第5章 9月15日 日曜日(2)
警始庁真柄区遅馳署
捜査一課非常勤専属事務員 門崎紫外様
お世話になっております。
厭生探偵事務所 厭生弗篤です。
このたび、世間を騒がせている『フライデー・マーダー』の正体が分かりましたので、ご報告させていただきます。
単刀直入に申し上げると、犯人は我が署の一人、『伽藍洞岬』であります。
彼女はある理由から、金曜の夜に犯行を重ねておりました。その理由を、私は『金曜日』に見出そうと頭を捻っておりましたが、それは間違いでした。
犯人の動機は、むしろその翌日、『土曜日』にあったのです。
彼女は厭生弗篤に好意がありました。ばっちりメイクで盛った自分を厭生弗篤に見せたい。その思いから、『金曜の夜』に犯行を重ねました。『金曜の夜』に人が殺されれば、私こと厭生弗篤は翌日の土曜に出勤せざるを得ません。普段は休みのはずの土曜日に、バッチリメイクの自分を厭生弗篤と遭遇させたい。そう思った彼女は毎週犯行を重ねては土曜にメイクを施し、私を迎えいれていたのです。
こうなると、我が署の管轄内で事件が起きていたのは頷けるでしょう。我が署の管轄内で事件が起きなければ、厭生弗篤は遅馳署に出勤しません。違う管轄の違う警察署に向かうはずです。それだと自分と鉢合わせすることが出来ません。
また、なぜわざわざ土曜に鉢合わせするように仕向けたいのか。それは、あなた。門崎さんがいない日に自分と厭生弗篤との出会いを演出したかったからに他なりません。
伽藍洞岬にとって、自分は捜査一課の紅一点でしたが、それは非常勤専属事務員の門崎さんが来てから制限されました。捜査一課の紅一点という肩書きは、土日だけに制限されてしまったのです。
しかし、肝心の土日には私は出勤しません。自分を華やかに魅せる機会を、伽藍洞は失ってしまったのです。あなたのせいで。
それも、金曜の夜に事件を起こし、土曜日に厭生弗篤を出勤させることで、制限を力ずくで解除したのです。
だから『金曜の夜』に犯行をおこなったのです。
だから、『遅馳署の管轄内』にて犯行を重ねたのです。
悲しきは私、厭生弗篤の眩しさがもたらした、なんとも悲しき事件でしょう。
また、伽藍洞は監視カメラの位置や見え方を熟知していたと考えられます。次の金曜の夜は、彼女を徹底的にマークして、彼女がバディと分かれて1人になった時、現行犯で捕まえることができるかどうか、判断しましょう。
以上が今回の『フライデー・マーダー』の捜査報告書です。
ご査収いただけたら幸いです。
明日の月曜日に、捜査一課にて事件のあらましと犯人を名指ししたいと思っています。
その時はアシストをよろしくお願い致します。
追伸、同封している画像ファイルは、伽藍洞岬のビフォーアフターです。女性は恐ろしいですね。
それでは月曜日にまた。
よろしくお願い致します。
厭生弗篤
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