第69話 ケケの怒り

ケケはよろよろとココに近づいた。

ココ……救えなかった……?

いや、もしかしたらまだ……!

ケケは心肺蘇生を試みる。しかし何度試してもココの心音は聞こえなかった。

ケケは泣かなかった。泣く余裕すらなかった。

ただココを抱き締めて、浅く呼吸を繰り返していた。

「うそだ……うそだよね……?

お願い、返事をしてくれ……!」

すぐそこに敵がいるのにも関わらず、ケケはココのことしか見ていなかった。

それにイラついたセセが、鼻で笑った。

「たいそうな兄弟愛だな!

その女もなんか言ってたぜ?

お兄ちゃんが来るまで死なないーだとかなんとか。

はっ!笑える。こいつにそんな力はなかったのによ!

……安心しろ。お前もすぐに、あの女のところに行かせてやるよ!」

ケケはゆっくりと振り向いた。

セセはぎょっとして後退りする。

ケケの目から血の涙が流れ、その目が、何も見ていなかったから。

なんだこいつ。表情が、とにかく空虚だ。

生かしておいたら危険な存在。セセは本能で感じ取った。

セセは手を虎に変える。それをケケに向かってつきだした。

だが、目の前からケケが消え失せていた。

どこに行きやがった……?

本当にこの兄弟は、消えるのが好きだな……。

だが……!

セセは鼻を牛に変える。

そこだ!

ケケは後ろを見た。そこにもいない。

くそっ!前を向くと、そこにケケがいた。

「死ねぇ!」

手を振り下ろす。そうして初めて、セセは違和感に気がついた。

どこに行った……?俺の腕……?

関節から手にかけて、失くなっていた。

認識すると、痛みが感じられた。

「うああああ!痛てええええ!」

息を荒くしながらケケを見ると、異常に冷めた顔をしていた。

機械のように冷淡だった。

セセを殺すことしか頭にないようだった。

なんなんだよ……!

セセは高く跳んだ。すぐに攻撃されない場所から、ケケに狙いを定めた。

セセは、もう一方の手を同じように攻撃に使った。

その手も一瞬の内に消え失せる。

振り向くと、空中にいるケケと目があった。

顔と胴体はヒトだったが、その手はワニの口に変わっており、足はウサギの形をしている。耳はコウモリになっていた。

「馬鹿な……!俺でも2種類の動物で限界だった。

3種類なんて……。

それに、なんで手の位置に口があるんだ!

お前……気が狂うぞ!」

セセの言葉には一切の注意を払わず、ケケは着地と同時に地を蹴った。

ケケは防ぎにくい低い位置、セセの足を狙った。

セセは踏み潰そうと足を象に変えた。

だが、セセが足を下ろす前に方向転換をし、ケケはセセの背後をとった。そのまま心臓を狙った。

会話も、無駄な動きも全くない。

俺を殺すためだけに、全ての神経を使っている。

このチビを一刻も早く、殺さなければ。

セセは頭をワニに変え、腰を捻ってケケの頭を噛みちぎろうとした。

「なんだ?」

上を向くと何かが落ちてきていた。

俺の腕。切り口が異常な変色を遂げている。

おそらく、毒が塗ってあるな。

こいつ……俺を殺すためにどれだけ用意周到に……!

俺は自分の腕をかわした。

気がつくとケケが俺に肉薄している。

首を狙ってきた。

まずい。腕が使えない。俺は頭突きをした。

だが、俺の頭は空を切る。

目の端に、しゃがんでいるケケが見えた。

しまった!首への攻撃はブラフ!

ケケは足をキリンに変えると、俺の両足を蹴飛ばした。

骨の折れる音がした。

俺の足は使い物にならなくなった。

俺がまだ足の痛みをしっかり感じきれていない時に、ケケは首に攻撃をしてきた。

「考える猶予は与えないってか……!

こりゃダメだ」

ケケの手はセセの首を貫いた。


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