第167話不動産会社との面会

面会の二日目となった。

今日の面会は、午前中が不動産会社の専務、午後は文化財団の理事たちになる。


茜が麗に説明をする。

「昨日の二組よりは、具体的な話になる」

「それと、例によって、女の子も連れて来る」


麗は、女の子には興味がないので、具体的な話をしっかり聞こうと思う。

そして、不動産会社からは、都内のアパートの件についても話があると考えている。


午前9時に、不動産会社専務との面会が始まった。

茜の言った通り、確かに女の子がついて来ている。


不動産会社専務。

「麗様、今後ともよろしくお願いいたします」

「主に九条家が所有の土地や建物の管理等を行っております」

麗は、提示された資料を受け取り、相当な財産と思う。


大旦那が麗に補足説明。

「当面、赤字の心配もなく、健全経営を貫いとる」

「内部留保もしっかりしとる」


不動産会社専務は笑顔。

「さすが九条家、京都内の立地の抜群な不動産が多いのです」

麗としては、これが九条家累代の歴史の遺産かと思うけれど、資料は分厚く読み切れない。

それよりも、その次の話を確認したい。

つまり、麗が住む都内のアパート物件になる。


それについては、専務のほうから話があった。

「麗様の杉並にお住まいになられているアパートにつきましては、当社ですでに買収手続きをいたしております」

「そのうち、空き室が二週間後に出ますので、そこに奈々子様と蘭様がお入りになることになっております」


麗は、既に聞いていた話を確認したに過ぎないので、頷く程度、表情は変わらない。

それでも、なるべく一緒には住みたくなかった、奈々子と蘭が同じアパートに入るのは、気持をふさぐ。

「せっかく自由になれたのに、またか」

「ほぼ一か月程度の自由か、情けない」


少し暗い顔になった麗に、不動産会社専務が連れて来た娘を紹介。

「麻友と申します、麗様より二つ上、大学では法学部に」


麻友が麗を見て挨拶。

「麻友と申します。今後もよろしくお願いいたします」

との定番の言葉ながら、表情は微笑み程度、しっとりとした感じ。


麗は、昨日よりは、冷たくはない。

少しは大旦那や五月の言葉を考慮に入れたようだ。

「こちらこそ、法務はあまり詳しくないので、アドバイスをいただければ、幸いです」


すると、麻友は顔を明るくして笑顔。

「あ・・・はい・・・何なりと・・・」

「電話でもメールでも、かまいません」


麗は、表情を崩さない。

「はい、助かります」との一言で、会話を打ち切ってしまう。



そんな状態で、午前中の面会が終わり、麗がリビングに入ると、五月が笑いをこらえきれない。

「あーー面白かった」

「麗ちゃん、ほんま、社交辞令が上手やなあ」

「二つも上のお姉さんを真っ赤にさせてしもうた」

「あの麻友さんって、優秀かつ冷静で有名な娘さんやで」

「それを持ち上げといて、その気にさせて、ストンと落とす」


茜も笑う。

「あのな、女の子が電話でもメールでもって、普通言わんって」

「それを・・ただ、助かりますだけ?気のない返事や」


しかし、麗は、そんな反応は気にしていない。

何より、もうすぐ都内のアパートに、奈々子と蘭が来ることのほうが、気にかかっている。

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