第398話料亭の混乱 大旦那の考え

大旦那と麗がいなくなった料亭では、呆然となる者、文句を言う者、泣き出す女将と仲居たちにより、混乱を極めた。


「浜村さん、勝手なことを・・・」

「抜け駆けして、その上叱られる?」

「竹田先生もあかん、秘書のしつけがなっとらん」


浜村秘書

「いや、選挙も近うて、少しでもご機嫌をと」

「竹田先生のためにもなると思うて」


しかし、それで納得が得られない。

「それで、こんなになれば、わしらかて、迷惑や」

「何で麗様にビールと酒を?」

「どこぞのタレントは、それやっただけで謹慎やで?」

「竹田先生も浜村秘書さんも、自主謹慎や」


浜村秘書

「すみません、つい、甘く考えとりまして」


また、反発を受ける。

「その甘い考えから、その薄ら笑い?」

「たまにはシャンとせい」

「ほんま、元アナウンサーやからって、楽な選挙で」

「その薄ら笑いは、気色悪いわ」


浜村秘書

「そんな・・・先生方・・・この笑顔で票が取れる言うて」


他の秘書から、即座に突っ込みが入る。

「は?浜村の魂胆はわかっとる」

「竹田先生を早くに引退させ、大旦那と麗様の関心を買って、自分がってことやろ?」

「まあ、いつも見え見えや、節操もない」


浜村秘書

「いや、滅相もない・・・そんな・・・」

竹田議員

「うるさい!浜村、俺はとうに見抜いとった」

「全てはお前が発端や、お前はクビや!」

浜村秘書

「ああ、もう知りません!先生のドンくさい演説で、どれだけ票が取れるか、おもろいですわ、楽しみや!」


泣いていた仲居たちも、騒ぎ出す。

「そんなことより、まずは嫌な臭いって、ああ、恥ずかしい」

「女将さん、うちらも、申し訳なく」

「大旦那様と麗様が来られるんで、つい気張りまして」


すると政治家と秘書は、一斉に文句。

「何言うとる?」

「いつもと変わらんやろ?」

「お前らのせいや、ぶち壊しにしたんは」


女将や仲居も、引かない、逆に言い返す。

「いや、うちらだけ責められても困ります」

「先生やら秘書さんやら知らんけど、いつも思うとりました」

「えらい、酷い臭みや、気色悪いと」


結局、お互いの非難のし合いになって、何ら改善するとの話にはなっていない。



さて、大旦那と麗は、九条屋敷に直帰。

玄関で、お世話係や使用人全員の出迎えを受けて、リビングに入った。

五月

「全部見とりました」

「まあ、酷い目に」

大旦那は軽く頷き、麗はいつもの能面。

五月

「まずは竹田議員とは別の候補者を?」

大旦那

「そやな、選挙ごとに、全員選び直しや」

「全て関係筋からにする」


麗は、無表情。

しかし、内心では「また面倒なことに」と、重荷を感じている。

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