第8話 オーバーヒート
「何階?」
サヤが先にエレベーターに乗り込み、聞く
さっきフロントでもらったカードキーを見返す
20階だ
俺がそう返すとサヤがボタンを押した
止まることなく20階についた
フロアに着くと俺は驚いた
え、俺らの部屋しかない
廊下の真ん中にVIP2001と書かれた部屋
間違いなくここだ
カードをかざし、ドアのロックが外れる
俺がドアを開け、サヤが先にはいる
「えぇぇぇー、ハル、これ凄いよ」
うん、確かにすごい、めちゃくちゃ夜景が見えるし、サーキットだって見える、こりゃVIPだ、
部屋だって2人しか泊まらないのに5つもある
ベッドもダブルだが、3人は余裕で寝れるデカさだ
「明日、トシちゃんにきちんとお礼言わないと」
サヤの声にそうだなと少し緊張しながら返した
荷物を置き、ソファに座る。
サヤは外を見ながら、「なんか怖い」などと言っていた
俺が背伸びをした時、ソファの前のテーブルに置いていたケータイが鳴る
慌てて、音を消す。
サヤが振り返り「いいよ?でて」と言ってくれた
俺は悪いなと返し部屋を出て応答ボタンを押した
「あー、晴樹君、ごめん、今大丈夫だった?」
電話の相手は織田さんだった
なんだ織田さんか、どしたの?
「ちょっと言いにくいんだけどさ、明日の朝の
決勝レース前に××社の新型マシンのお披露目があって、それのデモラン、トシさんが走る予定だったんだけどさトシさん××の社長に晴樹君来てること言っちゃって、走ってくれないか?って。」
えぇ親父、余計な事しやがって、どうしようかなーだいぶ乗ってないからね。
それってさ、デモランの前に練習、出来たりする?
「朝早くなるけど、コースが空いてるからできるよ、プライベートで、来てるのにごめんね」
わかりましたって言っといてと俺が返すと
「ありがとう!助かるよ!写真撮っとくね、あときっと、サヤちゃんも喜ぶよ、久々に晴樹君が走るとこ見れるし」
まぁ受けた理由の90%はそのためなんだけど
「じゃあ明日朝5時にフロントで待ち合わせね」
はいと返すと電話は切れた
部屋に戻ると、サヤは他の部屋の散策をしていた
「あ、おかえり」
隣の部屋から顔を覗かせ、言ってきた
ただいま
そう言いながら俺はベッドに寝転がった
すごい脱力感に襲われた
今日は久々にバイクに乗ったし、緊張しながら走ったから余計に疲れた
ボフッ!
俺の顔の右横にサヤが飛び乗ってきた
「ハル、疲れてるね、マッサージしてあげよっか!」
なんだ珍しい、そう思いながら どこの?
と聞いた
「んーそうだな、頭の裏の首の付け根ほぐすと疲れ取れるしいからそこ!」
サヤはベッドの上で正座をして自分の膝を叩く
「ほら。ここに頭置いて」
お、おう 俺は少し戸惑いながらサヤの膝に頭を乗せた
サヤの顔が逆さまに見える、
サヤの親指が頭と首の付け根にあたる
あぁ、これすごい気持ちいい
「痛くない?気持ちいい?」
とサヤが聞く頃には俺はもう目を閉じていた
うん、めっちゃ気持ちいい
と返す
見えてはいないがきっと笑ってるのだろう
えへへとだけ聞こえた
しばらくその気持ち良さに体を預けていると
目の前が、少し暗くなった気がした
サヤの指が止まる
俺の頬にサヤの髪が触れる
次に唇に感覚が移る
優しく何かが触れる
俺は思わず目を開ける
まだ、何かが触れている感覚はある
長いように感じたその感覚は離れていった
サヤは俺の顔を見て「あー目開けちゃダメじゃん」
と、いつもと少し違う笑顔でそう言った
顔が2人とも赤い
ハルが体を起こしてこちらを無言で見つめる
嫌だった?私がそう聞くと、ベッドに押し倒された
え?、待って待って。心臓の音が大きくなる
ハルがゆっくりと近づいてくる。
優しくキスをされた。両手はもう、ハルの手と繋がっていた
何度かキスをしたあと、少し離れた、ハルに なんかいいねこういうの
と言うと、「ごめん」とハルは謝った
なんで謝んのーと笑いながら返して
体を起こした、ハルの前に向かい合う
ハルに抱きつき、耳元で囁く
「ねぇ、ハルも抱きしめて?」
すぐにハルはぎゅーと抱きしめてくれた
ハルの心臓の音が聞こえる
ドクドクドク…
私のと同じくらい速い
私が背中をポンポンと叩くとハルは力を緩めた
再び向かい合い、私はハルの額に自分の額を合わせた
愛してる…
そう言おうとした時私より早くハルが言った
「サヤ、愛してる」
言葉が出なかった。先に言わないでよ、そう返したかったけどやっぱりダメだ私、我慢できない。
いっつもだ、ハルに幸せを貰ってばっかり
私から伝えようと思ったのに
しばらく経ってからようやく私の口が動いた
私もだよ
ハルがもう一度私を強く抱きしめる
ずっとこの時間が続けばいいのにと思ってしまう
ダメだってわかってるのに欲しがってしまう
でもハルになら、そうしてもいい気がした
俺はとっさに言ってしまった
でも、サヤの返事を聞いて俺は安心した
力を緩めて、サヤの顔を見ると
「ご飯いこっか、私、お腹すいちゃった」
いつもの笑顔でそう言った
ズルイ奴だ、誤魔化し方が上手すぎる
そうだな と返し、俺とサヤは手を繋ぎ部屋を出た
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