね。」

「デメテル叔母様は出掛けてるのか?俺ら叔母さんに渡すものがあるんだけど。」

「ぺルさんいやデメテル様は日本語訳のこの本を借りにどこかへ行きましたよ。」

さっき手渡されたペルシャ語の本を見せる。

「あー‥‥‥。叔母様はデメテル様って呼ばれるの嫌そうなんだよね。」

「あと、あなたぐらいの子に叔母様は弱いよ。コレー様…ペルセポネ様はあなたと同じぐらいで嫁入りしたから…。」

「あぁ‥‥‥‥‥。」

嫁入りと言う名の誘拐な。

「「「ご愁傷さまでした‥‥。」」」

三者一体。息が揃った。

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