第30話 自己紹介
「私は賛成」
男性が去った後、小学生くらいの女の子が手を挙げた。
淡い紫色を纏っていて、たれ目が特徴的だ。着ている服はだぼだぼで、手が袖の中に隠れている。
「あら、本当?」
女性は嬉しそうに女の子の方を向いた。
「他にはいないのかしら?」
女性が問いかけると、周りの人達はちらほらと手を挙げ始めた。私も便乗して手を挙げた。
手を挙げた人は全員で、100人近くいた。
「では、あなたとあなたはこちらに、あなたとあなたはあちらに……」
人数が集まると、その女性は的確に指示を出し始めた。
3人ずつに分かれて、私はその女性と先ほど賛同した女の子、そして小学生くらいの男の子と同じグループだった。男の子もたれ目で、淡い水色を纏っている。
女の子と男の子は双子だった。チーム分けをするときに、一緒のグループがいいと言ったため、2人で1つという扱いになった。
「では行きましょう」
女性が声をかけた。私と双子は小さく頷いた。
私達は右の廊下を突き進み、左折したところにある、7つの部屋を調べる役割だ。
「せっかくだから、自己紹介でもしましょう」
探しながら、女性は話しかけた。
私達は賛成した。なんだか気まずかったからだ。
「私の名前はナナと言うわ。
地主と言ったらいいのかしら?大きな土地を持っているの。
今度遊びにいらっしゃい」
ナナはにっこり笑った。
「ケケというのだ。7才なのだ」
「ココ。7才」
「家では野菜を育てているのだ」
「たくさん育ててる」
3人の自己紹介が終わり、私の番がまわってきた。なんて言おうか。
「茜っていう名前で、17才で、えっと、家の仕事は……色々」
少し投げやりで答えてしまった。
3人は頭の上に?を浮かべたような顔をしている。
「名前、なんて言ったのかしら?」
「分からない」
「うーん。きっとネネと言ったのである!
僕にはそう聞こえたのである!」
「よろしく、ネネ」
「よろしくね!
……そういえば、あなたの髪、今は肩くらいまでだけど、ロングが絶対似合うわ。ぜひ私の家に来て!可愛くアレンジしてあげる!」
「ありがとう」
私は3人と握手をした。名前は間違っているが、目立っても困るから、このままで良いだろう。
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