第47話 孤独とエゴ
化け物との攻防は続く。
長く続く戦いのせいで、私達は体力が消費されていく。
対して、化け物の方は無傷に等しい。傷を負わせても、すぐに回復してしまう。
「くそっ……!」
Bグループの1人が悪態をついた。
状況は悪化してきていた。
この化け物はどうやら逃げる人を襲うらしく、私達とチームを組まなかった5人は、私達の攻撃が止んだときに、よく狙われていた。
1人で敵う相手のはずもなく。
狙われた人は食われていった。
私達の攻撃は、徐々に勢いを失っていった。
ナナは顔を歪めている。
「どうして……! 誰も死なせたくないのに、皆死んでいってしまう……!
私の指示が悪いから……!」
ナナの心は折れる寸前だった。今は責任感で、なんとかふんばっている状態だ。
ナナは今、Aチームに加わり、前線で戦えながら指示を出している。
私は一度、ナナに後ろに下がって休むように言ったが、聞き入れてもらえなかった。
ナナのことは心配だが、私には他人にかまっている余裕はなかった。
一瞬でも気を抜くと、化け物は狙いを定めてくる。どうやら弱い人を狙っているようだ。
私達は全員で一旦化け物から離れた。
化け物は辺りを見回すと1人でいる男を見つけた。チームに加わらなかった人の中で、唯一生き残っている人だ。
よく見ると、ナナが以前に「馬鹿野郎」と呼んでいた人だった。
「ちくしょう! もうこっちに来やがった!」
男は舌打ちをすると手をライオンに変えて化け物の腕を払った。
男は足を掴まれる。急いで手を振り落とし、化け物の腕をボキリと折った。
男は1人だが強かった。
しかし、ギリギリで防いでいることが多く、食べられるのは時間の問題だった。
「助けるのである!」
ケケが駆け寄った。
「来るんじゃねえ!」
男は叫んだ。ケケは驚いて立ち止まる。
「なんでであるか!?」
「俺は誰も信用しねぇ!」
俺は化け物の攻撃を避けながら叫ぶ。
「みんな騙されて死んだ」男が攻撃を避ける刹那、そう言ったのが聞こえた気がした。
男は避けながらの攻撃を繰り返す。
だが、化け物の攻撃で削れた床に足をとられた。
化け物の腕が迫る。
男は舌打ちをする。だが、その顔は穏やかだ。
男は呟く。
「やっとそっちに行ける……お袋……」
目を閉じ、男は死を待った。
しかし時間がたっても男は痛みを感じなかった。うっすらと目を開ける。
目にクリーム色が入り込んできた。
「早く逃げなさいよ、この馬鹿野郎!」
目の前にいたのは、控えの間での試練で男が罵った女だった。
女は肉食獣に変えた手で、化け物の攻撃を薙ぎ払っていた。
男は言われた通りに化け物から離れた。
それを確認した女も後ろに下がった。
「余計なことすんな! 俺は死んでも良かったんだよ!」
「ああ、そう! 私はあなたのことは大嫌いですけどね、もう目の前で人が死んでほしくないのよ! 私のエゴのために生き延びなさい!」
男は目を見開く。
「私の名はナナよ。助けてあげたんだから、名前くらい教えてもらってもよろしくて?」
男は顔を背けた。
「カカ……」
ナナは満足そうに頷いた。
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