第17話

 序章を過ぎると、試合は徐々に大技の掛け合いがはじまる。


《ガブリエラ、ここで得意の……ブレーンバスター!》

《ダニエラもやられっぱなしではいられない。ロープをつかった旋回式ぃDDT!》


 見た目が大きな技はマットの揺れも、音も、もちろんダメージも大きくなる。

 なんというか威力の説得力がある。

 そして序盤は一進一退だった攻防も、連続で大技を食らってしまうと流れは一気に相手に傾く。


《さあここでたまらずタッチしたのはガブリエラ。雨雲仮面、はじめてダニエラとのマッチアップです》


「ここは真面目にプロレスしようかな」

「最初から、真面目、に、やって、ください」


 汗を滴らせ息を切らしながらも、律儀にツッコミをいれるガブリエラ。

 はいはい、ちょっくら休んでなって。

 クラウディアがリングに入る。


「クラウディアさん──」

「ちょっとぉ、ここではリングネームで──」

「一分だけ、おねが、ぃ、しま、、す」


 ヘロヘロのくせにギラギラした目を見せるガブリエラ。

「……」

 視線を移してダニエラを見る。

 ロープに手をかけないと立っていられない様子のダニエラも、目のギラツキは同じだった。やせ我慢の笑みで、


「次は、あなたね、、、ぉ姉様が、もどるまで、しばらく遊ん、、で、さしあげ、ますわ」


 と、こちらへの挑発を忘れない。

 やはりふたりは似ている。そんなことを心のなかで思った。

 キューティーレインボーも同等にこの姉妹に感じたものがあるのだろう。

 雨雲仮面とキューティーレインボー。ふたりはプロレスで戦いこそすれ、その戦い方はタッグパートナーの体力回復役に徹した。時間を稼ぎ、かけられた技に耐え、フォールを返し、わずかな反撃ののちに、またパートナーへと試合の権利を返す。


《ここでまたチャンピオンと挑戦者、姉と妹が向かい合うっ!》


 試合時間は、姉妹対決の占める比率が多くなる。

 しかしガブリエラも、ダニエラも、雨雲仮面も、キューティーレインボーも、決してカウント3を取らせない。


《まだだぁーー! カウントは2ーーっ!》


 誰もが試合を終わらせなかった。


《これも……決まらなぁぁぁぁい、決めさせない! 誰もが試合を譲らないっ!》


 ガブリエラとダニエラの最後の前哨戦は、三〇分の制限時間を目いっぱい戦っての引き分けで幕を閉じた。


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