第四章 冬の向こう

19. 私は答えを知っています

 時計の針が動いています。


 緩やかに。それでいて確実に。


「天城さん。やっぱそろそろ時間ヤバい?」


 宇佐美さんがそう尋ねてきました。私が腕時計を気にしているのを見てとったのでしょう。


「……そうですね。今日は東京で先生の許へご挨拶に参じる予定でして、遅れるわけにはいかないのですが」


 羽沢先生のお宅には十三時にお伺いするという約束になっています。東京駅からお宅までには一時間程度かかることを考慮しますと、そろそろ名駅に向かわねばなりません。


「私は、予て為した不義理を先日お詫びしたばかりの身です。流石にこれ以上の非礼を重ねるわけには……」


「それは遅れるわけにいかないね」


 先ほどから小室さんは近傍を歩き回っています。


 私も立ち上がり、足腰をほぐしました。


 天井近くの窓から外の明るさが差し込んでいます。雲は遥か高くにあり、空は微かに白く霞んでおります。


 もう少しで私の夏が終わります。


 間もなく冬が来ます。


 冬の寒きに木の葉枯れ落つるは何の為か。


 私はその答えを知っています。


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