第217話お礼の会食が終わり
「九条財団って・・・麗君も九条って姓になって」
山本由紀子は、本当に驚いた顔。
麗は、どう説明したものか、と迷ったけれど、「はい、そこの財団の関係者とも面識がありまして」と無難な答えを返す。
とにかく、自分が京都九条家の後継などと知られ、山本由紀子の自分に対しての変化などは見たくないのが本音。
山本由紀子は、困ったような顔。
「私は大学職員として、当然なことをしたまでだよ」
「少し、接待され過ぎ、麗君に気が引けちゃう」
麗は、少しだけ顔をやわらげた。
「いえ、あの時、お世話していただけなかったら、どうなったかわかりません」
「本当に感謝してもしきれません」
山本由紀子は、麗に笑いかけた。
「うん、わかった、私も江戸っ子、細かいことは気にしない」
「遠慮なくいただきます」
そして、麗の顔をじっと見る。
「麗君は、もしかすると、すごいお家柄の人かもしれない」
麗は、少し緊張する。
もしかして、感づかれたかと、不安を覚える。
山本由紀子は、そんな麗を見て、少し笑う。
「でもね、麗君」
「私は大学職員、麗君は大学生」
「当分、あと4年間は、その関係は変わらないよ」
麗は、落ち着いた。
「はい、大学入学したてです、いろいろ教えていただければ」
緊張したり、落ち着いたりの、山本由紀子へのお礼の会食は、無事に終わった。
麗と山本由紀子は、女将香苗に頭を下げて、料亭を出た。
再び吉祥寺駅に向かって、一緒に歩く。
山本由紀子
「本当にありがとう、麗君」
麗
「いえ、気持ちばかりで、喜んでいただいて、うれしいです」
山本由紀子
「また、麗君とお食事したいなあ」
「ほんと、食べる姿が絵になる」
麗
「そうですか、自分では普通に」
山本由紀子は麗の顔を見た。
「そうだなあ、高級料理でなくてもいい?」
麗は意味不明。
「あ・・・はい・・・」
山本由紀子は、麗の手を握った。
「あのね、江戸前の何かを食べさせたいの」
「鰻とか、お寿司とか、豪快な感じ」
麗は、身体の熱さを感じる。
とにかく山本由紀子の手が心地よい。
「あ・・・お任せします」
と、そんな言葉しか返せない。
吉祥寺駅が見えて来た。
山本由紀子は、ようやく麗から手を離す。
「ねえ、今度誘う、誘いたくなった」
「また、図書館に来て」
麗は、「はい、わかりました」と、素直に返す。
それでも、「本当はお送りするところですが」と、山本由紀子を見る。
山本由紀子は、プッと麗を笑う。
「何を言っているの?年下のくせに」
「麗君より体力あるかも」
そして、大きく手を振り、中央線の改札口に消えていった。
麗は、ホッとしたような、ワクワクするような、不思議な想いで、井の頭線の改札口に歩いて行く。
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