夏祭り─浴衣

 待ちに待った夏祭り。近所の神社で行われるものだ。去年も賑わっていたが、今年もすごい。


「おー、すげえな」

「人がゴミのようだ」

「人混みな」

「目が!」

「なんでだ。まさか電球ソーダにやられたのか?」

「目が痛い……」

「お前の目、弱すぎない?」


 今日は浴衣を着ている。毎年、実家の近くの夏祭りに浴衣で行ってたので、ハル、アキ、彩華は着付けができる。なので、香緒里の着付けをするため、少し遅れてくる。


「ところでこれ、地味すぎない?」

「男はこれでいいんだよ」


 俺たちは紺の無地の浴衣を着ている。シンプル・イズ・ベスト。


「コウ~!」

「お、来た──」

「ん? どうし──」


 声を失った。振り向いた先にいた四人。みんな、良すぎる。

 春香と秋穂はお揃いの柄。水色の地にカラフルなヨーヨーが描かれている。

 彩華はかわいさ重視か、赤の地に白抜きで金魚が描かれたもの。

 香緒里は黒の地に赤いツバキが描かれたもの。


「ヤバい……」

「イメージ通り過ぎる……」

「尊死……」

「まだ死なないで!? 子どもつくらなきゃ!」

「それはなんか違う……」


 チーン。


 ☆


 生きた。耐えた。一瞬、小学生のときに捕まえたカブトムシが見えた気がするよ。三途の川より先に見えるカブトムシって。


「コウ~」

「コウ!」

「お兄ちゃ~ん」

「はいはい」


 一応みんなで行動してるが、カップルで固まるのは自然。ところで屋台の食べ物っておいしいよね。雰囲気のスパイスってすごい。


「あれやりたい」

「射的? 勝負するか」

「うん!」


 四人で勝負。五百円で弾は四発。一人一発でやる。


「せーの!」


 パンッ!

 店員さんのかけ声で一斉に撃つ。結果は……


「よしっ!」

「あーダメだった~」

「意外と重いねー」


 俺だけ落ちた。ココアシガレットゲット!


「まだやりたいー」

「はいはい」


 夏祭りはまだまだ終わらない。

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