第86話 火の車に乗って
「おはようございます」
私は眠い目をこすりながら一階へ降りた。
雪女は朝食の仕度をしていた。私に気がつくとこちらを見て笑顔になった。
「ああ、おはよ。よく眠れたかい?」
「はい、お陰さまで。布団も凍っていませんでしたし」
「茜の布団は雪子が準備したんだよ。あの子が一番温度調節が上手だから。後で雪子にお礼を言いな
……ってあんた!」
雪女がぎょっとした。
「傷が治ってないじゃないか!」
この傷はカラ国で試練やトトと戦ったときにできたものだ。テテと戦ったときに折れた腕は変な腫れ方をしている。だが、長い間体の状態がこんなだったため、痛みが麻痺していた。
「妖怪なら寝て起きれば治るから、茜も同じだとばかり……。
悪いことしたね」
雪女は私の頭をよしよしと撫でると、火の車を起こしに行った。
「あんたー!いつまで寝てんだい!」
「あと5分……」
「いい加減にしな!」
「冷たっ!
雪女、凍え死んじまうよ」
ガラガラと音を立てて、火の車がリビングに出てきた。
「おう、おはよ。
……お前、ひどい怪我だな!」
火の車もぎょっとした顔をした。
「どうする?」
雪女が腕を組んだ。
「丁度、
「うん、それでいいだろうよ雪女」
火の車がうんうんと頷いた。
「茜、仕度しな」
雪女が言った。
私には二人が何のことを話し合っているかよく分からなかったが、とりあえず出かけるということは分かったので、準備を始めた。
「そろそろ出かけるよー」
雪女の声が聞こえたので、私は一階へ降りた。
玄関を出ると、炎に包まれた車があった。エンジンを使って進むような車ではなく、馬車のような形だった。
「おー来たか。早く乗れー」
運転手の位置に火の車がいる。
私たちは車に乗り込む。火の車は火で包まれているため、大きくまたいで乗らなければならなかった。入り口は熱かったが、雪女が近くにいることもあり、中の気温はちょうど良かった。
「火の車はいつもと姿が違いますね」
「本当はこの姿が基本なんだよ。いつものは、簡易版さ。この姿のままじゃ、家に入れないだろう?」
道が悪いのか、時々大きく揺れながら私たちは目的地に向かっていった。
自殺した少女は異世界に迷いこんだ yurihana @maronsuteki123
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